※chapter99.『とある仮面作家の手記』※
「とびきりのハッピーエンドで」と決めていた。
「人生は物語に似ている」と気づいたあの時から、終わりの瞬間は決まっていた。
叶うなら、大好きな人には泣いてほしい、と思った。
笑っていてほしい、なんて願えるほど出来た人間ではないから。
せめて最期ぐらい惜しまれておしまいにしたい、と。
手は……そうだなあ。
繋いでいてほしい。
ぎゅっとされるのもいい。
でもキスは悲しくなるから、やめてほしい。
なんだかお涙頂戴の「バッドエンド」みたいだから。
メリーなんとかエンドも嫌。
あれももはや、バッドエンドだ。
「だから」筆を取った。
「だから」書き換えた。
「だから」……「リセット」した。
謝らなくちゃいけないことがある。
ぜったいに言わなくちゃいけないことがある。
それは「だいすき」でも「だいきらい」でもなく、一番言いたくない悲しいセリフだ。
その四文字を言おうとして、何度も「同じ砂糖」を繰り返した。
だいすき。だいすき。××大好き。
思い返すと自分でも不思議なほど、おまえの前では自由になれたし可愛くもなれた。
嘘つきなオレも「ほんもの」になれる気がした。
それでも、狼少女は狼少女で、赤ずきんは赤ずきんでしかなかったけれど。
もし、生まれ変わるなら、今度こそ「強いなにか」になりたい。
そうだなあ……たとえば。
「夜を駆け、闇を切り裂く騎士」なんてどうかな。
そうしたら、オレはおまえの隣にずっといられるし、背中を合わせて獅子奮迅。
戦って戦って、戦い抜いて……。
いずれは魔王的ななにかすら、倒しちゃえるだろう。
アホみたいなお話だけど、現実よりずっと優しくて甘くて、とても善い世界だ。
……なんてね。夢物語ももう、おしまいにしなくちゃ。
『これから訪れん数多の苦難を乗り越え、今ここに祝福を授けん』
そんな気分で、すごく気持ちがいい。
うん。だから今度こそ「おしまい」にしよう。
「ハッピーエンド」の「めでたしめでたし」で終わりにしよう。
……あれ。おかしいな。どうしてだろう――。
涙が……なみだ、が、とまらない――。




