[006]3月の№6。デスゲーム試験
3月3日の朝方、飛行士たちの拠点の飛行場、潜水士達の拠点の港に伝えられた事により、恐らく変化するという事は誰もが分かるが、未知なこと過ぎて誰も予想できない。
連絡を受けた牧場の人達も、このドロップの変化実験に、大至急生産系がかき集められ、大実験が始まる。
潜水士達がまず行い、潜水スキルを使った後に狩り、変化したドロップに、まずは成功であるが、品種の改良にし過ぎで膨大な系統があり、その数を全て行う、飛行士達も行い、これも変化、しかしあまりに数が多く、変化の豊富過ぎて利用価値となると、途方もない事になり、牧場の人達も、金を支払われても困るし、戦闘スキルを持つ者はいるが多くはない為に、議論の末に珍しいアイテムとの交換になる。
この為に生産系に属する者達は、自らの生産品との交換を申し出る。
飛行士達、潜水士達の全員が戦闘・生産系に属する者たちだ。何せ飛行や潜水は生活スキルに属し、生産用経験値で成長する、この為に、戦闘系、生産系の指揮系統には属さずに居た。
この二つのスキルを持つ者達が、極少数派の結果、行う作業も膨大に対しての人員が全く足りない、それぞれの開発チームも離れた者達を呼び戻して伝え、フル回転でこの作業を行う、その煩雑、手間暇、面倒は想像を絶する。
当然のように品種改良作業は中断された。
何せドロップを生み出すような作業だ、変化を与えすぎると誰もが困る。
これに植物の研究をする個所よりも連絡が入る。
防御草やサボテンを捕獲して品種改良を施すところだ。
通称は農園と呼ばれ、農家の中でも珍しい分野の所だ。
兎に角に人が足りない、飛行士達も、潜水士達もひたすら狩ってのドロップ集め。
しかも狩猟用やこのに属する植物用の武器もある為に、大変な事になってしまい、品種改良は一時中断された。
レア狩りの三名も捕獲されて輸送され、農園と牧場より無茶な事が説明された。
レアの捕獲である、さすがの三名もこの無茶には首を横に振る、無理というしかないのに、やれと言ってくるために、色々な物を天秤にかけていた。
農家より出された報酬、専用の漬物系の植物を育てよう、これに三名は大きく頷く。
俺れらのPTと共闘中のPTにレア狩りの三名、腕利きの鑑定士のミツナ、レア捕獲作戦が開始され、最も簡単なレアの猪を捕獲し、その途中でレア中のレアの猪も捕獲、レア猪、スーパーレアの猪の捕獲により、牧場は沸き立つ、今度は農園である。
植物をどうするか、必死に考えた末に、生産系を束ねるロウ達に協力を頼み、盗みという極めてレアなスキルを持つダマスカスの協力で種を盗んだ。
スーパーレアも盗み、激高したエネミーはレア狩りが容赦なく狩った。
ノーマル、レア、スーパーレアの三種類、この三種類を混ぜ合わせた品種も考案され、ノーマルに関しては途方もない系統がある為に、対応するレアもスーパーレアも膨大な数となり、この混成の場合の系統も必然的に膨大となる。
いきなりの資源が現れた事に途方に暮れる長達、余りに仕事の量が激増し、仕方なしに飛行場の近くに農園と牧場を建設、同じ様な港の近くにも建設された。
地上系では変化が全くしないのにと愚痴る者達も居たが、二つへの酷い言われようも有ったので、誰も怒りはしなかった。
□飛行場
飛行士達も大変なら、支える開発チームも大変で、牧場も、農園も大変である、四者の幹部により会議になると、その作業はあまりの事なので月に1度なった。
土木、建築などの作業チームも、大忙し処ではない為に、計画が立てられて、資材が集められ、対応する開発がすすめられ、飛行士達も意見を提案し、関係者からも意見が集められ、牧場も、農園も品種改良は中止で有り、ひとまずとドロップ狙いのバトルである。
開発チームも忙し過ぎて、休暇の申請が全て却下された。
膨大な資金に関しては、金庫番たちの労働環境の問題からストライキ一歩手前になり、全員が集められて資金は等分された。
資金を渡されても困る為に、そもそもに普通に買える物で、資金は使えても、全てが支給されるので必要ないのだ。
楓は一計を案じ、ある程度の消費を敷いた、それは弾薬式の銃の開発である。
さすがに金額が途方もない消費額になるので、まずは狩猟用となる、その他の弓矢の開発、クロスボウの開発など、狩猟に重点を置いた開発が進む。
NPCの店で売られるような地上用とは、掛けられた資金の比率が違う為に、飛行士用の紙幣が開発された。
ちなみにテイムなどを持つ者が居て、従者がいるのだが、スカオや美姫はNPC言語持ちの為に、時々通訳を頼まれる、この為に、試験に合格した後は盗みか、それともNPC言語か、相当な議論になっていた。
飛行技術がある為に、浮遊などは取得希望者がいない、色々と調べたい開発チームあるが、盗みをバカにする者達は皆無なので、欲しいではあるが、NPC言語の重要性もあり、開発チームも困る事の一つだ。
また飛行状態により生産も試され、これに変化が生まれると大混乱である。
そんな中、騎士達、機甲兵達からの話もあり、これを専用の物の開発と共に契約した。
飛行場は拡張され、土木・建築計画も大幅に見直され、開発チームも飛行士、騎士、機甲兵の三種類に、牧場、農園の二つ、自らの開発製品の開発などもあり、他の生産系より人員募集が行われる、大量に集まる生産系に、試験官たちは面倒臭すぎて困った。
筆記、実技、面接となり、受かった者は極僅か、何せ必要となる最低限の知識すら専門的過ぎて困るのだ。
対応する教科書も制作され、筆写士達により複製されて広く広まる。
飛行用の騎獣、飛行用の機甲兵、これらの開発を進めるチームは、余りの大変さに匙を投げたいのを我慢する偉い人達だ。
飛行士達は、飛べる者に興味津々の為に、どちらも試したいと申し出る、二つの傭兵団からは、どうしたものかと悩むが、ひとまずはと許可を出し、何せ自分一人で飛べるために全てが勝手が違う。
ただ空に魅せられた者たちなので、会話が弾む。
指揮官達の会話もあれである、直ぐに愚痴った。
何せ対応する物を0から開発していた、当然のように並みならぬ苦労があった、報われたとは思っていない、試験に合格し、再びリアルの空を飛ぶ、それを夢見ていた。この為に開発チームはまさしく神である。
飛べれば幸せな連中の飛行士達、農園や、牧場でも、忙し過ぎて目が回り、仕方がないので週に1度の休暇が制定された。
そんな週に1度の休みの日、俺らは集まり、ダンジョンに潜ることにした。
ミツナも休みの為に暇だったこともあり話をして参加してもらい、ダンジョンの一層の一区、今までの経験値を使いLvUPだ。
・スカオ
[スキル]
射撃武器Lv2→Lv10 召喚Lv1 融合Lv1 付与Lv1
[従者]
ゴーレム
[スキル]
武器Lv1→Lv10 NPC言語Lv1 飛行Lv2
・夕霧
[スキル]
薙刀Lv2→Lv10 回復魔法Lv1→Lv5 舞踏Lv1→Lv5 料理Lv1
・アキラ
[スキル]
魔杖剣Lv2→Lv10 攻撃魔法Lv1→Lv5 歌Lv1→Lv5 裁縫Lv1
・光姫
[スキル]
魔杖剣Lv2→Lv10 召喚Lv1 融合Lv1 調合Lv1
[従者]
ゴーレム
[スキル]
変化Lv1→Lv10 変形Lv1 飛行Lv2
・美姫
[スキル]
魔杖弓Lv1→Lv10 召喚Lv1 融合Lv1 料理Lv1
[従者]
ゴーレム
[スキル]
変化Lv1→Lv10 NPC言語Lv1 飛行Lv2
▽ゲストメンバー参加
・ミツナ
[スキル]
鞭Lv1 軽業Lv10 索敵Lv10 鑑定Lv20
[装備]
メインウェポン:鞭
メインディフェンス:高等部の試験生の強化複合制服。
携帯鑑定アイテム
ダンジョン探索セット
▽
6名となりダンジョン、飛行中の俺、姉妹、何せ飛んでいる間は様々な恩恵がある、その最大のものが経験値、飛んでいるだけで入る。
飛行のLvアップはエンジンの換装と同じなので厳しく制限されている、何せエンジンの換装は飛行士達にとってみれば機種変更と同じ、乗り物に乗る人ならその意味がよく分かる、機甲兵の操縦士達も、この難しい問題には直ぐに上げない事を勧められた。
上げ過ぎる事により弊害を知っていたのだ。騎士達はこれが分からない筈がない、騎乗により普通のスキル持ちの者は上手くなると思うが、一つのLvUPで上手になる訳ではなく、騎乗の性能が上がり、それに伴うノウハウが足りなければ乗れなくなる。
性能の向上は必然的な様々な対応する装備の開発にも大きな影響を及ぼし、Lvの上げ過ぎの為に対応する装備がないという悲惨な状況もある。これを上げ過ぎ弊害と呼ぶ。
元々のスキルを持つWHO人はこれをよく知っており、Lvの上げ過ぎには厳重注意だ。
変化士の姉妹は、変化による研究を進め、多様な変化を可能とする、特に姉の方は変形もある為に、自在に変化させるられる、それらから忍者のように石になる事も可能とする。
「索敵反応在り~所謂のガード、能力は大したことはないけど、衛兵を呼ぶよ」
「噂に聞く索敵か、どれ位の距離にある」
「凡そ20m、ただマップからしても接敵地点はかなり先」
「なら問題はない、久しぶりに菓子でも」
アーライルのはちみつと香辛料たっぷりの棒菓子のハニーステックを取り出し、食べる、このお菓子は大変人気があるので料理人の中でも菓子に特化した製菓職人たちが、主力商品とする人気商品だ。
今では異星人の一つが地球人なので、他の異星人と組むのが当たり前だ。
組んだ経験のない者を探す方が難しくなり、こうなると通常の地球人とは随分と変わっており、特に潜水士達や飛行士達は、この傾向が非常に強く、もしリアルに戻っても普通の生活は無理と言われていた、違う者になり過ぎて、普通の生活が困難になってしまったのだ。特に地球の日本人はこの問題が深刻だ、何せ社会的に問題のある混乱期を抜け出したばかりだ。
とはいえ、ダンジョンの中にある宝などを発見しても迂闊には触れない、大抵がミミックであり、トラップだらけの物であり、射撃で破壊した後に回収するのが当たり前らしい。
「宝発見~」
「おう、壊すぜ」
発見した宝に向けてのアサルトライフルの全力射撃で破壊した。
そこにミツナが接近し回収、軽業で素早く飛び退いてトラップを警戒する。
HP・MPの両方が中回復の飛行士の強化制服の為に、次第に回復するMPもあり、性能的にはあれであるが、今後の改良項目だ。
鑑定を使ったミツナにより、珍しくもないノーマルPOTらしい、どうやら飛行状態でも宝は変化しないようだ。
これにがっかり、だが詳しい鑑定作業もまだ終わっていない為に、今後の事もあり回収を行う。
次に発見したのが一つの草のような植物、索敵反応はなく、エネミーではないが、ダンジョンに生える草とは噂にも聞いた事がない。
困った末に、楓に連絡した。
直ぐに専用部隊が送り込まれ、楓も直に指揮しながら、慎重に植物を回収、農園の人達が詳しく調べる為に、直ぐに持ち出そうとするが、危険も考えてひとまず詳しい鑑定が行われ、各所より植物学者も集められ、多くの事は不明でもあるが、判明した一つの結果。
新種であった。
これには途方もない価値がある為に、今後の事もあって、ダンジョンでの探索も決定した。
ダンジョン探索の、歩きながらの三名に対し、飛行状態の俺と二人、遭遇したガードに容赦なく攻撃し破壊、ドロップは回収し、重くなりすぎると困る飛行士から、身軽の鑑定士が受け持ち、このまま探索を続ける。
探索を続ける中、幾つかの変化も発見された、まずは草が生えた、次に宝箱の外見の変化、エネミーからのドロップ変化の他に、今まで壁だったところに部屋が出来ていた。
この報告に、飛行場では全然嬉しくない空気だったらしく、変化があり過ぎて仕事だけが膨大に増えていく、それも掛け算のような倍速で行われる結果だ。
ある程度の探索結果から、ドロップなどの詳しい鑑定を終えたミツナが説明し、飛行士用の鉱石が発見された。飛行石というものだ。
生活スキルの中でも採取や伐採などの採取系に代表されるものは、手にした物の品質向上などの恩恵を与え、もし飛行状態でこれを可能としたら新種が現れる予想がつく。
ダンジョンより帰還し、近くの飛行場に戻り、昼食の為に飛行場の屋上に行く、幾つかのPTが宴会中で、更に静かな時間を考えて屋上公園に行く、ここでのランチだ。
「今日はこれです」
渡されたのはハンバーガー、人気のジャンクフードの一つだ。
サンドイッチなどのあるWHO惑星ではあるが、これはなかった為に人気があるメニューの一つだ。
ミツナも好物の為に歓び、美姫は既に食べ要していたが、夕霧に睨まれて止めていた。
「普通のハンバーガーを目指した物です。御賞味あれ」
「「頂きます」」
食べる、普通のハンバーガーだ。いつもの高級食材ばかりの生活から信じられない庶民的な味わいだ。とても懐かしい味わいに、何やら懐かしい思い出が蘇って、頭を廻る。
日本人の俺やアキラやミツナも、止まっていた、忘れがちになるが昔は平和な国だった。
懐かしい記憶が頭を廻り、懐かしい人々の時間が始まり、懐かしい当り前と信じていた時間が蘇り、変わる事のない日々に、飽きていた時間を思い出し、何やら辛くなった。
胸が熱くなり、頬や目頭やら、なにやらが熱くなる。
一言で言うのなら幸せの味だった。
姉妹にとってみれば美味しい料理かも知れないが、思い出のある料理の為に、どうしても考えてしまう、昔には戻れないが、思い出す事は有る。
「良い味でしたか?」
見透かしたような眼差しの声に、俺らは頷いて、食べ始める。
なんとも塩辛いバーガーであった。
□
飛行場の地球人たちの顔は、皆一様に暗い、いつもの明るさや陽気さは一切消えていた。
異星人の人達からも不思議かもしれないが、幸せの味と聞ければ察したらしい。
色々と有ったが、浮かれていた事は間違いなく、足元の見えないままの飛行状態だったらしい、しかも方向性まで見失う、料理人達からの贈り物に、頭をミサイルで殴られたような気分だ。
皆若い、年齢的にも満10歳、満19歳だ。
10年の時間の差しか無くても、経験した事は似ていた。
地球の情勢もあり、もし試験の不合格になれば全てを捨ててまで試験に臨むんでいた者が生きて行ける環境はない、国に帰れば最低でも生きたままのモルモットだ。
運がよくても国外追放、更に幸運なら家族の無事だろう。
地球で異星に渡る、この意味する事は全ての破滅だ。渡るチケットを手にし、船に乗って初めて安堵するような環境だ、もし追っ手に捕まれば闘争しかない。
日本はまだマシだ。何せプレイヤーへの理解が多少はある、この為に俺の家族は縁を切らずにいてくれた出来た家族だ、今でも誇れるような家族だ。
この事をどうしたかというと、どうしようもない為に個人に任すとになった。
共闘中のPTの二人に、素直に話した。
地球の情勢、国際情勢、日本の事、故郷の事、それらの背景からの個人的な事。
日本という地域は、他の地球の国という地域より、宣戦布告を受けているに近い状態だ。
いつ攻められてもおかしくない、いつ侵攻が始まり、滅ぶかもわからないそんな時間がある、毎日の朝日が記念日のようなものだ。毎日の水が貴重な物だ。毎日の食事がどれほど高価な物なのかもわかる、例えなんであれ地球と、日本、その問題から地球人が日本人を見れば闘争しかない、有るのは戦いのみ、どうしようもない壁と溝がある。
二人には分からない事でもあったが、分かる事もあり、一人一人の手を握っていた。
ミツナは泣き、アキラも辛そうだった、夕霧はいつもの温和そうな笑顔、俺は特に変化はないが、暖かく手を握る相手が居る事が嬉しかった。
いつか、故郷に帰ったら、空が飛びたい、小さな所でも、その空は知らないからだ。
美姫はいつもより優し気な微笑みで握り、光姫はいつも通りクールな面持ちで握っていた。
それぞれが抱えるものもあり、絶望か希望かの二択の境にいる。
この日から本当の意味での試験が始まった。
休暇も終わった翌日、飛行士達も、朝食、その後の時間を作り、ホームルームのような時間を設けて、それぞれの事を少しずつ話すことにした。
お互いの事を知る事を始める事で、まず一歩を踏み出した。
確かに小さなものかもしれないが、異星の者達からすれば分かり辛い事でも、話、伝え、理解を互いに深めていく事を決めた。
小さな連中は、10年前を知らない、それを聞きたがった。
同じ国の者が少しずつ話、懐かしい記憶が巡り、同じ日本人同士で集まり、昔話をしていた、同じ地域に住む者同士、懐かしいネタを言い合い、普通だった時間を思い出していた、懐かしい時間が想い出になり、過ぎ去った時間となって蘇り、試験に受かったらではなく、試験に落ちたらも話し合った。
ひとまず、家族を連れて逃げる事が決定された。
少しでも権力を知る者が居ればわかる、虐げた者が牙をむくのが一番面倒だからだ、それも不死の工場となった者達が反旗を翻せば、当然のように戦争しかない。
プレイヤーになる事、地球人に限れば、地球との闘争の時間に身を置くことに他ならないのだ。
与えられた時間に、可能な限りの力を身に着け、これを打ち破るしかない、どちらかの全滅しかない訳ではないが、互いの都合の押し付け合いだ。その結果殺されるのを待つのは寛容な人ならできても、寛容な人達ですら無理な事もあるのが、当たり前の戦争だ。
恐らく地球の人々を守る、ヒーロー達とも衝突することになる。
相手にも都合があり、プレイヤーにも都合がある、それを話し合いで解決できる段階にないから、闘争、殺し合うしかないのだ。
プレイヤーになる意味はまだ分からない、でも一つある事、別れて繋がる事、どうなるのかはわからないが、姉妹の握る手を感じればわかる、暖かい物だ。
「おーし上がるぞ」
いつものような感じではないが、今まで以上のやる気と、一歩の踏み出しで見え始めて環境、いつかリアルの空に上がる日、同じ様な気持ちになれれば幸いだ。
□
飛行士達、騎獣に乗る、天騎、天機の二つもあり、軽い模擬戦も行う、生身の方が遥かに旋回性などの格闘性能が高いのに対し、最高速度や航続距離、武装面では遥かに劣る。
天騎達は、中間に位置し、騎獣に乗る事での様々なメリットがあり、格闘性能に劣る面もあるが、生身を軽く倒せるぐらいの強さがあり、天機達は、最高速度や最高武装からの重戦闘機だ。
生身は歩兵、秀でるのは格闘性能に代表される物。
天騎の飛兵達は、バランスの良い性能を誇り、最も基本とした戦闘個人だ。
天機の航空機達は、最高速度に重武装、資金的な問題を解決すれば真正面きっての戦いのみ最強の存在だ。
今後の事もあり、午前中は互いに学び、お互いの分野について学習し、反復し、鍛え行く、昼食後は開発チームからの話を聞いての、牧場や、農園などでの狩、もしくはダンジョン探索だ。所謂の作戦単位でもある。
そんな一週間の事が指揮官達の会議で決められ、それぞれの分野をデータ化し、長所、短所からの、各種訓練内容を決定し、休日の前に行われる運動会、一番の目玉は鬼ごっこ、広大なフィールでの鬼が追う、捕まるまでにひたすらに逃げる。
こうやって時間は過ぎ、幾つかの週が過ぎた頃に、ついにエンジン換装の日が来る。
開発チームも早すぎる怒られたが、これは説明し納得してもらった。
空を飛ぶ力がいる、どうしてもいる、必ずこれは飛躍するための翼となると。
▽
飛行Lv2→Lv3
▽
同じ様な訓練内容の日々でもあるが、エンジン換装が終われば、性能は向上し、鬼ごっこの場合だと、歩兵たちの格闘瀬能の高さに全く捕まらない、足は速くはないが、旋回の頻度が高く、上昇、下降もよく行う為に、他の騎兵や、機兵では捕まえられない為に、当然のように特別ルールが課せられた。
騎兵や機兵はドックファイトに敗北したのが余程悔しかったらしく、毎朝の特別訓練が密かに行われていた。
一言で言うのなら騎兵という槍で鉛筆を行う様なもので、機兵でいうのなら機関砲で裁縫作業をするぐらいの差がある、適正というものが愕然とするほどの差となって現れたのだ。
歩兵たちの訓練内容も有って、よくある鬼ごっこではあるが、高速に旋回し、上昇、下降を繰り返すために、一般的な地上戦闘の専門家からすれば捕捉するのも難しい。
最高速度には全然劣り、むしろ最低限しかないが、軽く小さい為に小回りが利き、一瞬で旋回を終えて背後に回り込む遊びが大変得意だ。
騎兵や機兵が逆立ちしても出来ないこの遊び、通称は目隠しという、この遊びと鬼ごっこを混ぜると二つより禁止令が出るぐらい無理なのだ。
機兵の場合だと接近されていつの間にかに頭に乗られるのも多い、格闘性能に秀でない航空機の為に、近接戦闘が大変に苦手なのだ。
二つからすれば面白くない、開発チームに頼み秘密兵器の開発を依頼していた。
聞いた彼方此方からお前らは子供かと言われない筈はない。
一か月が過ぎた頃にエンジン換装、互いの得意とする分野もあって、LvUP後には、直ぐに遊びになり、広大なフィールドを舞台の鬼ごっこ、捕獲の為に投網を用意する頭があったらしく、満面の笑みで用意していた。
この投網は歩兵たちの最大の天敵となる、何せ速度がない為に簡単に捕まり、捕獲されるので悔しくなって、開発チームに依頼、これはどうしようもない為にどうにかしろと言い渡された、運が悪ければ散弾により撃墜されるからだ。
仕方なしに、朝から訓練、投網対抗訓練に、熱心に訓練したが、どうしようもなかった。
一か月後の換装の日、LvUPしても最高速度がとても悲しい歩兵たち、他の二つの速度伸びがとても羨むのが分かる、悔しいので開発チームに依頼し、足を速くしてくれと頼む、無理と断られた。
バランスの良い騎兵たち、愛騎に対しての愛情を注ぎ、毎日一緒に居ても全くストレスにならないらしく、放置していれば厩舎に居て愛騎と語り合っていた。
歩兵からすればよくわからない考えの為に、不思議でたまらないが、機兵たちにはよくわかる為に会話が弾む。
乗りと歩兵ではどうも基準とするものが違うらしい。
そこで考えてみると、歩兵は単独で飛ぶ、対して乗りの方は乗り物の力を借りて飛ぶ、この為に乗り物には感謝し、愛着がわくようだ。
飛行士達も、訓練もあるが、時にはPTを組む事にもなるので、PT戦を行う。
これが非常に難しい、何せ分野が全く違う、機兵は一撃離脱に対し、歩兵は格闘戦オンリー、歩兵に合わせれば機兵が付いていけず、機兵に合わせれば歩兵が付いていけず、中間の騎兵たちは頭を悩ませていた、どちらも必要であり、自分達が中間の為にどうにかしなければならないと思ったらしい。
今度は騎兵たちが真剣に開発チームに相談した。
これにはいつもの子供のような事とは違うと感じたらしく、どちらにも対応する支援装備の開発が行われる。
換装は延期され、支援装備の調整に手間取りながらも、他の兵科、歩兵も機兵も同じ様に、違う分野の為に待っていた、どちらかを優先するとしたら機兵の機体に輸送されて、歩兵が降下していくしかない、しかしこれでは同じ作戦領域にいるのはまず不可能だ。
これに対応させるために、開発チームも腰を上げて対応装備の開発が進み出し、その間にも装備の調整なども行い、牧場や農園でもこの問題もあって悩んでいるのが手に取るようにわかったらしい、何せ歩兵や機兵が珍しくミスをすることがあったからだ。
牧場や農園の人達も話を聞いて、分かる分野があるらしい、何せ農園などでは作業用の機械、作業用の騎獣を使う為に、開発チームにが対応する装備を開発していたからだ。
潜水士達の分野でも似たような問題もあり、何より潜水深度の違いから装備が違い、担当する役割が違う、これを上手く機能させるために騎兵たちが頑張っていた。
指揮官達も集まって話、俺としてもこのままではまともな作戦単位が機能しない、もしこのままリアルに帰還すれば、間違いなく作戦が崩壊し失敗する。
この為に飛行士達の統合した作戦本部の設置が検討されていた。
これを楓にも話した。
「難しいよ。僕らは開発とか、飛行とかはできても、統合した作戦を立案するのは得意とする分野じゃない、天才的な万能な人がいても難しいよ」
「なんだが、どうしても必要となってしまう、何せ作戦が行えなければ試験の後に大きく響く、急ぐつもりはないが、ゆっくりと研究を進めるしかない」
「それならできるけど、さすがに空戦の専門家はね、しかもそれの作戦となると1年で基礎が出来たら僕は奇跡を信じる」
「だよなぁ・・・」
「奇跡は起きない前提で進めるしかないのに奇跡を信じるのもあれだよ」
「全くだ」
「ロウ達ならどうにかしてくれるかも」
「そうか!よし」
飛び出した俺に、飛んでいく姿を見て楓は突風により書類が舞うのを仕方ないといった面持ちで見ていた。
飛行し、町に来てからロウ達の居る生産系の本部に飛び込み、受付で場所を聞いてから飛んで向かう、上空を飛んでいたので特に問題はなかった。
「おう」
丁度書類仕事の最中だったらしく、こちらを見てから挨拶し、こちらも挨拶してから直ぐに話しだした。
「・・・無茶を言うなよ。空戦の専門家の統括作戦本部って、んな奴が居る訳がないだろうが」
「じゃ参謀を貸してくれ」
「・・だからいねえよ。居ると思うか?」
「・・・いないのか?」
「居る訳がないだろうが、どこに航空戦の作戦可能な10代がいる」
「困ったな、やはり研究して進めるしかないか」
「ああ。しかしまたLvアップさせたのか」
「ああ。今はLv4だ。これがまた困ったものでな、足が遅い」
「・・・そうかよ」
「騎兵とかならまで追いつけるが、機兵となるとどうしても無理だ」
「どちらもきへいな」
「騎士と機甲兵だ」
「なるほど、やはり乗り物に乗ると違うのか」
「全くの別物だ。言うなれば人力と動力付きだ」
「なるほど、確かに違うな、とするとそれを一つの作戦にするのは至難だぞ」
「そうなんだ。これをどうにかするしかないのだが、どうにか研究から進めるしかない」
「・・・気長だな」
「ああ」
「現状を分かっているのか?」
「試験に落ちたらモルモット」
「分かっているのならよいが、飛行バカ共に口煩く言うつもりはない」
「お、おう」
「仕事をしているので更に文句ない」
「おう」
「しかし、なんで俺の仕事は増えるなんだ!」
「仕事だから」
「超めんどい」
「偶には休暇を申請して休めよ、ストレスで爆発するぞ」
「休暇か、悪くない、ああもういいぞ」
「おう」
飛んで戻り楓の話した、なんというべきか予想していたらしく、特に何も言わないでくれた。
□
時間は経ち、3月3日の№124、四か月目になり、明日で5カ月目だ。
会議の為に出席し、同じ飛行士仲間の指揮官達、機兵のブロードはイケメン担当の優男だ、隣にはハイケル、こちらは渋い武人風の騎士然とした男だ。
実働部隊の指揮官は男のみだが、開発チームや農園や牧場の方は女性が多い、この為に幹部の全体的な比率でいえば男性が少ない、それに拘るのは文化的なものの為と言われる。
ちなみに二人とも異星の出身で、ブロードは三眼があり額に目がある、ハイケルは額の角があり、見るからに異星人だ。
各所よりの報告書に目を通し、成長が著しいのが二つの食料供給所、仕事が多過ぎて常に募集するところだ。
モンゴル出身の牧場主のハン、東欧出身の農園主のヨリィ、二人にも挨拶する。
ちなみに試験の為に誰も恋愛には消極的だ。もし失敗すれば辛い事になる事を理解しているからで、合格したらという約束をする者達も居る。
「相変らずドロップの変化する話か、聊か怖いな」
日本語なのは翻訳機能によるものらしい、騎士然とした男のハイケルの台詞だ。
「ハイケル、言うのもなんだけど、貴方の服もそのドロップよ」
東欧出身のヨリィが言う、二人の関係を言うのなら約束した仲だ。
「そうだった。どれぐらいの資金になる」
「一つの金額を言うのなら100万コイン、ちなみに系統だけでも数百種類、これがノーマルのみの系統よ、レア、スーパーレアの二つも有るわ」
「途方もない金額だ。僅かでもリアルに持っていけたらな」
「言わない事、気持ちは分かるけど、合格すれば」
「そうだったな、でスカオ」
「愛の語り合いに俺を巻き込むなよ」
ハイケルに殴られた、ヨリィの方は顔を朱くし俯いている。
「そう言う揄いは辞めろ」
「了解、で」
「歩兵ならどれくらい運べる」
「・・まだ判明していないが、このままの成長率でいえば既に人一人が運べる」
「とても重要な事だ」
「・・・歩兵の数から言っても運べる量は限られる、だがもしランクが上がれば?」
「・・・必然的に上位となり、その性能は別次元となる」
「そうだ。しかも飛行の最大の長所は常に経験値が入る、もしリアルでこれを取ってから移動しながらLvUPを行えば?」
「常に成長する事により、必然的な往復間の効率は常に上がり続け、結果としては予定より早く済む」
「それが1名なら効率で済む、それが2名、3名と増えれば陪乗的に増え効率は飛躍的な成長を遂げるそれが10名という数字になれば、もはや別次元的な数字となって現れる」
「装備は」
「その点は任せろ、故郷の知り合いに借金してでも買う」
「恩に着る」
「問題は外にある」
「なんだ」
「言葉だ」
ハイケルは黙る、こればかりはどうしようもない壁だ。
「何とかはできる、翻訳装置は付いたものを買えばいい」
「・・・」
「最大の問題はハイケル、分かるだろ、地球には異星の翻訳装置がない」
「何事も障害は付き物だ」
「なら言うまいが、もしかしたら以外に完成しているのかもしれない、俺の兄は科学者だ、知識を集めるのが大好き、楓と似た様な奴だ」
「なら言語は」
「すでに手を打っているとしか思えない、異星の知識というものがあり、それが目の前にいるのに指を銜えるタイプではない」
「分かったそれを利用する」
「ああ。ただ物を作るには時間がかかる、どうしてもかかる」
「それで」
「あの兄の事だ、既に設計図なども考えているだろう、頭は楓並みだ、当然のような今後の事から数多い手を打つ、特に潜水や飛行の可能性に気付き、これを必要とするだろう、当然のように異星の者達も力を貸す、地球では考えられない物が完成しつつあると予想している」
「・・・戦争か」
「するしかない状況だ互いの事情は既にそこにある、話し合う段階は既に済んだ、殴り合う時間になる」
「可能ならば星を傷つけたくはないが」
「地球人にとってみれば母星は一つ、それを壊す事は考えないさ」
ハイケルを安心させ、ヨリィも安堵していた、何せ楓の頭は天才的だ。それに並ぶと言えばどれ程の安堵うむ事か。
逃走計画もまだ始まったばかりだ。
既に関係各所では似た様な計画があり、異星の者達でも自由な立場の者はすでに動き出し、地球での大脱走計画も浮上していた。
リアルに戻れば即動けるようにリアルを模したトレーニングも行われ、よりリアルに酷似した様々な兵器が考案され、特に飛行、潜水の二つは主力となりつつある、陸上のみではどうしても無理と判断され、また逃走の場所が比較的理解のある日本の為に、日本人の試験生は、頭を捻り、借金を考えている者が殆どだ。
プレイヤーとなれば生きた工場となり、借金など簡単に返せる、それも10倍、100倍など余裕だ。十日で1割でも喜んで行えるぐらいになる。
リアルより隔離された試験世界、これが様々恩恵をもたらし、リアルでの試験よりもはるかに有効な事が可能で、それがタイムラム、何せリアルとの時間が違う。
「さて、逃走には一つの問題がある、それが無人兵器だよ」
楓の説明の元始まる、無人兵器は厄介な機動兵器だ。何せ疲れない、感情もない、マスターの言うとおりに全てを行う完全無欠の兵士だ。当然のように悪逆非道も行う。
「すでに各所より実物が手に入らないが、中には好きな人もいる訳で、とても詳しかった、それらから要注意の物を候補に挙げ、更に主力になるうるのがこいつだ」
アメリカの最高傑作の次期主力量産機、スターダスト、各種兵装あるが厄介な性能はその索敵範囲だ。何処までも広域に張り巡らされた索敵により、海以外の全てを重ねる。
「武器の方は正直なところ悪くない、訓練の要らない兵器なら当然のように多機能にする点もよい発想だ。人間では扱えない兵器、これを膨大に収めた物、それが主力兵器だよ」
多機能型ウェポン、アークロッド、多様過ぎる能力を持つ正しく万能の破壊の杖だ。
「対して味方になりうる日本」
誰もが暗い顔になる、他の主力候補に比べ、比較するのが悲しくなるだけの貧相な物だ。
楓も必死に良い所を考えている様子だが、どう考えてもない。
「資金的には魅力だね」
性能は性能でも運用性能の方だった。
日本は陸地で接して居ない為に、攻めるのなら海か空か宇宙かの三つだ。
「護り易いんだけど、逆に物資輸送が難しいんだよね」
言い換えれば逃げるのが難しくなる。
「日本の武装法の方も悪くはない、ある程度の自衛の許可、これは非常に合理的だ。僕としてもこれには賛成だよ。何せ地球では敵しかない、武器に馴染ませるのが理性的だ」
「楓、脱線しているぞ」
「ああ。まあ情報の専門家たちも頑張っているけど人間は物質だしね、簡単な飛行機や船で逃げるしかないよ、最大の敵は大国たち、日本は中国、ロシアと接する、正しく風前の灯火だね」
「やはり無理か」
「いや、僕らのスキルさえそろえば、経済的に脅す、もし手を出すのなら金融システムを破壊する」
もしこれをされたら一つの国位では済まない、地球の急所だ。幸いな事に日本はこれに関係しない、何せ他の国との関係全てがないからだ。
「情報の専門家たちの飽和攻撃を食らえば、防ぎようがない、全てのネットが断絶し、地球の情報ネットワークは完全に壊れる、これを相手も予想する、だから防備が整うまでは手を出さない、万全を期し日本を亡ぼすために努力するだろうことはわかる」
「嫌われ者は辛いな」
「味方も多い、僕らも日本は可能な限り護りたい、何より学府があるところは守りたいしね」
「感謝を」
「ただ地球人の極めて厄介な事がある、まず日本の弱体化の為に物資の遮断、情報の遮断、この二つにより攻撃に耐えているのなら次に出る、化学兵器や生物兵器、これらを容赦なく使うだろうね、恐らく日系の人達も迫害の歴史だ。地球人は極めて冷酷な考えが出来る所が怖い所だよ。一方でこれを防ぐための技術の開発中だ。それが植物、主に化学兵器やガス攻撃の無力化、サンプルは少ないけど、幸い時間が有るしね」
「60億との戦いか、考えると辛いな」
「何とかなる、少なくても幾つかの計画の中でも、最も有力なのが飛行士達による相手国へのゲリラ活動、航空機能の破壊、これによりある程度の自衛にはなる、狙うべきは幾つかあるけど、まだ時期早々だね。まあ準備は」
「空港での遊びはしている、すでに幾つかのPTよりここら辺がという報告もある、言おうする爆撃兵装が必要だが、必要が無くてもスペルによる破壊も視野に入れている」
「うん良い結果になる、なんにせよ全員の家となる日本には頑張ってもらわないと」
日本人には辛い所である、ただ主力兵器の性能差が余りに酷い為に、当てにできる兵器ではない、運用面だけしかとりえのない兵器だ。
対してアメリカの主力兵器、涙が零れないのが不思議なぐらいの性能だ。
他の主力兵器候補も日本の主力兵器に比べれば性能から、単機で一部隊が全滅するぐらいの性能差がある、その部隊が日本というのがなお辛い。
会議は続き、外では久しぶりの雨が降り始めていた、湿る様な風を想い出し、懐かしい夏を思い出していた。
□
なんだかんだ言ってレアが消えてから、ボスが狩られ、3月4日なる。
待ちに待った仕入れの日、大変なお祭り騒ぎだ。
各所の代表たちも集まり、楓に連れられて入った一つの小屋、地下の方に扉があり入り、内部には広大な兵器庫、膨大な数の兵器があり、地球の軍事的な歴史そのものだ。
一人の少女が待っていた、ペールピンクの髪をした144cm程度の低身長の少女、異星人側の生産系を束ねるタスクだ。
近くには試験生の中でも有数の技術者が集まって、楽し気にゲーム中だ。
「やあ」
「久し振り楓、飛行隊長さんも来たの」
「スカオなら何の問題もないでしょ?」
「問題はない、ただずっと飛んでいるから驚いた」
「飛行士の中でも歩兵たちは飛んでいない方が気が変になるんだ、少しでも地面に接するのが怖い訳じゃないけど、飛んでいない事への不安かな」
「飛んでないのは落ちる事」
「うん。その結果を待つのは終わりだからね」
「来て」
案内された一つの兵器、その中でも異彩を放つ盾だ。
これをタスクが持つ、相当軽いらしい、渡された盾は確かに軽い、羽のような軽さだ。
「これは武器、竜の星の武器」
「タスクって竜だったんだ」
「そう、退屈な時間はもういらない、それがタスクの選んだ先」
「そっか、いつか飯でも食おう、リアルでさ」
「楽しみにしている」
「ああ。俺もだ、これは使い捨てか?」
「ある程度の回数が可能、ただ竜の兵器の中でも性能は高い」
「確かにこれは鱗に使う物か」
「そう、スカオは武器に関しては鋭い」
「それは余計な事だが、なるほど、これは空を飛ぶ竜が鱗に付ける盾で有り、これにより放射エネルギーにより攻撃か」
「さすがは武器にはよく冴えるね」
「お前まで言うなよ、頭が悪い事は気になっての」
「まああれだよ。向けるべき分野が違う、僕は付与だし、タスクは機械だし、スカオは武器かな」
「そうこれは素晴らしい事、理由は武器の扱い方を知らない者が多かった、作る物よりこれはどうしても必要、でも極めて稀な才能、中々いない」
「素直に喜べない才能だな」
「なぜ?」
「まるで破壊の為に生きて居るようだし、もっと別の才能が良かったな」
「贅沢な意見、贅沢は敵」
「分かっているよ、なるべく利用するさ、可能ならば星は傷つけたくない」
「威力は抑えられる、ただ有効射程距離が竜基準」
「そうなるよな。しかしこれは便利だ。敷設すればきっと良い盾となる」
「地面に置く事?」
「飛行士の敷設は空中機雷だ、浮かんでの地雷だな、もしこれが張られた領域に兵器が入ってきたら容赦なく天に向けての雨だ、それなら何の問題もない」
「スカオは良い、ちゃんと考えている」
「問題はリアルに運べない事だ」
「その点も解決、試験が終われば学府に入る、全員がかき集められる、学府の契約書の項目に記載されていた内容の一つ」
「なら安心か、一つの問題が解決したな、幸いであるが、欠点もある」
「分散しての作戦が失敗、これは多くの計画が没になる事を意味する」
「ああ。一言で言うのなら大変な事になるぞ」
「その説明役を頼むよ」
楓からの台詞に、俺は硬直し、たっぷりと考えてから大きく溜息を吐いた。
3月4日の祭りの日の翌日、全員に説明した。
睨まれるなんてものではない、射殺さんばかりに見られた。
飛行場の仲間達は特に言わず、暖かい言葉を掛ける者達だった。
約束を交わした者達は幸いだったと言っていた、膨大な時間の旅を覚悟していただけに幸せそうな人達の中で、嫌われ役を担当してしまう事で落ち込んでいた。
PTと共闘中のPTの4名も、なんというべきと困っていた。
「ま、まあ幸いだったわね」
「え、ええこれも幸せの一つかもしれません」
「幸せってどこにあるのかな」
「今日はお酒を出しましょう」
「こう言う時ぐらいはな」