[004]3月の№4。デスゲーム試験
共同屋台村の所に、一人の女性がやってくる、金糸のショート、凛々しい顔立ちのゆるい口調の女性だ。
ホーリーというレア狩りというあだ名付きの受験生、特に問題という訳ではないが、レアに対する嗅覚とも言うべきものがあり、レアを好んで襲う命知らずの受験生だ。
その仲間の二人、二人とも美貌の男女であり、異星人の中でも特に魔法に関する適性が高い、エルフ種族の二人だ。
単に食事に来たというのなら何の問題もない。
「あー最初の人」
何故か覚えられていたらしく、寄ってきた、周りの受験生は道を作り、中には席を外す者も出る、余りにレアを狩りまくる為に、レアを見かければまずこのホーリーが傍にいると言っても過言ではないらしく、現れる先々でレアを狩る為に警戒されても居た。
「よう。腹ペコか?」
「そうっす~凄く腹ペコなんだよね~ホリさんは」
「適当に注文でもしたらどうだ」
「ういっす」
普通の注文し、手に入った料理を不思議そうに見ていた、何せ猪肉の握りだ。この女性の故郷にはない食文化の一つでもあるらしい。
食べる俺を見て、ホーリーも醤油をつけて食べる、しかし味わいの方が不味いという反応ではないが、不思議な味わいと言った所だろう。
近くの茶を飲み、このお茶の方にも注目していた。
「どうなってんの?」
「色々と有った、本当に色々とな」
他の二人も近くに腰を下ろし、ホーリーの握りを取り口に入れる、二人の反応は劇的なものだ。顔が硬直し明らかに初めて食べた握りだったらしく、理解できない状況の混乱していた。
「食糧事情の改善って奴だ」
「この凄く美味しい料理とか?」
「色々と研究が進んでな、スキル学に関する事もだいぶ判明しつつある、地球側にしろ、異星人側、主にWHO側にしろな」
「うんこれはいい、凄く好い、毎日食べられそう」
「そっちのエルフも気に入ったら適当に買って食べろよ」
二人のエルフも軽く頷いてから買いに行く。
ロウ達も呼ばれてから現れいつもの席に腰掛ける。
「所で何のパーティだ」
まるで珍獣と檻の中で、ダンスする様な気分だ。
周りは遠巻きに興味津々、化学反応を利用した実験の見学のようでもある、ある意味大科学実験並みに実験の様にも見える。
何せ地球人、WHO人、エルフという三種族が仲良く食事をしていた、それはいくらなんでも珍しいこと間違いなしだ。
「ホリさんはよく分からないよ~」
「そうかい、ロウ」
後ろの少年の顔には苦笑が浮かぶが言わぬが花だ。
「珍獣ベストアルバムが出たら買っておけ」
「要らないから燃やせ」
二人のエルフも狩った寿司を食べながら席に着く、余程に飢えていたらしく、猛烈に食べていた。
「まあそりゃ美味いだろうな」
「これって何~?」
まるで幼児の様に興味がある物に次々と質問、こちらも親切に答え、子供の扱いは混乱期の中で否応なく学んだ。
「地球って面白い場所、奇妙な物が多いし、変な物が多いし、そもそもなんでアーライルがここにいるの?」
「色々と有る」
「ホリさんを誤魔化すのはよくない~」
「子供かお前は」
「あれっしょ、共闘」
「ああ。こちらのPTと共闘中だ」
「黒髪の方は別行動?」
「ああ。二人とも料理スキルかある、農業関係の方で品種改良の仕上がった物の調理だ。何せシャリがイマイチだ」
「シャリ?」
「この握りの米だ。前の方が良かった」
「にぎり?こめ?」
「これは握り寿司という、略して握り、上にあるのがネタ、巻かれているのが海苔、下にあるのがシャリだ。ちなみに醤油をつけて食べ、主に山葵での香辛料も添えられるのが当たり前だ。お茶は緑茶と決まっている、ガリの方は生姜だ」
「博識だね~ホリさんとしては、なんでこんな物がこんな価格なのかかとても気になるよ~だってコインを1万枚ぐらい置いた物が、たった4コインだしね。驚くなって言う方が遥かに非常識だよ~」
「地球の物を同じ惑星の物で測るのは無意味だ。何せ星そのものが違う、基準とする文化そのものが激的に違う、時には異質ですらあり、時には我々には想像できない事もある、異星人というものはどういうのかはまだ判断できないが、こういった食に対するこだわりが、結果として至宝のような食事を創り出すのは記憶に値する」
「おー。あれだね。相当気に入っているね?」
「ああ。特にガリはお勧めだ」
光姫が突く生姜に、ホーリーもフォークで突き刺して食べる、歯応えのあるガリガリという音が聞こえる、これで分かったらしく面白くなってガリばかり食べ始めていた。
「面白い~本当にガリガリする」
「美味しいの?」
「凄く面白いよこれ、まずは一つお試しあれ」
エルフの女性の方が取って食べる、本当にガリガリとする音に驚き、甘い様な辛いような味わいに驚き、食文化その物が違う為になんといえばよいかが分からないらしい。
男性の方も取って食べ、同じ結果になるが、やはり二口目も食べる。
「どこで買える?」
「ガリは無料だ。常識だが、時には酒のつまみに購入するも居るが、まずは屋台村の土産物コーナーが売れ筋を置いている」
「感謝するぞ、ヒュム?それとも」
「地球人の日本人のスカオだ。本名はあれなので伏せるしかない、何せ互いの文化が違い過ぎる」
「確かに、違う文化過ぎるか、しかしこれは美味い」
「だろうな。ガリ専用に品種改良した生姜だ。硬くもなく、柔らかくもなく、調味料に着けやすくなり、短期間に吸い込んで安定し、より味わいがよくなり、消毒効果も高まった、傑作の一つだな」
「スキル?」
男性エルフの質問に頷く、一つの食材一つですらスキルにより短期間で劇的に変化し、今までにない高級食材へと変わり、しかもこれを短期間で大量性可能という恐ろしい間での生産能力がある、開発能力も異常の一つだ。
「やはりスキルか、これはきっと宝になる、正解だった」
「ギャンブラーか、エルフにもいるものだな」
「地球人の日本人のスカオ、お前たちの宝は何だ」
「一番に思え浮かぶのは水と料理だ」
「なるほど、水まで改良するのか、信じられない行いだ」
「何かいけない事なのか?」
「いや全くいい、素晴らしく好い、エルフでは考えられない考えだ。エルフももっと世界を知り、世界を変えていくべきだ。しかしこのガリはいいな、うん美味い」
エルフ男性にしてはヒットだったらしく、ひたすらガリを食べる、女性の方はちょっとおっかなびっくりでガリを食べていた、ホーリーの方は相変わらずガリばかり、余程のヒットだったらしく、夢中に食べている。
「一つ聞きたいことがある、俺達地球人にとってみれば当たり前の事であり、欠かせない事だ。特に日本人などの農業をする者達は古来より行ってきた」
「品種改良か?俺達も偶にはするが、エルフ的な考えでいうのなら自然のままにってさ、くそ不味い料理を食えってんだから洒落にならん」
「不運だな」
「全くだ。あんな母星があるのに何で」
エルフに対する変革を考えているらしい、短期間での品種改良が余程本人的にはヒットだったらしく、伝えることにした。
「農協って知っているか」
「なんだ?」
「農業協会、農業の組合だ。ここで様々な植物の栽培と、この育成と、品種改良と、この結果の食材の調理研究を行っている、その傑作が今食べているガリだ」
男性エルフも、女性エルフも、ホーリーもとても驚き、ひとまずガリを集めてから席を立つ、場所を教えると直ぐに駆けていった。
「彼奴ら面白いな」
「レア狩りホーリーとその仲間ね。変てこな話だけど、確かにこのガリは最高傑作よ、こんな物を短期間で作るって聞いたら、そりゃあ試験に受かりたくもなるわ」
「全くだ。寿司ネタの種類が速く増える事を期待したい」
「少なくても日本贔屓が増えた事は確かね」
「日本はいい、特に料理が素晴らしい、ただ独特の調味料やらなんやらが癖のあるような、ない様な、無くてはダメなのだが在り過ぎてもダメなようなものだな」
「要するに珍味って訳ね」
「そうそれだ。発想というものが基本的に違う、調理技術でこれを克服する事も知っている、珍しいまでの事だ。ただ菓子の方はあれだ」
「昔は豊かだったわ」
「事件と呼ばれる物か」
「ええ。おかげで世界から孤立し、全ての国との国交断絶、行政府はガタガタよ、それでもマシになった所は確かにマシになったわ。それでも辛い所はやはり辛いわ」
「苦しいものだな」
「明日の米一つを争う時代から随分と改善した物よ」
「なるほど、プレイヤーか」
「ええ彼らのおかげで最低限の生活は可能よ、何せ生きた工場、日本が必死になる理由もこれよ、全ての物資の入らない日本を維持するのに、このプレイヤーがどうしてもいる、他の国も日本に負けじとプレイヤーが欲しい。
その争奪戦は想像を絶するわ、時にはあまり言えないような事も有るわ。中には悪い事を考える人達も居たし、プレイヤーの中にも日本人を嫌う人は少なくないのよ」
「複雑だな。我らNPCにはないものだ」
「それが幸せなのかは私にはわからないわ。彼らだってなりたくてなったわけじゃない、好き好んでそうなったわけじゃないのに、利用価値が生まれた途端に手の平返しよ」
「当然プレイヤーからすれば納得が行くはずもないって訳か、複雑なものだ」
「異星に行きたいものもいるわ。地球なんてて思う人もいる、でも母星はどうしてもいるのも解ってはいるわ。他にあるのなら別にいいけど、無いもの」
それぞれの想いの中、試験は続く、少なくても試験を通し全てを調べつくす気なのだろう、こいつらは本当にプレイヤーにしても良いのかと。
生産の方に戻ろうと腰を上げる、後ろのロウから思わぬ知らせを受けた。
「レアが消えたってさ」
一瞬思考が止まり、空白だけがあった、次第に収束し、再構築し、一つの帰結に辿り着く、ボスである。
「現れたのか?」
「少なくても現れる確率が飛躍的に増えたと聞いている、何せデータが無い、観測班が全てを記録し、参謀や分析班がふるいにかけていたところさ、今頃戦闘系が非常招集されているところだ」
「最大戦力での破壊、か」
「ああ。最大の戦力で一度に被害もなく叩き潰す、膨大な数を投じ、ボスを倒す」
「やっと一日が進む」
「長い一日って奴さ、まっ最高に楽しい一日ではあった、死んだ奴を除いてな」
言葉がない、光姫の言葉を思い出し、この試験は容易く命を落とす、文字通り死んだ者が居ればそう言うのが嘘ではない事が分かる、何せどの技術でもわからない物だ。
地球レベルの技術ではない、膨大な数を同じ個所に笑って置くような技術だ、途方もないレベルでもあり、正真正銘のデスゲームの試験を突破しなくてはならない、それは全て異星に渡る為のチケットを得る為に、中にはスキルを得る事で何かをする者もいるだろうし、何かを変える為の力にしようとする者もいるだろうが、それは全て試験を突破しなければ単なる死でしかない、全ての終わりだ。
「なんだ知らなかったのか?」
「知っていた、ただ」
「ゲームだから無いと、お気楽すぎるぞ」
「ゲームは人を殺さない」
「バカバカしいな、マネーゲーム一つで世界を弄るような奴が居る、ゲーム感覚で殺人を行う者が居る、政治ゲームで国を亡ぼす者が居る、軍事ゲームで核を作る者が居る、ゲームがこの星を壊しているのは何も変わらない歴史ではないか」
「ゲームは人を殺さない、ゲームメーカーが殺す」
俺の言葉に、笑っていたロウは黙る、本人の言いたいことはまだわからないが、俺の言いたいことは伝わり、ロウも何度かめの溜息を吐いた。
ロウの仲間の二人も苦笑しており、世知辛い世の中を渡ってきた経験者だから分かるものだ。
「真面目だな」
「いけない事なのか」
「理解には苦しむ、しかし分からんでもない、両者の言い分もよくわかる、しかしどこかに付かなければならない時もある、俺は組織を動かすのなら組織に従うしかない、これが上に立つ限りの掟だ。だからこそ、戦闘系は戦闘系、生産系は生産系で動く」
言葉を自分なりに考え見た、どうもロウは戦闘・生産系の者達を自由にさせていたらしい、権力者というものかもしれないが、自由もよいと思う様な少年の為に、ある程度の秩序、ある程度の自由を考えた政治的な理想が反映されているらしい。
「戦闘・生産系は好きにしろ、一つ位自由でも俺は困らん、そう言う連中が信じられない事を数多くしてきたことも知っている、頑張れよ」
「おう。まあ合格して、適当な弁当でも食べようやロウ」
「ああ。いつか、冒険がしたいものだ」
「ちなみに俺はスターオーシャン派だ」
「あー俺はFF派なんだ」
「同じ会社だが、あれはどうもなんていうか」
「宇宙ばっかりで面白くない」
「いやそれは偏見だ。1から始めればその面白さに気付く、是非やるべきだ」
「だるい、あれは深刻にだるい、まあFFの方も最近はSF的になりつつあるが、世界観的な事でいえば、やはり武器の種類が増えたほうが良いと思う」
「SFもあれだよな、最近人気がなくなって」
「全くだ」
日本人のゲーマーのみに通じる会話に、一名がイライラととあるボタンの位置を押していた、オタクの会話の混ざりたいが世間体が有って参加できない奴だ。
「じゃ行くよ。二人とも行くぞ」
「ああ。ところでアキラは何をしている?」
「葛藤の中にいる、それはもう想像を絶する葛藤だ。欲望と理性の衝突だな」
「?」
「行くぞアキラ」
「・・・後で殴る」
□
不遇改善協会の前に来ると、空模様は悪く、土砂降りの大雨、ゲームなので特に気にせずに歩く人が多い、傘をさすのも稀であるし、雨合羽も少ないを通り越し居ない。
協会の前に立つ、POT売りの女性には見覚えがある、トレーニング施設の事を騙そうとした女性だ。とはいえ道を聞いたのはこちらの為にこの女性には非はない、間違ってはいないが、正しい訳でもない人をおちょくって笑う、そう言う困った女性だ。
女性の方は覚えていないらしく、こちらに気付く事もなく俺達が通り過ぎても特にアクションはない、中に入り、部屋の前には鑑定士のミツナが居た。
「よう、今から開発だ」
ミツナは軽く微笑んでから小さく笑い、思い出したかのように片目を大きく上げ、口唇を開く。
「戦闘系が非常招集されたそうだよ」
言わんとする事は既に知っていたし、ミツナが言う意味の真意が測れない分野だ。
「戦闘・生産系は何をするのかな?」
ミツナの言葉の意味を知り、軽く鼻で笑ってから答えた。
「好きなようにする、それ以上に意味は特にない」
簡潔な言葉に、ミツナ大きく上げた片目を更に大きくし、奇妙な片目でよく見てから片手を揚げて近くの椅子に座った。
中に入り、開発。
「おし。ひとまずは複合レシピの開発だ。まずはこれだ」
表示した一つの生地、魔力宿りのハンカチのような物でもあり、ヒーリング生地、これを加工し、一つの服を作る。
HP回復薬に浸した生地、これに付与のエンチャクトを掛けて完成させ、この生地を加工する。完成する者は簡単な手袋だ。アキラ曰く靴下の方が簡単だが、手袋の方がなれているそうだ。何せレイヤーの衣装製作経験者なのだから。
「性能は、居るかぁ?」
「部屋で待たせていたら?」
「そう思ってな」
ミツナを呼ぶと、腹を空かせていたらしく、部屋の食べ物に食いついて食べていた、野生の獣も驚愕のような食欲だ。
「こちらの裁縫師が専用の服を作るって」
「!?」
「よろしく~」
「そいつか報酬で、その報酬に使う生地がこれだ」
ミツナが見て生地、スモークホワイトの色彩の生地だ。悪くはないが好みではなさそうだ。
「後で染織系というの物に色でもつけてもらえ」
「なるほど~話が分かる」
「という訳で鑑定だ。何せ開発の一つだからな」
「あー。まあ生地作りか、考えたね」
「誰でも使う物ならいくらでも売れるだろ」
「了解~」
鑑定し、結果としては特に変わらない、HP回復効果を持つ生地だ。
性能も特に強力とは言えない、言うなれば地味だ。
これを作り、生産した物を、ミツナ好みのデザインに作り、後は染織の方の人に掛け合うのみ、協会の方に紹介してもらい、これであった人は直ぐに気づいたらしく、快く応じてくれた。互いに試験に合格するために協力し合うのが受験生の意思のようなものだ。
染織を終え、カラフルになった制服に喜ぶミツナ、後は宣伝効果も合わせたが活動、兎に角人に逢ってこの事を伝える事、ミツナは快く応じ、鉄砲玉のように飛び出していった。
ヒーリング生地を大量生産し、熟練度を上げた後に、完成度を上げ、ひたすら生産する。
これを知り合った染織師に見せる。
「合格すればそれでよい、俺の考えだ」
染織師の男性は、少し考えてから優しく微笑んで頷いた。
「素材費用は請求するから邪魔したな」
部屋から出る、その後に更に開発を行う。
「まずは二つの商品だ。一つは生地、一つはHP・MPポーションだ」
「生地は良い点と思うけど、ポーション?」
「うむ。確かにやや魅力に欠ける」
「現時点ではって事か」
「ふむ。発展性の余地があるつまりそういう事だな」
「ああ。もしHP・MPが高速で再生する生地が生まれたらどうする」
二人の顔が変わり、納得していた。
「誰もが求める物が生まれる、幸い俺達のLvは同じだ。可能であるのなら最後の最後の戦いに於いてまでに、HP・MP全開の生地が必要になる、あれが必ず売れるし、必ず求める、俺はこれを確立し、これを提供したい」
「協力するわ。何より面白いじゃない」
「俺も同じだ。とても面白い試みだ」
「よし作るぞ。まずは品質を上げる方法だ」
「完成度を上げ、レシピに対する評価を上げるのが最も簡単だ」
「つまり方向性は当たっている訳ね」
「実にな、なによりMPの方はいくらでも追加できる」
「なら問題ない、なるべく多くの経験を持って合格するぞ」
「データも持てないけど経験は持っていけるからって訳ね」
始める生地作り、同時にHP回復用のポーションを作り、これを繰り返し、エンチャクトの性能向上の中でも、マテリアルの性能向上もある為に実験を行う。
マテリアルを使った生産を行う。
水道水の入ったホトルに使う、完成したマテリアルボトル。
▽[詳細]
名称 ポーション 種類 薬品
等級 通常級 耐久度 1/1
品質 ☆×1 完成度 1
効果
物質の核:マテリアルの基本的な構成物質です
▽
これを更に加工しするためにエンチャクトを行う。
▽[詳細]
名称 ポーション 種類 薬品
等級 通常級 耐久度 1/1
品質 ☆×1 完成度 1
効果
MP回復+20:MP微弱回復
▽
効果の倍化、物質の核を使う事でのMP回復効果の向上が図れた。
これらを行い、マテリアル→エンチャクトを行って完成させていく。
「光姫ちょっといいか」
「ん?」
「これを見てくれ」
ボトルを見せると、性能の向上に驚いたらしいた。
「付与というものは魔力その物を操る系統、まさか性能向上まで操るのか」
「マテリアルの物質の核というボトルにエンチャクトを使うと性能が倍化する」
「他の生産スキルとはなんというべきか、風変りだな、まるでなんというか素材を作っているように見える」
「多分そういうものだ」
「なるほど、少し実験しよう、アキラ」
説明されてアキラも納得し、物質の核を混ぜたものを使う、性能は二倍となり、性能が余りに上昇したために効果限界に達し、品質により制限によりこれ以上の成長が止められる。
「効果限界か、品質による制限」
「ランクアップしかないの?」
「生産を繰り返し、完成度を上げる事での品質向上かな」
HP回復効果を持つ生地を作り、互いに最新のレシピを作り、完成した物は評価は一つ上がりF→Eに上がり、後はSまで上げるしかない。
ひたすら生産、素材がなくなったら知り合いの染織師に持っていき、素材代金分を貰い、素材を購入してから戻りまた同じ生産、これでDにまで上がり、染織師→素材購入→生産を繰り返し、C→B→A→Sとなり、やっとの事で品質が向上する。
この為に品質向上には部屋は歓喜に満たされた。
再び実験、品質のランクアップにより、効果性能は劇的に向上し、全くの別物ともいえる、染織師の方にも持っていくと酷く驚かれていた。
「他の者にも分けてもよいかな?」
「?なにを言っている、これはホエロが買った物だ」
「君の中ではそうなんだろうね。こんな物を素材のみで購入すると聞いた、同じスキルを持つ者が逆上し、僕をPKして全く不思議じゃないよ」
「なら共犯者を大量に作ればいい」
「君、結構黒いね」
「じゃ俺は行くぜ」
「ああ」
代金を貰った後に素材を購入し、再び同じループを行う、何せ性能が高過ぎて効果限界にまたぶつかったからだ。あとはひたすらループ。
□
ある程度完成した生地。
▽[詳細]
名称 ヒーリング生地 種類 生地
等級 通常級 耐久度 40/40
品質 ☆×4 完成度 1
効果
HP回復+91:MP微弱回復
▽
「お疲れ、まずは飯だ」
「楽しいけど大変過ぎる」
「いうのもなんだが、これはいくら位の値段だ」
「値段?素材価格だ」
「これだけ働いてそれは辛い」
「なんに使う?」
「武器だ」
「ああなるほど、それもそうか、なら相談してこよう」
という訳で染織師の方に行く、中に入った時には関係者と話し合いの最中であり、思いっきり目が合う、静かに閉め、生地の方は協会に売却し、食事に行く。
「あー。怒られている」
アキラが呆れ混じりに呟く、共同屋台村のいつもの席に、説教される美姫、説教する夕霧という構図の中、ホーリーたちも近くで食事中、相変わらずガリをよく食べていた。
ロウ達は見かけないが、寿司を注文し、席に座る。
「全く、凄くつまみ食いをして全部食べてしまう、隙を見付けては」
「僕だって我慢した」
「全然我慢していない、どれぐらいの請求が叩きつけられたと」
「美味しい料理が罪なんです」
「食べる方がなお悪いのです!」
「阿保はそれ位で、今日の山分けをするぞ」
山分け、きっちりと等分だ。
ただ金額が大き過ぎたために二人は硬直していた。
「新し武器が買える、うむ素晴らしい」
光姫は非常に喜ぶ、下手したら損害が少なかったかもしれない。
「新しい魔杖剣に、新しいトレーニングに、新しい」
こちらもホクホク顔で数えていた。
「どこから?」
「使えない廃品を全部売った」
「・・・後で詳しく聞きます」
「ああ話すよ」
豚のロース肉の握りを食べながら話す、リアルでは間違いなく食べられない最高級品質の特上の部位のみの物だ。
話し終わってから、二人は何故か感動していた。
夕霧がスカオがこんなに多くなってというネタを使い、習ったのか美姫も同じネタを使っていた、二人とも仲は良いようだ。
夕飯の後の、これからの方針会議、ゲストメンバーはホーリーと愉快なエルフたち。
「第一回、現在の共闘中PTとの方針会議の時間です。司会は私スカオ、ゲストの方はホーリーさん、エルフ2名です」
「よろしく~」
「ゲストの扱いが酷いなこれは」
「よろしく」
「第一回の議題、まずは今後の予定、主に狩りを行うか生産を行うかの二択です。清き一票をお願いします」
「狩りに1票」
「断然狩りよ」
「狩りでお願いします」
「狩り以外はいりません」
「敢えて生産に入れても無駄だけど一票。という訳で狩りに決定。次の議題です、装備の方はどうするか、各自に武器キルがありますのでこの強化となりますが、その前に風呂に入りたい、是非とも入りたい、今後の事もあり生産も軽くしてから風呂に入ります」
「賛成に一票」
「賛成」
「賛成、断然に賛成です」
「賛成です」
「今回は満場一致、という訳で、ゲストの皆さんは風呂付ホテルの個室をどう思われます」
「・・お風呂好きじゃない」
「風呂はまあ必要だ。だが値段がな」
「うん。凄く高い、ついつい張り倒そうかと考えるぐらい高い」
「それぞれのコメントとから、一言いうのならもし銭湯があればどうします」
「せんとう?」
「小銭を支払ってはいるお風呂です、性別の別々が基本です」
「それなら」
「俺なら間違いなく毎日入る」
「そこを紹介して欲しい、とても悩みなのよ」
「では風呂付のホテルは高い、しかも風呂には入りたい、これによりある程度は可能です、何故なら土地は大量に有り、我々にはスキルがある」
「「おぉ~」」
「スキルでどうにかしようと思います。もし可能ならば最低限着替えが必要です、もしあれであるのなら水着も必要です、可能であるのなら水中ゴーグルもセットがお勧めです、というより必要です。何せ誰だって風呂に入りたい、でも大金は払えない、そんな中に銭湯が一つでもあれば、当然のように長蛇の列です」
「そのせんとうって何」
「という訳でロウ」
居るかも知れないと思い後ろを見ると居た、しかも既に手配していた、恐らく儲かると直感したらしい、それも途方もない安定収入がガッポリと懐に飛び込んできたらすぐに行う奴、それがロウ達だ。
土木作業が行われ、石工たちが敷き詰め、家事が清掃し、お湯が張られ、あっという間に作られた銭湯に、屋根から何までも建設されていた。
しかもきっちり料金も取り、性別に別れてはいるが、内部には別々の売店まである。
ひとまず風呂に入った。
□
翌日、定宿のホテルから出て共同屋台村のいつもの席に着く、ホーリー達も、ロウ達も平常運転での朝食中だ。
ふと空を見る、太陽があり、白雲があり、代わり事のない物が有るが、ゲーム世界なのだとも思う、なんであれ日常となれば特に感慨もわかないが、日々が生活し易くなることから良い感じではある。
「コンビニに行くわよ」
金髪のアキラが言うと、他の3名と俺も席を立って向かう。
何せ久しぶりの狩である。
コンビニの奥で商品を選ぶ、完全前衛の光姫は、魔杖剣をアキラと選ぶ中、サポート機能が要らない光姫に対し、サポート機能がいるアキラ、二人の前衛としての基準から、リーチを取るか、攻撃力を取るか、MP効率を選ぶか等々、さすがに選ぶ種類が豊富の様だ。
ヒーラー担当の薙刀使いの夕霧、唯一の長柄武器を扱うが、本人も前衛としての悩みはあるようで、一度死にかけた事もあって耐久度は優先しているらしく、次には防御性能でもあり、三番目に攻撃性能らしい、元々長い薙刀のリーチに関しては特に優先する事は無い様子で選んでいた。
後衛担当の俺と美姫、アーライルの美姫、黒髪の清楚の女性ではあるし、よく食べる事を優先しがちなタイプでもあるが、弓使いとしての腕前は抜群、特に二本の矢を撃つ二発撃ちという技能が高い、この為に選ぶ弓もユニークな物が多く、サイズとしては大型を選ぶ傾向にあって、弦の固さや材質の触り心地、色々な弓から選ぶ様子だ。
俺としては、今までの小型のハンドガンサイズの物から卒業しようとしていた。
サイズとしては中型を基準に選び、主にE系等ではあるが、ライフル、マシンガン、ショットガンを基準に選ぶ、他にも大型のミサイル、バズーカ、ロケットランチャー、グレネードランチャー等もあるが、こちらは大型過ぎる。
(やはりライフルか)
ライフル系統を選び、今度はこの系統からアサルトライフル、バトルライフル、マークスマンライフル、スナイパーライフル、パラスライフルから選ぶ。
それぞれ特徴があり、アサルトライフルは小口径を撃つ、バトルライフルは中口径、マークスマンライフルはバトルライフルよりも狙撃に近い、スナイパーライフルは言うまでもなく狙撃、パラスライフルは通常のエネルギー弾よりもダメージ判定の大きい輪っかを撃つ。
バトルライフルを選び、この中から様々な性能の物が有るが、主に狩猟専用弾を扱える機能を有する物から選び、オプションの方も優先するのは欠かさない。
狙撃用のスコープの付いたアンダーバレル可能なバトルライフル、選別する事で選んだ物、サイズ的には中型に位置し、やや大型に近いレベルのサイズではあり、中口径のエネルギー弾、オプション、狩猟用弾も可能という、高い汎用性があるバトルライフルだ。
幾つかのデザイン違いの物もあるが、選んだのはその中でも嵩張らない物、上手くまとまった物を選んだ。
ひとまず購入し、今度はスコープを選び、射程距離から100mの範囲内でも十分でもあるが、他の熱源探知、振動探知、HPゲージ探知、MPゲージ探知等々もある、この中手も熱源探知を選び、トラップ探知、宝探知の物も選んだ。
三番目にオプション、主に銃剣、散弾銃に代表される銃、グレネードランチャーに代表される筒の三種類から、迷った末に馴染む散弾を選び、この散弾の中でも実弾可能なものを更に選び、装弾数よりも単発辺りの可能とする散弾数、飛び散る球数を優先して選び、有効射程距離も優先して選んだ。
購入し、装備してから拡張性あり、強化も可能でもあった、こちらは予備性能のような扱いでねある、何せ買い替えればよいだけだ。ただなるべく長く使うためにある程度の拡張性能、ある程度の強化性能も選ぶ基準だ。
▽スカオ
メインウェポン:GH04BR-KRSW
オプション:GH23S-WYVERN2+GH09DP-HUNTER
サブウェポン:ロングソード
ディフェンウェポン:高等部の試験生の制服。
▽アキラ
メインウェポン:サポ型魔杖剣-LIGHTNING
ディフェンウェポン:高等部の試験生の制服。
▽夕霧
メインウェポン:サポ型薙刀-癒しなる陽光
ディフェンウェポン:高等部の試験生の制服。
▽光姫
メインウェポン:大型魔杖剣-紅蓮の燈火
ディフェンウェポン:高等部の試験生の制服。
▽美姫
メインウェポン:大型魔杖弓-輝く光翼
ディフェンウェポン:高等部の試験生の制服。
▽
新商品となり攻撃面のみ強化された感じだ。
漆黒の翼を持つ姉の光姫は大型魔杖剣、純白の翼を持つ美姫は大型魔杖弓、姉妹揃って大型という、汎用性より攻撃力が好きな二人である。
他の二人は揃ってサポ型、中型に位置する分類の物のみを選び、こちらは汎用性を基準に選んだらしい、地球人は汎用性を基準とすることが多く、アーライルは攻撃力を優先する傾向にある事を覚えた。
「よしアキラ手合わせだ」
光姫が嬉しそうな魔杖剣を振りながら提案、アキラも新商品の性能も試したいらしく快く応じた。
「望むところよ」
二人が模擬戦を行い始める中、大型魔導弓を握る黒髪の美姫は、二発同時撃ちにも扱えるために訓練中、相変らず見事な腕前で有り、同じ後衛としても明らかに美姫の方が腕前は高い、しかも射程距離が100m近い、それも的の真ん中に当てていた。
薙刀使いの夕霧は、舞を演じ、流れる様な流水のような演舞を見せる、止まらずに全てを繋げる綺麗で美しい演舞で有り、見惚れる様な剣の舞が実に優美だ。
俺も練習し始め、BRを使った狙撃の練習、エネルギー弾の為に重力の影響はないという設定なのか、命中精度は非常に高く、弾速も高い、直進性の高いエネルギー弾の中でも中口径のエネルギー弾は大きく、当たり判定が大きい、装弾数自体のそれ程高くはないが、総合火力に関してもやや不満がない訳でもない、だが単発当たりの攻撃力は遥かに高く、攻撃力の高さがあるし、扱い易さも基準の一つの為に良く手に馴染む。
選択したモードの単発より、ニ連射に移し、これでの射撃もほとんど同じ個所に当たり下手したら貫通するかもしれない様なものだ。
次に三連射、こちらも確実に貫通する様なものでもあるし、一番高くまとまった感じの物でもある、この機能の為に高い値段もあった。
フルオート機能はなく、バトルライフルという事もあるが、マークスマンライフルにも近く、狙撃的な機能も優先しがちであった為に、全弾撃ち尽くし機能はない。
単発モードの設定し直し、今度はオプションの取り付け型散弾銃を掴む。
装弾数こそは少ないが、単発当たりの大きさが1インチにもなり、大型の散弾を9発も撃つ、この為に接近戦ではどんなオプションより凶悪な性能だ。
装弾数は僅かに2発、1インチの大型散弾を9発も内包するためにエネルギーマガジンもやや大型であるが、アーツ専用の為に特に問題はない。
試しに一発、有効射程距離は凡そ30m、広範囲に渡り1インチのスラッグ弾のような散弾を9発も放つために、扇状に飛び散り、拡散弾に依っての辺り判定も大きく、ダメージもBRとは比べようがない強力なものだ。
アーツを選択し、これを使う。
【アーツ:タイプ射撃武器:二発撃ち】
残された装弾エネルギーを消費し、9発×2に倍増した散弾は18発となり、10倍化された一発辺りの攻撃力が、性能表示の20倍の性能を示し、凶悪な散弾の性能に、更に凶悪さが加わり、180倍もの総合ダメージになって、正しく必殺技と言い切れるようなものだ。
同じ射撃担当の美姫も軽く驚いている様子で、こちらを見る視線を感じる。
やはりというべきか、欠点もあり、硬直時間が長くなり、冷却時間も大幅に延長されていた。
これらが終わりエネルギーマガジンを捨て、実体化しているマガジンを装填し、給弾を終えてからライフルを下ろした。
「凄い性能ですね」
美姫の鈴の様な声に、俺は頷き、美姫の方を見る、相変わらず清楚な美人さんだ。
「色々と欠点も多い、装弾数が2発とか、硬直時間が大幅延長とか、有効射程距離が短いとか、広範囲の為の当たり判定が低いとか、エネルギーマガジンが大き過ぎるとか、グリップの握りは良いが、撃つ時の微かな衝撃での精度ミスが高いとか」
べらべらと喋る事に美姫はまた軽く驚いていたらしい、なんというべきか事件の後の混乱期に1年ほど自警団に所属し、主に銃や剣や刀などの武器の訓練から何までを学んで居た事もあって、こういう武器の扱いは得意でもあるが、良く女性からは鉄砲小僧と呼ばれた、男性からは心強いとか、使えるとかよく言われ、よくある便利な武器扱いだ。
意外そうな顔の美姫に、俺は苦笑し、次のテストを行う。
狩猟用の実弾を装填した事で、引かれたトリガーにより9発の散弾が飛び出、排莢機構からの空となった薬莢が真下に捨てられ、当たり判定、ダメージ効率、有効射程の過密性、その他諸々の性能があまり良くない、何せ空間は広いに対し、有効射程が短くても、9発の散弾の単発当たりの大きさは、精々ベアリング程度の物だ。当たる物は良いとしても殺傷力は有ったとしても、本当に使おうと考えるなら有効射程の半分程度だ。実質有効射程距離は15mというのが辛い。
実弾系の哀しい所でもある。
「高かったのにスクラップかよ、役に立たないなこれは」
悪態にあれであるが、美姫の方はよく分からないらしい、弓と銃では武器その物が違う為に、同じ武器でも弓は射る物、銃は撃つ物だ。
「ライフルの方はまあ使えるが、スコープの方は良い買い物だし、アンダーバレルショットガンの方は、E系は良くても、実弾系は哀しい性能だ。狩猟用には使えないな」
汎用性能を追い求め過ぎたための失敗だ。
「随分と高性能なのですね。幾つもの弾を使えるのは」
美姫の感想に、俺はテストを止めて、共闘PTのメンバーを見る。
「銃本体の方がライフル、銃身の下につくのが散弾銃、この散弾銃はE系、エネルギー系統の弾倉、実弾系等の弾倉を扱える、二つを両立するために性能は高いが、実質的な性能に関しては不満が大きい、言うなればカタログに失敗した性能だ」
「よく分かりませんが、凄く高機能ですね、割と良いかもしれません」
「よくない、全然よくない、これは全体的にみれば60%の満足度だ、俺的な基準でいえば最低満足度は75%なんだ。これは失敗だ」
「でも高かったのでは?」
「ああ高かったが、酷い粗悪品をつかまさせた銃使いの愚痴だ」
「それで粗悪品なのですか?」
「ああ酷い性能だ。値段とのバランスが異常に悪い」
「・・・交換しません?」
「装備が出来ないだろうが」
「そ、そうでした」
「ああ使うしかないとはいえ酷い性能だ。これならマークスマンの方が遥かに良さげ」
「・・・銃とはどれぐらいの種類があるのですか?」
「俺が使うライフル型の物がスナイパー、マークスマン、バトル、アサルト、これに対し実弾系、エネルギー系、この両立系、特殊弾薬系、これらに対し各種弾薬の豊富さから、簡単にライフルとは言うが、16種類が大まかにある、これも中型のみの話だ、大型や小型も合わせれば飛躍的に増える」
「・・・弓の方は控えめですね」
「ああ。弓の方が何かといい、銃は性能の良し悪しが酷過ぎる」
懐かしい弓道部時代の事もあり、弓の方が何かと好い、銃は実質的な性能が色々と過ぎて選ぶの時間がかかるの対し、高額な資金を必要とし、弾薬も高い、総合的にみれば銃の方が性能は高いが、運用面に関しては弓の方が遥かにいい。
美姫の方は少し黙り、思考した後に質問してきた。
「昔の、例えるのなら試験を受ける前には何を」
昔の質問らしい事ではあるが、色々と有り過ぎて何から話せばよいのかが分からない。
返答に困る俺に、美姫は引かない様子でいたために、仕方なしに答えた。
「事件の後の混乱期に自警団に居た、主に武器を扱う訓練と、その整備訓練と、それを扱う訓練と、それを運用する訓練と、実践と」
「自衛のために集団ですか?」
「ああ」
「何故いたのかも窺ってもよいですか?」
「まあ若気の至りというべきか、護るために居た、周りを守るために必死だったよ」
「・・・日本という地域は変わっているとは聞きましたが、美味しい物が有る反面、争いが多いのですと、それが不思議なのです」
「昔は平和な所だった、そこにとある組織の本拠地が置かれてから酷い所になり、去年の事件でこれが一掃され、その時の混乱で米一つの袋を争うまでの物資不足、食料品の値段は100倍近い価格、とても生活できない為に各地で反乱も相次ぎ、絶賛大混乱の真っただ中だった。
この中プレイヤー達のリーダーから提供された様々な物資による立ち直り、かつての平和な時代からの反省で、武器のある程度の自衛を許可された、結果として平和、事件も激減、代わりに迂闊な他人との接触が危険になった、何せ相手は武装しているからな」
「・・・良い面、悪い面もある物ですね」
「ああ。何がよくて、何が悪いのかはわからないが、変化はしているし、良くなると信じたい、悪くなるを信じるよりマシだからな」
「なんというべきかが分かりません、ですがスカオたちの暮らすとこにはいつか行ってみたいです、きっと美味しい物と幸せな事が両立しているところです」
「そう言う所なのかな、色々と有るよ本当に、何せ兵器がごろごろしている、見たらドン引きこと間違いなしの場所だ」
「よく分からないですが、故郷なのでは」
「よく反乱を起こし所なんだよ、いつも軍隊とは喧嘩相手、警察とも仲が悪い、卒中反乱を起こすために、よく国とも揉める、犯罪組織も危険すぎる所なので絶対に近付かない、タクシーに乗れば最初に見えるのは武装している用心棒、仲の良い人たちは武器商人、最悪な所だ」
「スカオは嫌いですか?」
「それは、故郷でもあるし、懐かしい想い出も多いし、守ってきた場所だし」
「なら好きですか?」
「嫌いじゃないが、積極的に好きとも言い切れないところだ。何せ住民一人残らず武装している、一人残らず交戦経験あり、一人残らず兵器の扱い方を知っている、碌でもないところだ」
「普通の場所の方がよいのですか」
「ああ。まあ日本にはそんな場所はないが」
「ならよかったです」
「なんでさ」
「きっと良い人達です」
「そうかぁ?」
かなり懐疑的な感想だ。しかし美姫の満面の笑みでいう。
「きっと良い話がたくさん聞けますし、きっと美味しいお酒が飲めます、きっと良い想い出になりますし、きっと素晴らしい事に出会えます」
とてもそんな所には思えない、何せ物騒過ぎて夜道歩く事すら怖い、普通に武装しないで出歩く事すら不可能だ。毎日のニュースはチェックが重要、下手したら反乱、毎月の行事には反乱計画というものがびっしりと有る、碌でも無さ100%の保証付きのような場所だ。それでも犯罪は恐ろしく少ない、精々軽犯罪が多少ある程度だ。何せ下手な犯罪者は直ぐに賞金を掛けられて狩られるからだ。
相当上手くやらなければ犯罪者が生きていけない場所、それが我が故郷だ。
試験に受かったらおさらばの為に困らないが、出来るなら帰りたくない。
しかし美姫は嬉しそうに色々と話していた、知らないというものがどれ程の恐怖なのかは想像を絶する。
ふと思えばまた雨がポツリと地面を濡らし、そのままポトリ、ポトリと降り始め、駆け足での豪雨となっていく、外での模擬戦も白熱中だ。アキラの方も夕霧も同じ団に居たために武器の扱いは得意だ。
最近会っていない兄の事もあり、試験が終わってからの再開には好きなコーヒーでも作って出す事に決めた、何かとお世話になる事が多い頼れる兄である、今でも試験の中で何をしているのかは手に取るようにわかる、機械を見れば弄らないと気が済まない為にきっとトラブルを起こし、この問題を科学の力で粉砕中だろう。
もし異星に渡ったら平和な所もよい、可能であるのなら武装しないでもゆっくりと食事が出来る場所ならなお好い、そんな久しぶりに昔を思い出してた。