1話
「やれやれ」
俺はため息をはきながら、頭痛が痛くなった。どうやら俺はトラックに轢かれ、死んでしまい、神様(いきなりの飛躍)に異世界にチート付きで転生させられることになったらしい。
「やれやれ。やれやれ」
俺はこの深刻とも言える事態に口癖であるやれやれが止まらなくなった。
トホホ、なんで俺がこんな目に。
唐突ではあるが俺の名前は暗黒院竜一。
どこにでもいる普通で凡庸で平凡で一般的でありふれた無個性の高校二年生である。学校の帰り道、トラックに轢かれて死んでしまったらしい。
後日談であるが、俺を轢き殺したトラックの運転手は過失致死の罪に問われ実刑判決が下ったらしい。
最近日本ではトラックに轢かれると異世界転生チートおまけつけ機能があるという迷信がささやかれてるらしく、神様は事故死の案件が多いと頭を悩ませていた。
まあ、俺自身異世界チートで転生できるのだから迷信ではないのだが。
目を覚ますとそこには西洋風の建物が立ち並んでいた。中世ヨーロッパだろうか。チートに《意志疎通》の能力があるからか異世界の人々の言語がわかるらしい
こうしてノコノコと異世界にやって来た俺。まず驚いたのが町を行き交う人々がみな動物みたいに地を這って移動していることだ。チートである《全知全能》の力で歴史的背景も把握したが、どうやらこの世界ではまだ二足歩行について伝わってないみたいだった。やれやれ、とんだ知恵遅れ文明だぜ。
仕方ない。高尚な存在である俺が教えてあげることにした。
強きものが弱きものを助けるのは当然の役目である。
行き交う人々がみな二足歩行の俺を見上げている。神にもなった気分だ。いや、俺は神みたいなものか。
俺は二足歩行の素晴らしさを町の人に教えてあげた。
「二足歩行で歩けば、両手を自由に使うことができる。彼は私たちより発展してる文明人だとでもいうのか?」
「す、すごいわ。こんなことを考え付くなんて! まるで神様ね。しかもか、かっこいいし。あなたの名前が知りたいわ」
「まず、できることじゃないよ」
称賛の言葉が俺を包んだ。しまいには拍手喝采である。やれやれ、こんなはずじゃなかったんだけどな。
まあ、仕方ないから名前を名乗ってやる。
「俺の名前は暗黒院竜一だ」
やれやれ、めんどくさいことになったな。