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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夏のホラー2017

ウラノドリームレンジャー 第七回「アクアツアーの秘密 狂気の剥製怪人トラバサミ」

作者: 鷹参

この作品はおおよそ90%のギャグと9%の残酷描写と1%のブラックユーモアで出来ています。

裏野ドリームランド提供

裏野テレビ放送 特撮テレビドラマ


ウラノドリームレンジャー!


第七回「アクアツアーの秘密 狂気の剥製怪人トラバサミ」


このテレビドラマはフィクションです。

実在する人物・事件・名称等とは一切関係ありません。






一組の若い男女が誰も居ない地下通路を歩いていた。

「ねえ、ほんと平気かな? 見つかったらやばくない?」

「大丈夫だって。もし見つかったら、道に迷ったんだって言い訳すればいいさ」

「そっか、そうよね!」

ここは裏野ドリームランドの大人気アトラクション「アクアツアー」内の、関係者以外立ち入り禁止の区画である。


裏野ドリームランドの大人気アトラクション「アクアツアー」は、小型潜水艦で海底を行き深海を堪能した後、不思議な生物が生息する謎の孤島に上陸して探検するアトラクションだ。


その「アクアツアー」には奇妙な噂話があった。

アクアツアーには本物の怪物や怪人が出るという噂だ。

ツアーに参加した客の何人かが「謎の生物」や「異形の人型生物」を目撃したという。


アトラクション内には参加者を驚かせるために「おどろおどろしいオブジェ」や「恐ろしい怪人の動く人形」などが多数設置されている。

しかし目撃者達は「作り物じゃない怪物を見たんだ。素早く動いて消えてしまった」などと話したという。

もっとも見たのは一瞬で、カメラに収められた映像証拠も無い。

明らかに勘違い、見間違いだろうという話だ。


「次はここ、入ってみようぜ」

「うん」

丸い窓から中を覗くが誰も居ない。

コンピューターが置いてあるだけだ。

カチカチとあちこちのランプが明滅しているのが見えた。

何かの計算をしているのだろう。

ドアをゆっくり明けて中に入ると床には、コンピューターが吐き出した紙テープが一面に散らばっていた。

「すげえな」

「本物みたい」

二人は感心していた。


ここは謎の孤島にある「ドクターエックス」の研究施設、という設定の建物である。

ドクターエックスはこの孤島で恐ろしい怪物を作り出しているマッドサイエンティストだ。

この男女は噂を面白がって自分たちで探してみようと、ツアー集団から途中でこっそり抜け出したのだ。


二人の探検は続いた。

客が立ち入れない部分も実に良く作っている。

ある部屋では、緑色の液体の入った水槽の中に全身が鱗に覆われた赤子が浮いていた。

他の水槽の中にも怪物を培養しているかのように異形の生物が入っている。

あまりのリアルさに二人は怖くなってきた。

まるで本物の秘密研究施設のようだ。

「目撃した謎の怪物ってこれか?」

「でも、動いてないよ」

「そうだよな……」


そして二人は疑問に思うのだった。

これほど作りこまれているのになぜツアー客に見せないのか、と。

「まだ公開前ってことかしらね……」

「そ、そうだよな……」

二人は最後にもう一部屋だけ調べたらすぐにここを出ようと決めた。


その部屋にも誰も居らず薄暗かったが、部屋の奥のガラス窓から明かりが射しこんでいた。

「このむこうは――」

恐る恐る近づいた二人は何とか悲鳴を抑え込んだ。

ガラス窓からは手術室のような場所を見下ろせるようになっていた。

そこにはシュールレアリスム絵画のように歪んだ仮面を着けた「白衣の男」と、手術台のような鋼鉄の寝台に横たわる「異形の怪人」が居た。


「目覚めよ! 怪人トラバサミ!」

白衣の人物が声を上げると寝台にバリバリと電気が走る。

そして怪物が目覚め雄叫びを上げた。

「トォォォー。トラバサァー!」

トラバサミと融合したかのような頭部に、トラバサミとなっている両手。

怪人がゆっくりと起き上がる。


白衣の男「ドクターマッドエックス」は命じた。

「行け。怪人トラバサミよ。全ての動物を狩りつくし、剥製にするのだ」

「トラバサァー!」

そう、ここは遊園地のアトラクションを隠れ蓑に、人間以外の動物を全て絶滅させ剥製化を目論む狂気の秘密結社「マッドスタッフド」が潜む秘密基地。恐ろしい怪人を生み出す実験改造施設だったのである。

ツアー客が見たのは逃げ出した実験怪物や島に潜んでいる怪人だったのだ。


「ほ、ほんとにこれもリリース前のアトラクションの演出なのか……」

若い男の顔は蒼白になっていた。

「もう出ようよぉ……あっ」

部屋を出ようとした女の足がもつれて転び、物音を立ててしまった。


「おのレッ、なにヤツっ!」

「うわああぁぁぁ」

怪人に見つかった男が悲鳴を上げる。

「トラバサミよ! 侵入者を捕らえろ」

「トラバサァー!」

しょきしょきと両手のトラバサミを鳴らすと、怪人トラバサミは凄いスピードで動き出した。

こうしてツアー客の中から一組の若い男女が消えた。




「いやあ裏野ドリームランドはいつも最高だなあ」

赤いTシャツに赤いジーパンの全身真っ赤なコーディネイトの青年が笑顔で言った。

「あのジェットコースターの角度は……サインコサインタンジェントなり」

眼鏡をかけた青い学生服の少年が、何やらぶつぶつと計算している。

「いい日差しだねえ。えい。陽光を反射だ!」

銀色のタイツに銀色のミラーサングラスをした色白で銀髪の青年が笑っている。

「裏野ドリームランドのカレー味ポップコーンは最高たい!」

黄色いオーバーロールを来た童顔の大男は、むしゃむしゃと裏野ドリームランド特性カレー味ポップコーンを食べている。

「ねえ~レッド~。一緒にあの回転木馬に乗りましょうよぅ。二人乗りで、ね」

髪までピンクなやたらとナイスボディの美女が、赤い服の青年の腕を取ってすり寄っている。

「観覧車は縦、回転木馬は横……真理か」

一番後ろには黒い着流しをきた黒髪の男が、真面目な顔で歩いていた。

六人は思い思いに裏野ドリームランドを楽しんでいた。




キャウンッ。

子犬の悲鳴が響いた。

小さな躰は数メートル跳んでいき地面に転がる。

足が折れ曲がりひくひくと震えていた。

その場にそぐわない凶行に、周囲に居た大人も子供も凍り付いたように動きを止める。


子犬に暴力を振るったのはトラバサミが融合した両手と顔を持つ不気味な怪人。そして奇怪な模様の入った覆面に全身黒ずくめの戦闘員達だ。

それら集団が現れたのは人々が楽しく遊ぶ遊園地の「動物ふれあいコーナー」だった。

静かになったその場に、回転木馬からの軽やかな音楽や、遠くジェットコースターからの楽し気な悲鳴がはっきりと聞こえてくる。


「トラバサアーッ!」

怪人の奇声、そして上がる動物たちの悲鳴。

ごきりと折られたヤギの頸。

血を吐いて飛んでいくペンギン。

踏み潰される兎。

あまりの惨劇。

それを見た人間の悲鳴。子供たちが泣き出し、逃げ惑う動物と人々。

「トラバサアーッ! 全ての動物は狩りッ! 絶滅させ剥製にするッ!」

人間以外の動物を全て絶滅させ剥製化を目論む狂気の秘密結社「マッドスタッフド」の怪人トラバサミは、そのトラバサミとなった両手を上げて叫んだ。

「マッドスタッフドッ! バンザイ!」


「あっ」

小さなハムスターを手にした子供が逃げ遅れて転んだ。

しかし、その手の中の小さな命は離さなかった。

「トラバサアーッ! そのアニマルをよこせッ! 剥製にしてヤルノダッ!」

かしゅりかしゅりと両手のトラバサミを鳴らしながら、ゆっくりと近づく怪人トラバサミ。

子供の父親を弾き飛ばす。

母親が庇うように小さな体に覆いかぶさった。


「じゃまスルヤツはアニマルダッ! 剥製にスルッ!」

かしかしカシカシと両手のトラバサミが鳴る。

「こんなとき、正義の七人。ウラノドリームレンジャーがいてくれたら……」

子供が呟く。

「トラバサバサッ! ムダダッ! 全てのアニマルは剥製ダッ!」

絶望する親子。


だがその時、裏野ドリームランドに正義の声が響いた。


「待てぇーい! そこまでだ秘密結社マッドスタッフドの怪人トラバサミ! 悪は我らウラノドリームレンジャーが許さん!」

「おのレッ! ドコダ!」


「熱き心の急展開! ジェットレッドコースター! トウッ!」

声の主、真っ赤なドリームレンジャースーツ姿のジェットレッドコースターは、滑走するジェットコースター上から跳んだ。

そしてそれぞれに名乗りを上げて、ジャンプするドリームレンジャーの面々。


「探究心はサブマリン! アクアブルーツアーなり!」

アクアツアーの潜水艦の上から。

「きらめく幻惑。ミステリーシルバーハウスさ!」

ミステリーハウスの屋根の上から。

「どんどんおいどん、でっかいどん。ドリームイエローキャッスルたい!」

ドリーム城の尖塔の上から。

「くーるくーる回るよ。メリーピンクゴーラウンドよ!」

回転木馬に横座りの姿勢から。

「ジャイアントブラックウィール……」

観覧車のドアから。


それぞれのアトラクションからジャンプした彼らは、怪人トラバサミの前に着地すると全員でポーズを決めて叫んだ。

「我ら揃ってウラノドリームレンジャー!」


「おのレッ、ウラノドリームレンジャーメッ! かかレッ!」

怪人トラバサミの命令で戦闘員達が、奇声を上げてウラノドリームレンジャー達に襲い掛かる。

しかし、あっという間に正義の味方達によって蹴散らされ、トラバサミも戦隊の必殺技「ドリームボール」を自らのトラバサミに挟んでしまい外れず、それが爆発して倒される。


「ウラノドリームレンジャーは不滅だ!」

ジェットレッドコースターが高らかに宣言する。

「ありがとう。ウラノドリームレンジャー!」

子供が嬉しそうにヒーローの名を叫ぶ。

こうして狂気の秘密結社の野望は阻止され、園内に明るい声と平和が戻ったのであった。


「おのれウラノドリームレンジャーめ。次こそ倒してやる!」

アトラクション「アクアツアー」に隠された秘密の基地では、園内の映像をモニターで見ていたドクターマッドエックスが叫んでいた。



次回予告。

ドリームレンジャーに茶色いオーバーオールを着た太っちょ新人が?! 危うしドリームイエローキャッスル。そしてアクブルーツアーの秘密が暴かれる?!」

次回ドリームレンジャー第八話「アトラクション合体巨大ロボ ウラノドリームランダーに搭乗せよ! 廃墟怪人フェルボーテン」をお送りします。

この次もウラノドリームレンジャーの活躍を見逃すな!



この番組は「夢遊ぶ国 裏野ドリームランド」の提供でお送りしました。

このドラマはフィクションです。

実在する人物・事件・名称等とは一切関係ありません。




作中で死亡した動物はこの後スタッフが美味しく頂きました。


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