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ぼくの詩集~ザ・ベリー・ベスト・オブ・ぼく~

ちいさなセカイ

作者: 桜井あんじ

むかし むかし

ぼくはいまよりずっとちいさかった

そのころ

せかいはいまよりずっとおおきかった


両手をいっぱいに伸ばしても

世界の端から端まで

ぜんぜん届かなかった


首がいたくなるほど見上げても

世界のてっぺんはまだ高く


全力で駆けても

世界はまだまだ 行く手にひろがっていた



時はすぎ

いま ぼくはあのころよりずっとおおきい


そして 

せかいは ちっぽけで

ぼくのまわりで 渦を巻いている


つきあい 愚痴 不満

義理 義務 人情

世間体 常識 見栄 体裁

家のローン 保険のみなおし 老後の心配

諦め 達観


そんなもので

ぼくのちっぽけな世界は

満ち満ちている


どうしたんだろう

あんなに あんなに

大きかったはずなのに



せかいは今では つんつるてんで

ぼくはその中にとじこめられ

背を丸め 肩をちぢこませて

ためいきをつきながら

歩く


あの広い広い空は

果てしない海は

世界を覆う草原は

いったいどこへ

いってしまったのだろう


今日はいつもと反対の電車に乗って

行こう どこか遠くへ

世界の広さを 思い出すために


なあんてね そんなこと できるわけない

仕事があるんだから 生活が


だけど

いつもの電車の窓から見える空は

青くて 広くて


セカイはいまだ 大きいままで

そこにある

ぼくの瞳が それを

映さなくなっただけで

そのことを知ってさえいれば

ぼくは へいきなんだ

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― 新着の感想 ―
[良い点] しみるわあ。 オッサンなんだけど、読んでいて、まさにそのとおりだと思いました。 [一言] 今日の夕方、慌てて事務所から玄関の外に出たら、オレンジにまぶしく光る雲に、つい見とれてしまいました…
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