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ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~  作者: 餅月望
第八部 第二次司教帝選挙~女神肖像画の謎を追え!~
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第百二十六話 タイムリミット

 シャルガールの宿屋で、すっかり疲弊してしまったミーアは、商人組合のほうにも顔を出した。

「ご機嫌よう、ビオンデッティ殿……これは、なにかしら……?」

 商人組合の大会議室には、大量の紙類が並べられていた。

「おお、ミーア姫殿下。こちらは、住民の訓練計画案となっております」

「ほほう、これが……」

 ミーアはそれを手に取り、満足げに頷いて……それから、裏を見て、ん? と首を傾げる。

「あら、この裏は……?」

「こちらは、以前ご依頼いただいていたものの宣伝の一環です」

 それは、ミーアの依頼していた、貧しい王子と黄金の竜の情報だった。商人組合が主催で、試しに読み聞かせを、このセントバレーヌでやってみるらしい。

「物語の盛り上がる部分を載せておくのも良いですわね。敵キャラのサイモンとの橋の上での決闘シーンとか……」

「ほほう、それはなかなか興味深いですな。興味を引くことができるかもしれません。早速、やってみましょう」

 深々と感心の頷きを見せるビオンデッティに、ミーアは尋ねる。

「ところで、ディオンさんもこちらに来ていると思いましたけど……」

「ああ、ディオン殿たちは……」

 っと、案内されたのは、お馴染み、ビオンデッティ商会の部屋だった。

 部屋の真ん中に置かれた大きな地図、その上には、兵を表すのであろう、駒が置かれていた。

「ああ、姫さ……ミーア姫殿下、ご機嫌麗しゅう」

 部屋にはディオンのみならず、アベルとシオン、さらにティオーナとリオラの姿もあった。

「まぁ、みなさん、揃ってましたのね……。これは……」

「住人の避難といざという時の対応について、話し合っているところなんだ。リオラ嬢の意見も参考に、弓兵の配置なども決めておきたいと思ってね」

 そんなシオンの言葉に、リオラが誇らしげに、ドヤァ顔をする。どうやら、ティオーナを通して、ルールー族の弓の腕前は、シオンにも伝わっているらしい。

 一瞬……シオンと敵対するようなことになれば厄介……と思いかけるミーアであったが、まぁ、そんなことにはならないだろう、とすぐに思い直す。

 同時に、万が一にもそうなった時のために、ティオーナと仲良くしておかなければ、と心に誓うミーアである。

「ポッタッキアーリ候か、兄上と連絡が取れればと思っているのだが、そちらはなかなか上手く行かないな……。ポッタッキアーリ邸にいた者を連絡にやったのだが……」

 渋い顔のアベルに、ディオンが肩をすくめてみせた。

「そのまま逃げてしまったか、あるいは、ポッタッキアーリ候が握りつぶしたか……。いずれにせよ、動き出した軍というのは簡単には止まれませんからね。それこそ、軍事侵攻の大義名分を失うとかしないと、ね」

 それから、ディオンはミーアのほうに目を向けた。

「ということで、ルシーナ司教の説得、よろしくお願いしますよ。姫殿下」

「そちらは鋭意努力中ですわ……。ルシーナ司教は難攻不落の砦のような方なので、苦戦しておりますけれど……。ところで、避難計画はどうなっておりますの?」

「そうですね。幸い、後ろは海。敵が来るとすれば、北側から来るしかない状況なので、住民は思い切って南に避難させます」

 ディオンは、顎をさすりながら続ける。

「攻め滅ぼすつもりであれば、火攻めなんかも怖いですが、目的がセントバレーヌの占領、いや、この都市の統治権であるならば、できるだけ住民や町の施設には被害を出したくないはずですから」

「そうですね。同意できる相手が敵だといいのですが……」

 ディオンの言葉に、眉根を寄せてつぶやくルードヴィッヒ。深刻な顔をする男たちにミーアは、あえて明るい口調で言った。

「まぁ、物は考えようですわ。相手が、物わかりが悪い者たちであれば、逆にルシーナ司教は大義名分を与え続けられなくなる。説得しやすくなるんじゃないかしら?」

 そんなミーアの軽口に、ディオンとルードヴィッヒは苦笑いを浮かべた。

 それは、帝国の叡智にとっての勝利ではないのでしょう? わかってますよ……と言わんばかりの態度であった。

 確かに、まぁ、その通りではあるのだが……二人の設定しているミーアへの要求水準の高さを窺わせる態度に、ミーアは若干、背筋が寒くなるのを感じる。

「ええと、ちなみに軍の動きは、どうなっておりますの? ポッタッキアーリ候とミラナダ王国軍の動きは……?」

「今のところ、連絡はないですね」

 皇女専属近衛隊を含めた私兵団二十名を交代制で見張らせている。接近する軍があれば、狼煙があがるはずだった。

「このまま来なければ嬉しいのですけれど……。うん、軍が展開する前に、ラフィーナさまが来てくだされば、すべては解決するはずで……」

 それこそが最善。だから、ラフィーナさま、早く来てね! と熱心に祈るミーアであったのだが……。ミーアの願いは、けれど届くことはなかった。

 その二日後、前線より報告が届いたのだ。

「ポッタッキアーリ候の軍、歩兵百人隊が五個、騎兵三十騎がセントバレーヌ北方に展開した」と。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >シオンと敵対するようなことになれば厄介… 考えてみれば一周目、断罪王とギロちんルートだとシオンもティオーナやシュトリナ、ルールー族、ディオン・アライアもみんなミーアの敵であり憎み合い殺…
[良い点] >>同時に、万が一にもそうなった時のために、ティオーナと仲良くしておかなければ、と心に誓うミーアである。 一家そろってミーアが大好きなのでまぁ心配は無用かな。 ミーア達の奮闘空しく状況…
[一言] 「まぁ、物は考えようですわ。相手が、物わかりが悪い者たちであれば、逆にルシーナ司教は大義名分を与え続けられなくなる。説得しやすくなるんじゃないかしら?」  そんなミーアの軽口に、ディオンとル…
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