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異星探索はチャイムのあとで  作者: 123456789
第1章。入試
7/12

[007]3月の№7。デスゲーム試験

 

 3月4日№3、ダンジョンの一層二区のボスが倒されて三日、フィールドよりボスを狩る為にダンジョンに力を入れる事が決定された。

 飛行場では、煩雑な事もあるが、膨大な作業を続け、開発チームも頭を捻り、各種の装備の量産計画を練り、飛行場に対応する装備を計画していた。

 毎日空を飛ぶのが当たり前の飛行士の歩兵達、常に飛んでいるために初めて見る人からはエネミーと勘違いされることもよくある事だ。


 飛行士達の仕事は有るが、本日の訓練内容は簡単な物だ。

 ひたすら上昇する事、耐えられる限界の確認だ。

 全員が武装を置き、限界まで軽くなってから、始める。


「おーし。上がるぞ空へ」


 飛行士の歩兵達が頷き、ただ単に上昇する、一直線に上がり続ける、落ちれば待つのは終わり、危険であるのは考えなくても分かる、それでも必要なために上がる。

 雲すらも通り抜け、既に地面はなく、見えるのは空のみだ。

 壁はなく、予想された限界はいつになっても来ない、同じ様に上がる騎兵、機兵の指揮官達も危険な垂直飛行にいつも終えるとも考えている様子だ。


「おーし降りるぞ」


 この声に、全員が速度を緩め、次第に降下していく、上がり過ぎるのも随分と不安にもなる。空を飛ぶ一部を持つアーライルやピクシーなどは余りの高度に逸る気持ちを抑える様な顔で居た。姉妹の方も焦るかのような顔で、クールな面持ちの姉の方は珍しい事でもあるが、気持ちはよく分かる。


 飛行場の滑走路、全員が集まっており、無事な事を楓に伝えた。


「全員無事だ」


 いつものような声でいう俺に、楓は何かを言いかけ、考えてから切り出した。


「空には何が有ったんだい?」

「空だけがあった、最高高度は1万メートル、大気層の計算など考えてもっと探索するしかない」

「そうか、全員に休暇だ。今日はゆっくりと休んでくれ」


 №3の訓練を終える。


 □屋上公園


 いつもの4名と食事を囲む。

 美姫の希望によりバーガー、今回はフィッシュバーガーだ。


「いいですよねバーガー」


 清楚な美人さんなのに、食べ物の残念系だ。

 姉の方はクールな顔で、妹のマイペースに振り回されるのはいつも通りらしい。

 そんな姉の光姫にアキラが話しかける。


「苦労しているわね」


 この言葉に光姫は軽く笑って首を横に振り、答えた。


「家族だからな」


 家族は大事にする派らしい。


「そういうものなのかしら姉妹って?」


 アキラの質問に、光姫も少し考えてからルージュの付いた唇を開く。


「姉妹の形にも色々だが、俺は妹に自由にさせたい」


 何やら姉らしい台詞である。


「だから自由過ぎるように、育ってしまうのね」


 アキラの苦笑気味の言葉に、光姫も少し苦笑していた。

 言われる美姫はどこ吹く風、バーガーを美味しそうに食べていた。

 俺も夕霧も食べるが、養殖技術も中々悪くない。

 食べ終わってから今度はアーライルの飲み物を貰う、蜂蜜たっぷりの紅茶だ。

 暖かい方が溶けやすいので好評ではあるが、俺としては常温でゆっくりと溶けるのが嬉しい、美姫も俺の好みが分かっているので安心だ。

 飲む俺に、美姫が何か考えていたのか、軽く笑ってから話した。


「後27日ですねスカオ」


 口に含んだ紅茶を飲んでから何を言わんとするその意味を図るがよくわからない。


「1年以上はあるぞ?」


 実質的に半年以上たっている。


「それでも限りある時間です」


 美姫の言わんとすることはまだ測れないが、もしかしてと思う。


「言うのもなんだが、学校の時間より長いぞ?」

「そうなのですか?」

「高等部が4年間、大学部が4年間、合計8年間、この試験の4日までの時間は半年、1週間を少なく見積もっても1年、1か月が4年で済んだら間違いなく大黒星だ」

「ならよかったのでしょうか?」

「それはまあ幸せな事?」

「疑問形はよくありません」

「ならよかった事だ」

「そうですか、学校とはどのような所です」

「学校か?同世代が集まっての勉強だな、時々運動もある」

「今とは随分と違うようですね」

「ああ随分と違うが、その分知識が手に入る」

「なるほど、知識ですか、それは嬉しいです」

「まあ日本に学府は有るし、週末は日本旅行だな、金曜日の放課後には適当な場所に繰り出し、何せ元手は幾らでも作れるからな豪遊だ」

「面白そうです」


 俺らの会話に、夕霧や光姫は頭が痛そうだ。

 アキラの方は不真面目な会話に、どうしたものかと考えていそうだ。


「まあどこかの異星も悪くはない、地球旅行もよい、可能ならば豪華客船で」

「夢が膨らみます」

「このバカ共!?いい学校わね!?」


 アキラに滅茶苦茶に怒られた。

 不真面目二人は真面目なアキラに怒られ、そのまま長い説教タイムだ。


「分かった!?分かったら返事」

「「はい」」

「OK、こいつらを放置すると遊び続けるわよ、どうしよう」


 悩みだすアキラ、夕霧も光姫も頭痛が少し和らいだのか、少し嬉し気だ。

 そこに額に角のある少年が来る、ハイケルだ。

 俺を呼び、席を立ってから向かう。


「日本の事が知りたくてな」

「・・・早くないか」

「・・・かもしれん」

「せめて大学までは待つべきだ、いや待たせるのはあれだが、もし子供が出来れば育てるのも大変になる、互いの理解も必要なら、それに向けての周り、つまり環境を整えるべきだ、何より異星人との混血児は地球にはない分野だ。医者も居る」

「そうなのだがな、俺の星ではすでに婚姻年齢なのだ」

「地球では最低でも20歳だぞ」

「だがこのままでは4年が過ぎるぞ?」

「それは、確かにそうかもしれないが、急いで失敗するのはよくない、お前さんらは気の遠くなるような星の旅をしてでまで約束を交わした、それが失敗になってほしくない」

「感謝を」

「日本の事もある、まずは結婚について話し合い、なるべく情報を集め、可能なら、いや無理か、異星人との婚姻を認めるような立場の両親ではなかったな」

「ああ。俺の家は騎士の家だ、惑星の2,3は普通に持っている、当然、両親は同族との婚姻だけしか認めないだろう、だが俺はそんなものはいらない」

「・・・貴族ってのは厄介だぞ」

「分かっている、同族の事はよく知っている」

「・・・参ったな、せめて高等部2年生まで待てないか、それだけの時間があれば色々と手は撃てるし、何かと準備もできる、可能ならば医者も探せる、正確には医者も育てられる」

「・・・同族の事はよく知っている」

「・・・辛いな」

「ああ」

「まずは日本国籍を取るべきだな、そうすれば婚姻が認められる範囲内に近付く」

「どこで手に入る」

「その点は任せろ、購入できるからな」

「感謝を」

「それだけならまだ良いが、厄介な事が大量につくぞ、何せ日本人の多くがまだ異星人が好きじゃない、何よりヨリィは異邦人だ。日本人の医者がどこまで真剣かは微妙だ。それが異星人との間にあれば当然、妙な気を起こすかもしれない」

「難しいな」

「困難ではあるが、時間さえあれば準備が出来る、可能なら医者が雇える、医薬品も作れるだろう、手術用のトレーニングも積める、絶対ではないが、時間が必要だ」

「・・・俺にも時間がない」

「分かった。まずは戸籍だ、その次に役所に認めさせ、適当な彼方此方への根回し、可能な官僚にも適当に根回ししよう」

「お前は」

「色々と有るそれだけで十分だ」

「感謝を友よ」

「幸せになれ」


 問題が大量に有るが、こうなっては仕方がない、いつも通りの買収作戦だ。

 ハイケルが去り、何度目かの溜息を吐いてから、日本人の連中に話を通した。

 こんな話はそれなりにあり、日本人の者に掛け合う者が多く、既にかなりの数を預かる者もいる、俺の方は少ないぐらいだ。


「お人好し」


 アキラに言われて俺は苦笑した、こんな事に一銭も受け取らずに行うバカは確かにお人好しだ。


「別にいいわよ。ヨリィは応援したいし」

「ならい言うなよ」

「今回は協力してあげるわよ」

「なら多少は楽か、いっその事異星人省でも作るべきかな」

「その方が何かと楽よ、来年も増えるのよ」

「そうだよな。金が減るな、まあいいけどさ」


 異星人の方にも色々と有り、中には一つの星系の所もあれば、地球のような単一惑星もあり、中には一つの銀河に広がるところ、ハイケルはそんな銀河の宇宙種族の中でも有数のコーンス種族の騎士の者。地球なんかか逆立ちしても勝てない種族だ。

 WHO人はそんな惑星単一の所でもあり、地球人とは親近感が非常に沸く親しみやすい人々だ。


「全てを捨てて女の為か、ロマンだね」

「真実の愛よ」

「言わんとする事とはわかるが、下手したら親御さんが乗り込んでくるぞ」

「そりゃ不味いわ」

「大事な一人息子の跡継ぎが、宇宙船もない超弩級の辺境惑星の少女と婚姻すると知ったら、それはもう」

「・・・大変ね」

「しかもハイケルは騎士だしな、騎士勲章持ちだし、当然、お話も数多いと思うぞ」

「・・・ヨリィ、あなたを応援するわ」

「もし孫が生まれて、それが殺されたら聞いた両親が怒り狂って地球を壊しても全くおかしくない」

「・・・」

「しかも両親は高齢らしい、遅く生まれた一人息子が可愛いを通り越す、その孫に害したら生きたまま宇宙遊泳されても俺は不思議には思わない」

「地球の為にも頑張って」


 こう言った話が多く、地球人仲間からは地球のために死ぬ気で成功させろと脅されない方がおかしい。

 リアルに戻ったら、まず異星人問題の解決に乗り出すしかない。


 翌日、飛行場の代表である楓の日本人が預かる様々な案件を提出した。

 楓は一読し、とても迷うかの双眸で、どうしたものかと悩んでいた。


「うーんまあ別にいいんだけどね」

「それならば良かった」

「ただとても大変な事になるよ、友人である君も」

「だろうな」

「全員の色々と調査も必要だけど、幾つかの銀河級種族の有数な権力者の子供が、地球人との間に作ろうとしたら、戦争になるよ」

「分かってはいるが」

「・・・覚悟の上というのなら止めないけど、運が悪ければ地球が持てばいいけどね、高い確率で地球は壊れるよ」

「・・・」

「ご両親方の説得も有るし、問題は山積みだし、少なくても日本の行政府の様々な長が首をくくっても不思議には全く思わない」

「・・・」

「生きたまま悲惨な目に遭う事を考えれば、まだ幸せじゃないかな」

「・・・」

「タスクは神竜だ。竜の中でも神族に位置する生まれだ」

「そうか」

「その娘が、もし単一惑星の日本の学府に通うと言ったら、宇宙でも有数の種族の長達は何を考えるだろうね。しかも君との約束もある」

「約束って」

「初デートだろ?」

「いやそう言う奴では」

「タスクがどう思うかは別の話、違うかな」

「かもしれないが、しかし」

「タスクにとって君は特別になりつつある、思いは募るものだ」

「・・・」

「まあそれは置こう、竜の時間と、君ら地球人の時間は違う、惑星誕生より生きる龍も居れば、タスクのような幼い者もいる、よく考えた上で約束は交わしてくれ」

「難しい物だな」

「とても難しい物だ。僕らのような惑星防衛機構があ惑星ならまだいい、君達の地球には最近やっとの事で宇宙船が作られるかもしれない、まさに風前の灯だよ」

「宇宙傭兵でも雇うかな」

「その点は幾つかの話はすでに手は打っているしね、ただ一か所に集められる学生の事もあり、時間はかかるよ」

「恩に着る」

「いいって、僕も楽しんでいるしね」


 □


 空への探索も行う飛行士達、すでに幾つかのエネミーも確認され、幾つかの浮島も発見された、このままでは思う様な探索は出来ないと判断した指揮官達は、船の事を話し合う、宇宙船の必要はないので、可能なレベルであるが、武装も無しに行えるほどの空の世界ではない。


 異星人側、地球人側の生産系代表たちに話を打診、幾つかの計画の中、飛空艇計画がスタートされる。

 すでに売られている店の物もあり、これをモデルに造船師達が、これを完成させ、カスタムさせ、数多い機種を生み出し、武装を施し、空の専門家である飛行場にもいくつかの飛空艇が並び、機甲兵の操縦士たちの整備スキルにより整備される。

 歩兵達の長である俺は、困難さを極める青空の探索に、同じ様な環境の潜水士達の歩兵の長と愚痴大会、出るわ出るわの愚痴話、騎兵の長達も呆れる様な愚痴だ。

 スキッリした後に、幾つかのプラン、その中でも有数の候補の中でも、その運用面の良さから既に注目される、先行量産型飛空艇、スカイドンキー、空の荷馬。

 優秀な分類に入り、武装面よりも際立つのはその満載できる積載量、多数の砲門よりそちらが魅力、何よりも大量の食糧や医薬品はきっと役立つ。


 3月4日№155、8月31日に該当する夏の終わりの日。

 スカイドンキー級、飛行団1号艇、旅の途中が完成。

 これにより量産が決定され、翌日に2号艇、旅の夜明けが完成、飛行場防衛の為の3号艇、飛び立つ翼が完成する。

 潜水士達より、空に探索の為に海賊団が貸し出される、海賊たちの長も、空の探索は初めてなんで渋い顔で合流し、飛空艇の熟成訓練に向かう。


 3月4日№187、10月1日に該当、飛行団1号艇、2号艇に物資を積み込み、飛行士達も乗船、防衛戦力も残し、救援戦力も残し、これらをハイケルに任せた。

 開発チームより、農園・牧場チームよりも関係者も乗船し、二つの飛空艇に分かれての出航となり、操縦スキルを持つ機甲兵達が、操縦桿を扱い、空へと上がる。


 飛行団1号艇旅の途中、船橋。


「悪くはないが、良くもない」


 海賊団の長のドレイクがぼやく、歩兵の長である俺からすればよい感じではあるが、船の専門家の意見は違うらしい、機兵の長のブロードは、口に銜えた菓子を食べながら暇そうに欠伸をかみ殺し、報告を受けると眠たげに指示を出した。


「何がよくない」


 俺の質問にドレイクは、迷っていたが、代わりにブロードが答える。


「エンジンが悪い、調整不足だ」

「そうなのか?」

「歩兵はそのまま飛ぶから知らんだろうが、既製品の質はそんなに良くない、量産が決定されるも、こいつのエンジンの難しさには、常に機甲兵達は難色を示していた」

「それは」

「確かに操船は難しい、それだけならまだ良い船だ。こいつのエンジンはとても気難しい、直ぐに機嫌を損ね、不機嫌な音を出し、微かな変化にも直ぐに不貞腐れる」

「何がいけない」

「データが足りない、ありとあらゆるデータが不足している、これだったら星から得ておくべきだったぜ、くそ」

「そうだったか」

「何とかはしているが、被弾すればすぐに出力が落ちるぞ」

「脆いな」

「仕方がない、飛空艇のエンジンなんて誰も知らなかった、むしろここまでやってこれたのは幸運が味方してくれた、地球人の言う神なんてものがあるが、そいつがいつそっぽを向くかはわからないぜ」

「・・・難しいな」

「そんなものだ。楓が何とか量産を決定したのにはそんな訳がある、こいつは少なくても幸運が味方してくれた唯一の船だ。他の飛空艇は酷い結果さ」

「準備はしておく」

「ああ」

「歩兵達に伝令、飛行は一時停止、緊急に備えよ」


 通信担当が伝えると、各所より状況の説明を求められ、これを説明した。

 歩兵達の感想でいえばよい感じ、しかし機甲兵達からすればいつ不機嫌になるかわからない不安定なエンジン、海賊たちもこの事には気が気ではないらしく、いつもよりエンジンルームには数多い人員が配置されていた。


「監視員より報告、遭遇する恐れがあるエネミーが接近中、タイプ鳥、攻撃パターン音波です」

「くそ飛空艇落としだ!」

「歩兵を出すぞ!」

「被弾だけはさせるな、間違いなく落ちるぞ」

「分かった」


 戦闘要員の歩兵達が甲板に集まり、速度を落としつつある1号艇、僚艦の2号艇からはすでに砲門が飛び出し、一斉砲撃準備に入っていた。


「難しい、命中できるか」

「無理だろうな、当たらないのに夕飯を掛けるぜ」

「直ぐに飯を掛けるなよ」


 歩兵達が勝手な事を言うが、全員真剣な顔で武器を持ち、PTは既に組む。

 海賊たちも武器を向けてはいるが、この鳥は厄介な事に様々な耐性があり、通常の火器が効果が薄く、E系すらも効果が薄い、飛行士達の主力装備の魔導銃が一番効果的だが、MPの事から得意とはしない。


「射撃班、狙撃準備だ、デカい奴の方がいいだろう」


 俺も対物ライフルを取り出し、2mはある巨大な魔導対物ライフルを向ける。

 他の射撃で可能なデカ物の者も構える。


「照準合わせ!」


 各所より照準完了の報告が入り、直ぐには行わず、僚艦からの一斉砲撃の後に行う。

 観測班より報告が入り、命中率は凡そ50%、鳥のHPゲージはかすかに残り。


「MP回復急げ!」


 MP回復用のポーションが掛けられ、直ぐに回復する事で再度の一斉射撃を行い撃墜した。


「監視員!」


 俺の怒声に監視員より連絡が入り、既に交戦反応により幾つかの鳥が接近中だ。


「PTに別れ対空戦準備!」


 歩兵達が動き出し、PT単位での迎撃に入り、近接戦闘の者が飛行準備に入り、魔法担当がスペルの詠唱に入る。


「被弾すると出力が落ちるぞ!」


 監視員よりの怒声で、歩兵達が舌打ちを行う、交戦しなければ船が落ちる、交戦すれは敵が集まる、交戦が激しくなれば被弾する確率が増える、このジレンマだ。


「くそ鳥共これでも食らえ!」


 射撃担当のランチャーが、ミサイルポットよりミサイルを放つ、しかし鳥は急旋回しこれを回避、高いがミサイルは役に立たない。


「散弾!」


 機甲兵達が間に合い、猛烈な勢いで散弾機関砲を撃ち弾幕を張る。


「鳥が弾幕に突入するぞ!」

「迎撃!」


 苛烈な攻撃が始まるが、魔法攻撃以外のダメージが薄い鳥は、次第に迎撃網から船に接近する、デカい対物魔導銃を撃つも、MP回復が間に合わない。


「特技を使え!」


 特技の使用許可に使う事で一時的な迎撃を終える、監視員よりさらに鳥の接近が報告され、これはどうしようもないと判断し飛行団の探索は失敗した。


 □飛行場、3月4日№187。


 何とか生還し、データをかき集め、兎に角に普通の武器が効かない相手が多過ぎて、MP依存の魔導銃の、その中でも最高峰の火力を有する対物が必要になり、出来る事なら揃えたいが、そう易々とも行かないスキルの問題がある。

 各飛空艇の武装の主力である砲門、これの命中精度の酷さには砲撃手達もウンザリ、兎に角に改良しかない為に、飛行団の当座の探索は飛空艇の改良となる。


 歩兵達の事もあり、こうなったらとダンジョンでのひたすら戦闘経験値の取得での戦闘面の強化だ。

 この後にトレーニングでのアーツ等の取得を行う。

 ▽

 ・スカオ

 [スキル]

 射撃武器Lv10→Lv20 召喚Lv1 融合Lv1 付与Lv1

 [アーツ]

 取得済み:二回撃ち

 取得:狙撃

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 武器Lv10→Lv20 NPC言語Lv1 飛行Lv4

 ・光姫

 [スキル]

 魔杖剣Lv10→Lv20 召喚Lv1 融合Lv1 調合Lv1

 取得済み:ブースト

 取得:光波

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 変化Lv10 変形Lv1→Lv10 飛行Lv4

 ・美姫

 [スキル]

 魔杖弓Lv10→Lv25 召喚Lv1 融合Lv1 料理Lv1

 取得済み:ブーストアロー

 取得:スナイプアロー

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 変化Lv10 NPC言語Lv1 飛行Lv4

 ▽

 対物魔導銃、これによりアーツの狙撃は、高い命中率補正を与えるも、消費量が大き過ぎてMP回復に大きな後れを与える、元々強力な反面、MPへの消費量が常に問題な対物、当然のようなアーツを使う事は次への攻撃が出来ない事を意味する。


 飛行士達も、新しい武器を求め、ダンジョンの他にも地上戦用の武器ショップなどにも往復し、特に射撃担当の者は主力の為に常に良い物を探していた。

 この中でも対物を扱える者達の悩みは常に共通し、MP消費、破壊力、射程の三者の問題だ。

 MP消費と破壊力=攻撃力は比例し、大きくなれば当然上がり、射程も増える傾向にあるが、次を撃つためには消費量は少ない方がいい連射を取るべきか、単発を取るべきかと悩むのが常なのだ。

 スペルを操るキャスターたちも悩む、主に魔法が主力の空中戦では対応するスペルがどう考えても必要なのに対し、スペルの取得は難しく、また単一のスペルしか使えない物が当たり前で有り、複数の系統を操れる者は非常に稀だ。

 ソードマンや、ランサーに代表される近接戦闘の専門家達、常に抱えるのはリーチに短さ、長さの為に重くなりすぎれば当然のように扱い難くなりとそれぞれ悩みがある。


 □飛行場、3月4日№200


 10月の中頃、飛空艇の改良も終え、量産化の決定した新装備を身に纏う、相変らずMP消費量の大きい魔導系統の武器、その中でも魔杖剣の系統の消費量は大きく、対物と並ぶために破壊力は有っても連発はとてもできない、それがより際立ち、使い手達は渋る。

 楓が無理矢理持たせ、使い手達は渋々に装備したが、一度使えばMP回復を行うしかない為に、とても連発できる物ではなく、更に言えばリーチは増大するも、対応するオプションは激減し、使い勝手が急速に悪化していた。

 その中でも優れた武器の一つである弓、MP消費が弦のみなので対してレベルではないのに対し、専用の弓の破壊力は対物ライフル並みという反則級の武器だ。

 この魔杖弓の使い手の美姫は嬉し気に装備し、周りは納得が行き難い。

 対物魔導銃を渡され、この扱い難さに渋らない方がおかしいのに対し、弓の使い手達は喜んで使っていた、何やら理不尽な気分になる。


「嬉しそうだな美姫」

「はい。とても使い易いです」

「そうかよ」

「そう言えばスカオは何故使わないのですか?」

「使えないだろ」

「でも武器は全て使えますよ」

「!?」


 弓に鞍替えした、銃使いからは裏切り者と呼ばれる。

 ただ弓には扱い難さもあり、訓練がいる。

 弓の訓練が終わり、対物魔導銃と併用して使う事で、かなりのレンジに対応し、長距離は対物魔導銃、近距離は弓を使う、これにより両方に対応し訓練も相応に必要とした。

 スキル構成の開示を求められて後悔し、射撃武器や武器という補正が異常に悪い汎用性のみに特化された武器スキルに全員が困った。道理で攻撃力が低いとも納得された。

 なんでも使え為に重宝するが、補正率の低さには誰もが手を出せない、手数でも勝負が出来ない最低限の補正しかないからだ。

 この事に着目した開発チームが専用装備の開発を提案し、承諾した。

 開発された対物魔導銃、ヘカートMkⅡ、魔杖弓、アルテミスMkⅡ、対物擲弾銃、ボマーを装備してのダンジョン狩り、余裕で粉砕し、特に対物擲弾銃の破壊力は随一だ。

 付いたあだ名がマルチウェポン、武器なら何でも装備可能という汎用性のみに特化された稀少なスキル持ちだ。


 翌日の空の探索、改良された飛空艇の1号、2号、あまり良い感じとは言えないが、エンジンの方は安定性を増し、頗るに好評だが、出力が抑えられ、各種の安定装置から加速力も落ち、歩兵達からは不評だった。


 監視員からの報告で、監視網に引っかかった鳥の迎撃に出る、前回より強化された装備により、迎撃は簡単になったものの、交戦反応から集まり出す鳥。

 ネックで有ったMP消費量もあり、回復が全く追いつかない、特に対物の方は攻撃できる回数の激減により、各射撃担当への負担が増え、結果として全体の攻撃回数の激減、弓使いの奮闘に支えられ、何とか一つの交戦を切り抜ける。

 消費量の報告を聞いて、気が遠く気分になりそうだった。

 航空を断念し、帰還、この報告書の纏めにより、MP消費量の減少が提案され、開発チームもこれを了承し、消費量の減少に舵を切られる。

 逆に対物魔導銃などは、連発は不可能と判断し、MP全てを使う様な消費量になり、試験生の中でも極めて攻撃力と射程に偏って武器となる。

 スカオ専用装備、対物魔導銃へカートMkⅢ、魔杖弓アルテミスMkⅢ、対物擲弾銃ボマーMkⅡ、単発でMPの殆どを使うヘカートMkⅢ、ボマーMkⅡも単発で半分を使う、この二つの攻撃力は破格で有り、他の系統からしても信じられない攻撃力となる。

 アルテミスMkⅢ、連射性能を高める事により手数に於いての攻撃力を持たせた傑作、専用の矢を使う事で、各種に対応した矢を使え、強力な対物アローは必殺技のアーツに準じる攻撃力を誇る。

 これらを使い分ける事で、今までの補正の概念から一躍トップの戦闘能力を誇る様になり、補正に拘るのはどうなのかという問題が議論される。

 同じく専用装備より、近接用の装備も開発が提案され、これを了承し、対応する武器開発が始まり、武器なら全て可能な武器スキルは一躍注目され始める。

 補正が最低、しかし汎用性は最高、悩むなという方が変なぐらいのスキルだ。

 この為に武器スキルは初期で選び、同じく防具も選び、飛行を選ぶのが飛行士の歩兵達の鉄則となる。

 開発チームもこれを受け、対応する装備開発を行い、補正に頼らない開発は難しい物で、攻撃力のみの依存した物だ。他の試験生でもこれは行きすぎだとする声の方が強い。

 生産系の代表たちは、この汎用性の高さに注目し、技術提供を行い、より汎用性に特化された武器開発が進められる、飛行団もこれを受け武器、防具の二つのスキルの取得を推進し、補正か、汎用性かという賛否両論の議論が巻き起こる。

 しかし判明するスキルの中でも、最高峰の汎用性がある事は、誰もが異論はない事の一つだ。


 開発された武器専用装備の第1弾、複合ライフル、MP依存の魔導弾、物理依存の実弾を両立した武器であり、近接用の銃剣と、近接範囲用の散弾銃も取り付けられ、多機能を有しながらも、これを扱えるスキルはない様に見えて、武器のみがこれを使える。

 サイズ的にはまだ大型であるが、生産系はこれに注目し、技術の開発を指示、戦闘系もこの新種の武器に興味を示し、扱えるスキルが唯一武器のみという専用の装備ではあるが、ある程度の資金を提供していた。

 武器スキルを持つ俺は、この開発の参加し、元々沢山の武器を扱えるように訓練されていた経験もあり、これを上手く扱い、改善点も数多く提案し、付与技術からの幾つかの提案も行い、大半が可決される事で、複合ライフルの開発は進む。

 余りにも多機能すぎて困難な武器となるも、これを見越した訓練も始まり、飛行団の次期主力装備の一つとなる、これによって武器開発は統合され、より開発速度が進む。


 補正もアーツも使えないが、最高峰の汎用性に特化されたことにより、複合した武器が扱えるという、実質的な専用装備でもあり、この量産化はいつでも可能なものの、扱う為に訓練は困難であり、この改善のための様々個所が変更され、サイズも小型化の傾向にあって、軽量化も進む、素材に関しては植物が大きい反面、無機物などの鉱物資源も使用していた。

 より汎用的になり、システム依存傾向が全くないユニークな武器となる。

 複合ライフルの改良案が纏められた、改良型の登場により、より扱い易くなって、小型化、軽量化に合わさり、飛行にも対応した装備になりつつあり、潜水士達もこれに注目し、技術提供を受け始める。


 魔導銃機能、実弾銃機能、銃剣機能、散弾銃機能、これらの総合機能、実質的な機能、専用の弾薬の機能、これらの総合性能、初期型に比べ、総合性能が飛躍的に向上し、これにより量産型の候補にも挙がる、まだ武器スキルの取得が不可能なことから断念される。

 何せスキルポイントは全員が-1のため、二つのスキルのランクUP可能になって初めて量産型が許可される事となる。


 飛行状態での生産も行われ、これにより飛行用に対応した物が揃う。

 開発チームも飛行の取得が推進され、この事は潜水士達にも言い得て、彼らよりも情報提供があり、幾つかの情報より、開発チームにおいても生産スキル1個、生活スキルの飛行1個、可能ならば武器か、防具か、装飾かのスキルを取得する事となる。


 飛行LvUPの日、異例ではあるがLv5よりLv7まで上げられる。

 2二つのLvUPにより、熟練訓練は困難であったが、これを克服する時間の間に、複合ライフルの開発も進み、俺は改良案も承認され、改良型MkⅡが出来る。

 騎兵達も、この複合ライフルの性能には既に採用を決定し、これに向けての訓練が行われていた、機甲兵達たちもこの性能の高さには興味があるが、何せ自らが扱う武器ではない、操縦に対応した開発が提案されるも、暫くのデータ集めが逆に提案され機甲兵の長であるブロードは渋い顔で了承した。


 歩兵、騎兵、機甲兵達からのデータにより、より総合性能が上がった事によって、統合装備の開発チームは、武器専用の装備である複合ライフルの改良型MkⅢを開発し、この洗練を行う一方で、特化装備の開発も始まる。

 統合されたことにより装備開発の速度は向上し、今までの蓄積されたノウハウにより有数の武器開発の集団とされた。

 この中でも裁縫師達は常に忙しい、暇があれば植物の関係者との打ち合わせ、現在はより強力な繊維化可能植物の開発が主題となっており、専門的過ぎて素人には全く分からず、飛行付与の専門家の俺も時々には参加し、開発チームの無理難題をどうにかしていた。

 ダンジョンでの狩も行い、溜まりに溜まった経験値をLvUPに使う。

 ▽

 ・スカオ

 [スキル]

 射撃武器Lv20→Lv30ランクUP可能 召喚Lv1 融合Lv1 付与Lv1

 ランクアップ:射撃武器Ⅱ

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 武器Lv20→Lv30ランクUP可能 NPC言語Lv1 飛行Lv7

 ランクアップ:武器Ⅱ

 スキル取得:装飾

 ・光姫

 [スキル]

 魔杖剣Lv20→Lv30ランクUP可能 召喚Lv1 融合Lv1 調合Lv1

 ランクアップ:魔杖剣Ⅱ

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 変化Lv10 変形Lv10→Lv30ランクUP可能 飛行Lv7

 ランクアップ:変形Ⅱ

 スキル取得:武器

 ・美姫

 [スキル]

 魔杖弓Lv25→Lv30ランクUP可能 召喚Lv1 融合Lv1 料理Lv1

 ランクアップ:魔杖弓Ⅱ

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 変化Lv10→Lv30ランクUP可能 NPC言語Lv1 飛行Lv7

 ランクアップ:変化Ⅱ

 スキル取得:武器

 ▽

「おーし。楽しい量産化の話だ」

「「待っていました」」


 何せ全員がランクアップの後に武器スキルを取得する事で、ついに量産化が可決され、騎兵達も、機甲兵達も待ちに待った量産化だ。

 この会議は白熱が予想されるも、既に開発チームもこれを予期していたために、対応する特化装備との融合もあり、各対応した装備案が提案されていた。

 量産化の基本となる装備の一つである複合ライフル改良型MkⅢ、最新鋭はMkⅣであるのだが、使い慣れたMkⅢが採用された。

 近接タイプ、銃タイプ、弓タイプ、クロスボウタイプ、サポートタイプ等に別れ、騎兵用にも近接重視か、それとも射撃重視かとも意見が分かれがちであったが、ハイケルも考えた末に支援用重視を採用していた。

 機甲兵達は、憎き鳥を倒すためにより強力な、より高い射程を誇る対物メインが可決され、これより大筋においての統合量産型装備の開発案が纏められて提案された。


 武装面の統合量産が可能になった事で、騎兵、機甲兵達の搭乗する乗り物開発も本格的になる、特に機甲兵達の乗り物は機械の為にこの開発は急務であるものの、より飛行に適した物にするための飛行と機械を持つ試験生がいる、開発チームもこれを受けてランクアップさせて、この強化に乗り出した。

 騎兵の強化に関しては異論は多かったものの、騎獣の強化が行われる、これには生物学のような知識がいる為に、二つの生産系より派遣された学者たちによりこの改良がおこなわれる。


 飛行団の技術の発達により、牧場でも、農園でもより対応する装備開発も行われ、造船師達も、これらの技術の成長により、エンジンだけではなく各種のパーツの強化に乗り出し、飛空艇の武装に関しては後回しとなった。


 技術開発が本格化し、量産化案が可決される中、代表である楓は忙しい時間の中、大好物な実験にも数多く立会い、主に科学分野の造詣を深める。


 飛行団に採用された統合装備、その中でも飛空艇の次期主力への時期に来ており、造船師たちの中でも、設計に携わる者達は難しい顔で議論していた。

 比較的暇な工事担当者、点検案からの改良案を提出し、これは可決され、本格的な飛行場の開発が始まる。


 全体的に忙しくなり、技術革新により開発案がまとまり、全体的な量産案が承認された。


 □行場、3月4日№218


 11月に該当する1日、全体的な量産化により、新しい飛行場が開発され、今までより遥かに扱い易くなった新飛行場、旧来は保存用された。

 飛空艇の4号艇、旅の途中Ⅱ、5号艇、旅の夜明けⅡ、6号艇、飛び立つ翼Ⅱが完成し潜水士達より派遣されていた海賊団も満足のいく性能であったが、武装面が昔のままの為に、直ぐに文句が噴出した。

 海賊団の長のドレイクも、武装面の問題を直ぐに改良案の乗せての開発を提案し、これは直ぐに了承され、武装面の開発も直ぐに終わっての量産も終えて搭載された。


 寒くなる頃の為に、防寒具が必要になるも、装飾のスキルを持つスカオは相変わらずの夏服、専用の装飾装備により全く寒くないのだ。

 厚着する全員の中、一人だけ最軽量の服装、浮くが、皆同じじゃないと気が済まない様な奴はいない、そもそも同じ民族ですらないのだから特に気にならないのだ。


 ボスは探されるも、未だにレアは出没し、このボスに対応した何らかの法則を見つけ出すために様々な事が試される。地上のダンジョンも大変な事でもある。

 飛行団も新人の募集をすべきか悩んでいた、同じ様な悩みの潜水士達の潜水団も、何処かに居ないという打診もあり、愚痴大会仲間の潜水歩兵指揮官も、何処かにいないものかと悩んでいた、少数派の超少数派の飛行団、潜水団、飛空艇や潜水艇の数を考えればどれぐらいの数字かは想像できる数だ。


「そんな事がな」


 潜水歩兵達の指揮官であるマーベック、名前はミサイルのような奴ではあるが、実働部隊の指揮官らしくやはり男性である、それでも異星人の中でも潜水を得意とする、WHO人のニクシーの一人だ。

 海の妖精らしく顔立ちは整っているが、体格が大きい事に2m近い体格があり、座っているだけでも大きい奴だ。


「どうしたものかと悩むわけだ」


 俺の言葉に、マーベックは難しい顔を緩める


「なんだよその顔は」

「いやたぶん転向する奴らが尽きた、そういう事だ」

「だからあっさりと諦めるのか?」

「ああ」


 こう言う諦めの良い奴でもあるが、副指揮官の方は全然納得がいかないらしく不満そうな顔で居たし、こちらの方が納得がいくような顔だ。


「私は全然納得がいきません」


 副指揮官のスピアラー、同じニクシーの女性であり、同じ様に整った顔立ちにマーベックより長身の体格の持ち主だ。


「一応募集はかけよう、誰も来ないのに一票」

「きます!」

「じゃ頑張って」


 この物言いに、副指揮官の方は肩を怒らせて立ち上がり去っていく。

 何やら家の副指揮官のクールな性格が、とても好感が持てる。

 その副指揮官の方も募集用のチラシを適当にゴミ箱に投げ込む。


「いつになっても人員が集まらん、地上から分けて欲しい物だ」


 さすがにクールな光姫も愚痴る、何せ必要に対し集まった数は哀しい程度で有り、募集を掛けても集まる見込みは皆無だと知れば、指揮官としては八つ当たりにエネミーを狩ってもおかしくはい。


「羨ましいな。贅沢な人員」


 光姫が呟く、何せ99%は地上だ。

 1%ぐらいと言いたいが、戦闘系は自由意志の一点張り、生産系は俺達は戦えないの一点張り、分けろよと言いたくなる気分は誰にでもある。

 PTの規模も基本的に10名位、飛行団などは3名、3倍以上もあり人員比、装備も最初から恵まれ、生産系も大きい、なにを取っても勝ち目のない話なのだ。

 飛行も潜水も難しい為に、地上の専門家たちは誰も取らない、何せ地上の方が生存率は遥かに高いと知れば当然の選択だ。

 この為に雇われている騎兵団、機甲兵団の勇敢な心がよくわかる。

 飛行団も、潜水団も辛い事が直ぐに分かるような数字的なものでもあった。


「帰るぞ、何やら辛くなった」

「ああ」


 飛行して帰還し、時々見かける地上のエネミーに八つ当たりの射撃を食らわせて狩りながら帰還、期待していた飛行団に伝えると、中にはあまりの事に崩れてしまう者もいた。

 牧場や農園の関係者も、人員募集失敗という悲惨なニュースに賭け事が終わる。

 困った末に、ハイケルやブロードに打診した。


「まあ興味は持たれている、何せ空を飛ぶのはやはり気分がいい」


 三つ目のブロードの顔を見る、二つ目の俺にとってみれば目を見るには無理だからだ。


「かといっても地上専用からの転向は難しい、今までとは全て勝手が違う、専用の装備も扱いが難しく、普通に考えれば至難だ、それでも興味を持たれるのは地上にはない様々な恩恵がある、何せ地上は競争相手は多いが、空の競争率は低い、運用面は確かに難しいが、個人的に言えば装備の支給を考えれば遥かに経済的だ」


 何やらよい話となった、魅力ある人員募集チラシの制作を依頼したくなる。


「専用の開発も進み、翌日位には来る奴も現れる」

「そうか!良かった!」

「騎兵も同じだ。ただ愛騎の方もある、これでなかなか踏み切れない奴らが多い」

「そいつは深刻だな」


 騎兵の問題である愛騎、他の試験生の中でも騎兵はこの愛騎の嫌がる事は絶対にしない、何故なら自分の半分と同じようなものだ。自分の嫌がる事を好む奴はいないのだ。


「中には好む奴もいるのだが、色々な柵から難しくてな」


 愛騎が好むが、PTの関係かららしい、難しい物である。


「だから、今までのやり方からある程度の解放を考えている」

「というと」

「旧飛行場の一部開放だ。特に訓練場の解放により勧誘も兼ねた者が可能だと踏んでいる、何せ訓練があれば多少なりともメリットがあると判断している」

「なるほど、メリットを強調し、ある程度の解放を提供し、これを踏まえてからの勧誘か、悪くはない、むしろ良い案だ」


 これを受け飛行団も潜水団も似たようなことを公開し、騎兵や機甲兵達が集まり出し、最初は勧誘するなの鉄則から、巧く説明し、装備の方も説明し、週に1度の休暇の前の土曜日に公開されていた。

 歩兵の場合、特に反応はなかった。

 暇な歩兵達は遊びだし、三次元ドッジボールが行われ、暇な歩兵担当の開発チームのメンバーは楽しそうに賭け事。

 指揮官と副指揮官は受付で、暇そうに菓子を食べる。

 うんともすんとも来る気配すらない、窺う人すらいない、せめて通信の一つでも来ないかとも思うが全くない、音沙汰無しのまま、余りに暇過ぎて菓子が尽きる。


「誰も来ないな」


 菓子が尽きてから光姫が話しかけてきた、俺も頷いてからつまみを取り出した。

 料理人推薦のジャーキー、梱包された箱には夕霧の印が記載される、光姫も開けてから甘くなそうなために残念そうだ。


「肉か、暇だしな」


 干し肉を齧りながら暇そうに暇をつぶしていた。

 冬の風が冷たいが、装飾による防寒効果で大分緩和され、春風程度の冷たさだ。


「暇な上に寒い」


 最近は良く呟くようになった、良い事なのかとも思うが、暇なので飲み物を出す。

 暖かいアーライルの紅茶、生姜の入ったジンジャーティー。

 出すと、光姫は礼を言って飲む。


「温まる、世知辛いな」

「そんなものだ。人気がないってのも考えるな」


 後ろの訓練場では楽し気な遊び、近くの二つの団にはよく来る人達、何やら受付の二人で、別空間にいる気分が更に寒く感じる。


「暖かい話でもするか?」


 俺の提案に、光姫は首を振り、いつもより老けた顔で寂れた感じの唇を開く。


「より寒さが身に染みる」


 納得である、せめて一人ぐらいは来て欲しい、もし来れば心より歓迎したい。

 結局は誰一人も来なかった。

 そんな土曜日の一日だった。

[人物]

・スカオ

本作の主人公 飛行団飛行歩兵の指揮官

・アキラ

スカオの仲間 飛行団裁縫師の長

・夕霧

スカオの仲間 飛行団料理長

・光姫

スカオ達の共闘中のPT 飛行団飛行歩兵の副指揮官

・美姫

スカオ達の共闘中のPT 飛行団飛行歩兵の弓師指揮官

・ミツナ

飛行団の腕利き鑑定士

・楓

飛行場・飛行団の代表

・ハン

飛行団の牧場代表

・ヨリィ

飛行団の農園代表、ハイケルとは約束中

・ハイケル

飛行団に雇われる騎兵団代表

・ブロード

飛行団に雇われる機甲兵団代表

・ロウ

地球人側の生産系代表

・ゼンヤ

ロウの仲間

・ダマスカス

ロウの仲間

・タスク

異星人側の生産系代表

・マーベリック

潜水歩兵の指揮官

・スピアラー

潜水歩兵の副指揮官

・ドレイク

潜水団より飛行団に派遣された海賊団の長

・カイオウ

地球人側の戦闘系代表

・ペーシング

異星人側の戦闘系代表

・ホエロ

不遇改善協会の染織師達の纏め役

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