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異星探索はチャイムのあとで  作者: 123456789
第1章。入試
2/12

[002]3月の№2。デスゲーム試験

 トレーニング施設への道に迷い、と言うより俺も二人も知らなかった。ふと周りを見渡せば大きな施設の前に黒髪の女性がいた、困ったので、近くの黒髪の女性に道を尋ねる。


「あの」

「なんだ?」

「トレーニング施設というものを知りませんか」

「トレーニング施設?あのスペルとかを訓練する場所か?」

「はい」

「それなら回ったところだな」

「回った?」

「ああ」

「それってここじゃないのですか?」

「そうともいう」

「・・・ありがとうございました」


 刀を下げた黒髪の女性は笑いながら離れていった。道を尋ねるのならもっとましな人物に聞いた方がいい、危うく騙されかけた。

 二人も会話の事は聞いていたので、トレーニング施設らしき施設に入る。

 内部にはそれなりの人がいた、受付に用件を言うと俺達に説明し、アーツ、スペル、サポート、レシピスペルの四種類、アーツの方は武器の必殺技、スペルは魔法に属するもの、サポートは主に魔法を強化するもの、レシピスペルは生産系スキルの攻撃用の魔法。

 ロウの説明したとおりであり、特に問題はなく、それぞれがトレーニングを受ける。

 射撃武器のアーツの訓練、基本的なものらしく、二回撃ちの訓練だ。

 武器がレーザーマシンガンの為に、撃ちっ放し専用なので、どう考えても要らない。

 教官にそれを伝えると、教官は笑って説明した。

 回数としては確かに二回かもしれないが、弾薬的には一発で、攻撃力にも補正が付き、レーザーマシンガンの10発に相当する攻撃力に単発当たりがなり、それも二回の為に20倍に値する。

 断然やる気になり、ひたすら訓練を行うが、武器が全く向いていない為に、教官も悩んだ末に武器の変更を勧めた。

 まさかの武器チェンジの勧めで有った。


 失意の中にトレーニングルームを出る、施設の待合室には二人も居て、声を掛けた。


「どうよ?」

「結構簡単だったわ」

「ええ簡単でした」

「アーツの方はダブルタップだった」


 俺の言葉の意味を二人は困った顔で納得していた、右手に持つE系マシンガンはどうみても撃ちっ放し専用の為に、どう考えても向かない、まさかの初期アーツに不適当な装備とは酷い落とし穴であった。


「だから武器チェンジを勧められた」

「なら買い替えに行きましょう」

「その方がよいでしょう」

「・・・そうだな」


 トレーニング施設から出て、いつものコンビニに行く、三人に挨拶してから店内に入り、コンビニの店員に説明し、店員も納得していたし、どの様な武器が良いのかという事になり、熟練度の事もありE系マシンガンの方が補正値は高いが、かといってもアーツの使いにくい武器は瞬発火力に欠ける、そこで店員も考えた末に一つの武器を見せた。

 YWH07-DRAGONの系統に入るライフルタイプだ。

 性能的にはそれほど変わらない、連射機能が激減する代わりに、一回ずつの射撃の照準が合い易くなったタイプだ。外見も特に変わらず、強いて言うのならオプションが追加できるようになったと言えば、確かにお勧めの武器だ。

 迷う事もなく購入し、適当な場所で練習し、一言で言えば連射性能が激減したために全くの別物となってしまい、扱う為の訓練に苦労した。

 この後のアーツ取得の訓練にも成功し、武器一つでアーツに取得が激変する事を知った。


 ▽

 プレイヤーネーム:スカオ 

 [スキル]

 射撃武器Lv2 召喚Lv1 融合Lv1 

 個人スキル:付与

 [装備]

 メインウェポン:YWHO07-DRAGON(ライフル型)

 サブウェポン:ロングソード

 メインディフェンス:高等部への試験生の制服。

 [アーツ]

 二回撃ち:一度に二回撃つアーツ。

 ▽

 プレイヤーネーム:夕霧 

 [スキル]

 薙刀Lv2 回復魔法Lv1 舞踏Lv1

 メインウェポン:薙刀

 メインディフェンス:高等部への試験生の制服。

 [スペル]

 ヒール:回復魔法の初歩的なスペル。

 ▽

 プレイヤーネーム:アキラ 

 [スキル]

 魔杖剣Lv2 攻撃魔法Lv1 歌Lv1

 個人スキル:裁縫

 [装備]

 メインウェポン:魔杖剣

 メインディフェンス:高等部への試験生の制服。

 [スペル]

 ライトニングボルト:攻撃魔法の初歩的な雷撃スペル

 ▽

「まずはアーツ、スペルの取得は可能だった訳で、マシンガン」

「落ち込まない、そりゃあマシンガンの方が性能は好いわよ、私だってどう考えてもマシンガンを選ぶわ。でもアーツとの相性は最悪だもの、そりゃ考えるわよ」

「辛いぜ」

「まずは基本よ。ライフルで学びなさい」

「おう」

「オプションはどうするの」

「お勧めは?」

「そうね。夕霧はどう思う?」

「そうですね。マスタキーも好いですが、花火も好いです」


 マスターキーは散弾銃の事、花火とはグレネードランチャーの事だ。


「銃剣も悪くないわね」


 銃に取り付けるナイフのようなものだ。


「マークスマンも好いですね」


 選抜射手、狙撃手ほどではないが、通常の兵士より射撃が得意な射手、これらに対応したライフルもある為に、現在的には割と良い選択だ。


「狙撃は無理ね。こいつにそんな冷酷な考えはどう考えても合わないわ」


 狙撃手の技能から運用から、一度戦えば戦慄するような狡猾を求められる。


「うーん。いっその事対物ライフルのような」


 対物ライフル、固定目標への射撃、軽装甲車両への狙撃を行うライフルだ。かつての対戦車ライフルのが現代風になった物と言う奴だ。


「笑いの為にも汚物は消毒だってのも有りね」


 とあるゲームの台詞ではあるが、火炎放射器を言う言葉で、意外な事にバカに出来ない性能があるのだが、欠点も多い。


「いっその事、花火特化もあります」


 花火、グレネードランチャーに特化するという意味である。


「どうしたものかしらね」

「ひとまずはオプションの、そうですね花火の方が良いかもしれません」

「でも単純な銃剣も悪くないわよ」

「確かに、何よりも安いですし」

「それにコツは基本的に剣が得意だし」

「元剣道部ですしね」

「銃剣は別物って意見もあるけど、安物ロングソードよりはマシね」

「心強さが違いますから」

「決まったようだな。じゃあ銃剣だな」

「ええと言うより装備出来るの?」

「ああ可能だ。マスターキーも花火も可能だ」

「偉く汎用的ね」

「それには秘密がある」

「あんたのスキル構成ね?」

「ああ。まずは射撃武器、射撃を可能とする武器装備可能、アーツ可能な最低限のものだ、次に召喚、これにより従者が呼べる、この従者との融合により、この従者のスキルを扱えるようになる、従者のスキルは武器なら何でも装備可能な武器、NPCとの会話可能な言語系、飛行可能な飛行という結果だ」

「わぁーお。賢いわね」

「時雄ですか?」

「まさか自分で考えたよ。こんな事で兄さんを頼れないし」

「相変らず自立心旺盛ね」

「という訳で武器なら何でも可能なんだ。特に射撃は得意とするって訳だ」

「なるほどね」

「という訳でコンビニに行くぞ」


 何度目かのコンビニに向かい、三名に挨拶しロウに軽く説明した。

 三名のリーダー役のロウは、意外そうな顔で俺を見ていた。


 コンビニに入り、店員に説明した。

 お勧めはやはり射撃系、アーツが使えるのが魅力だそうだ。悩む、仲間の二人も悩む、何せオプション一つで戦術が激的に変更されるからだ。

 近接の為のアーツの使えない銃剣か、アーツが使えるが近接向きではない射撃専用かの二択になり、悩む中、対集団用に射撃用の散弾銃マスターキーを取り付けた。

 ▽

 プレイヤーネーム:スカオ 

 [装備]

 メインウェポン:YWHO07-DRAGON(ライフル型)

 オプション:WR15S-WYVERN(オプション型)

 サブウェポン:ロングソード

 メインディフェンス:高等部への試験生の制服。

 ▽

 アーツの訓練の為に、固定目標の防御草を狩る。

【アーツ:タイプ射撃:二回撃ち】

 レーザーライフルより発射された二発が、防御草の防御機能を担当する葉っぱにHITするが、やはり最低限のダメージしか入らない。


 アーツのディレイも瞬間的に終わり程度の物ではあるが、クールタイムは長く、この間には暇を持て余していたが、終わると、散弾銃マスターキーのワイバーンの方を使う、同じ様なアーツではあるが、散弾銃の一発辺りから発射される6発の散弾、この単発辺りが10倍されて60に相当する攻撃力となり、二回の発射の為に2倍されての120倍となり、1撃で防御機能の葉っぱを吹き飛ばした。

 二人も驚き、使った俺も驚く、防御草も驚くかのようなびくりとしていた。


「20倍されて、破壊力が」

「どういう事?」

「二回撃ちのなので、二回同時に撃つので弾数が2倍される」

「ええ」

「単発当たりの攻撃力は10倍化される」

「全体的に言えば20倍されるわけよね、それって」

「一度に撃てるのは普通は1発だが、散弾の為に6発となり、通常の6倍の効果を持つ事になる、だから計算すれば120倍の効果を持つ事になる」

「「反則」」

「思わぬ発見だ。よし三名にも伝えよう、何かに役立つかもしれない」


 俺の言葉に二人も納得して頷いてから向かう。

 コンビニの近くにいた三名のリーダー役のロウに説明した。

 ロウは話を聞いて、何度も考える様な思考に耽り、確認するかのように何度も質問し、納得した上で、この情報の購入を提案してきた。


「他に話さないという条件が付くが、その為の情報料を支払おう」

「別に隠す必要は」

「極めて危険な内容なのだ」

「どこが?」

「もしこれを知ったPK希望の銃使いが耳にしたら」


 俺は言葉がない、仲間の二人も言葉がない、デスゲームなのにPKとは考えにくいが、いないとは言い切れず、中には他人を殺害しでも試験に受かる事を考えない奴、これが居ない訳でもない、何せ人間の武器は他人を殺害してきた歴史の中で発展したものだ。


「・・・」

「ショックなのはわかるが、これも試験だからな」

「・・・」

「攻略には役に立つ、半面PK好きにも役に立つ」

「分かった、他の者には話さないようにする」

「ああ使う分には問題ない、なにそう言う武器だと説明しておけ、もし困ればまた来い、俺なりの方法で撃退してやるさ」

「ありがとう」

「いえいえ」

「もし他が気付けば」

「銃使いの散弾銃を使う者が居たら気をつけろ、恐らく気づくのは時間の問題だ。相手と話、もし誤魔化すようであればひとまずは安全、ひけらかすようであれば極めて危険だ」

「分かった」

「思わぬ事であったが、感謝しておく、何せ銃使いは少ない、その中でも散弾銃使いは更に少ない、全受験生の中でも一握りの中でも更に一握りだ。この情報は危険な分類に入る、で報酬はどうする」

「今度はPOTを購入するときに安くしてくれ」

「了解だ。そうだな素材費用を抜いた金額の5割を引こう」

「感謝、じゃあな」

「ああ」


 □


 夕方の時刻で狩り、夕焼けに染まる草原の中、学府と思われる施設に近くにあるホテルに入る。


「ホテルのカギです」


 渡された鍵、これに俺は危険性に気付いた、ゲーム的なシステムロックではなく、マニュアルでの鍵をつける、言い換えればマニュアルでの開錠が可能という事だ。


「あっ。やはり他の部屋とかも同じ鍵ですか?」

「いえ高いランクのスィートからはシステムロックです」

「じゃそこに変更します」

「了解しました」


 案内されてから、それぞれの個室に入るが、寝室だけしかなく、しかもトイレも風呂もない、再びフロントで話すと風呂付の部屋は確かにあるが、値段も吃驚。諦めるしかなかった風呂付個室だ。


 寝室で休む中、程々の時間後に最上階での食事、特に美味しいというものでもなく、まあ不味くはないというレベルの物で、コンビニの弁当の方がまだ美味しいぐらいだ。


「このホテルの食事、美味しくないです」


 夕霧がぼやく、その温和そうな顔には不味いの言葉が乗っているかのような顔で有り、近くのアキラの方も黙って黙々とステーキを食べていたが、二、三口食べてからナイフとフォークを置いた。


「酷い味よ。なにこれ」

「不味いのか?」

「不味いなんてレベルじゃないわよ。とても料理とは思えない、老人食の方がまだ味が有るわ」

「コンビニで弁当でも買おう」

「ええ。料理人には失礼だけど、これは無理」

「同じく」


 レストランから出て、ホテルの一階に下り、受付に言うとレストランはついでのサービスらしい、味の方は如何に金のかからない料理かでしかないと。

 そんな料理は美味しい筈もなく、いつものコンビニに行き、三名も忙しく生産をしていたが、重要過ぎる情報の為に提供した。

 この情報には他の受験生も聞き、直ぐにコンビニには長い列が作られる。

 並んでから弁当を一つ買い、店員が忙しく働く中、肉まんも一つ買えた。


 三人で分け合って食べたが、お腹がすき過ぎてとても足りない。


「生産スキルの料理を持つ者を探そう」

「それがあれば食事が出来るのですか?」

「ああ料理スキルを持たなければ、料理そのものが成功せずに、結果としては何も食べられない」

「なら、私が持っていますが?」

「「だった!」」

「なら材料を購入してから何処かで調理しましょう、まずは簡単なパスタとか」

「肉」

「YES肉」

「分かりましたお肉ですね。焼き肉なんかが良いかもしれません」

「「イェーイ」」


 これからスーパーなどを探し、見付けてから店内に入り、直ぐに肉を求めるが、今度は料理用の生産アイテムが必要であり、これを購入、焼肉は可能ではあるが、一度に食べる量が多いのに対し、料理そのものが簡単でもあるのだが、重量が嵩む、困った末に手伝うことを条件にロウ達を誘い、三名も焼肉に釣られて快く了解した。

 バーベキューセットは高かったので、携帯コンロと網だ。場所はスーパーの近くの公園、色々と問題ではあるが致し方ないとあきらめた。

 他の受験生たちも、料理スキルを持つ者と交渉し食事、この為に料理スキルは必至の重要スキルとなる。肉を焼いては食べる中、今度は真剣に白米が欲しい、しかし財布が辛い。


「白米が欲しい、米が、米が食いたい」


 呟くのは透けた茶髪の青年、ダマスカスと言う工作師だ。

 他の者もうんうんと頷き、米の確保に乗り出した。

 スーパーでの米、兎に角に高い、これを調理するために生産用のアイテムも高い、しかし背に腹は変えられず、資金を出し合って購入し、なるべく高い生産用のアイテム、安いコメを購入し、料理担当の夕霧が食事を作る、他の者からすれば魔法のように軽い作業で終えてから、白米と肉をひたすら食べる。


「ああ美味かった、ぜひとも屋台村でも作りたいものだ」

「賛成だ」

「吾輩も賛成だ」

「欲しい、屋台村」

「私達に美味しい料理を」


 真剣に考える5名、夕霧は珍事になった事に、微笑していた。

 この話を他の料理スキルを持つ者にも話、何処かにないものかとなって、スーパーの近くが良いという事になり、可能ならば屋上があればよいという事にもなり、公園が近ければなお好いという事にもなり、殆どの受験生があら捜し、何せ不味い料理を食うしかない生活か、美味しい料理を毎日食べられる生活かの深刻な問題だ。

 見付かったいくつかの候補、交渉スキルを持つ者が粘り強く交渉を重ね、一つだけOKが出た。直ぐに屋台村を建設するために生産が活動し、特に工作師は引く手遍く、また絵の画家や、文字を担当する筆写、これらの組み合わせを可能とするものが札を作り、短期間での建造を終え、公園では生産系が集まり生産村が建設された。

 米と焼き肉などの店は結構あるが、一番人気は寿司屋、作れば売れる飛ぶように売れる、逆に人気がないのが麺類、深刻な問題は次にも浮上した。

 言い出しっぺのロウに言われて、俺達は愕然とした。


「仕入れがない?」

「落ち着けよ。まあ明日に仕入れがあるそうだ」

「・・・それって不味くないか」

「ああ一日が過ぎなければ仕入れがない、つまりボスを倒し、明日になって初めて食材などの仕入れがある、しかもこの辺りの住民も消費する、直ぐにボスを倒さないと暴動が起きるぞ、比喩でも冗談でもない、何せ食事=生産活動に値するからな」

「ボスは何処にいるとか」

「さっぱりだ。兎に角に倒さなければ夜食が手に入るのかも怪しい」

「深刻に不味いぞ、それは」

「ああだから生産系で話し合ったが、ボスに対しての賞金を懸ける」

「賢い」

「さらにボスの情報に関しても賞金を掛ける」

「なるほど、そうすればボスを倒す者へのアシストも行える計算か」

「そうだ。明日の料理の為にも頑張ってくれ」

「了解だ」

「後、異星人の生産系とも話は通っている、互いに同じ悩みがあるらしく、明日の食事の為にも協力する事が決定した。あちらの数はこちらと同じぐらいだ」

「了解だ」

「ひとまずはこちらを渡しておく、一回分の夜食だ」


 トレードを受ける、少し量が微妙なたこ焼きだ。

 別れてから、場所を探す、特に腹ペコな戦闘系は血眼になって探していた、何せこのままでは飢え死に決定のような状況だ。試験の最中の餓死なんて真っ平ゴメンだろう。


 情報を扱うローグ系も必死に探す、兎に角に情報が不足過ぎて、ボスを簡単見付ける為の方法など確立されていない状況下だ。一人一人の個人的な技量しか頼る物がない。

 しかも大学生は別に行われているらしく、最高齢でも満19歳ぐらいで、最低の年齢は満10歳だ。

 中等部、高等部の合同試験の為に、お互いに協力し合い、この難局の打破に向けて動き出していた。

 異星人側、主にWHO人が占めるが、こちらも同じような状況の為に特に生産系とローグ系は直ぐに組織立って行動を起こす、これに習い戦闘系たちも行動を起こす。

 戦闘・生産系に属する受験生たちは、戦闘系ほど強くはない、生産系ほど生産に特化されていない、一番に曖昧な立場にいる為に、顔見知りのPT同士互いに情報を交換し、時には共闘し、時には互いの分野からの生産も行う。

 顔見知りのPT、異星人の姉妹と接触し、状況を説明し、可能であれば共闘したいと申し出た、何せ前衛が絶賛不足中だ。


「確かに危機的な状況ではある」


 姉妹の姉である光姫が冷静に言う、異星人と共闘など普通では考えられない事でもある、それは互いにも言えるし、異星人嫌いの地球人の事もあり、成功すれば異例中の異例だ。


「我々NPCもこれは理解している、このままでは異星に渡る為の学府に入る為の試験に落ちる、これは避けたい」

「・・・」

「かといっても知る事もなかった互いは異星人同士だ。これをともなPTとするのなら統一した行動が不可欠であり、また統率は欠かせない物だ。特にこの試験では容易く命を落とす、それがかかる中での見ず知らずの者、また知る事もなかった異星人と組むのは難しい」

「・・・」

「だが組まない訳にもいかない事は理解している、両者が互いに理解するために学府に入る様なものだ。互いの違うものを一々拒んでいてはどうしようもない、受け入れ変化し、また離れるその日まで歩むしかあるまい」

「・・・」

「だが互いに知らない事ばかり、その最大の理由は互いの母星が違う、とても大きな障害だ。その為に統一以外の活動が望ましい」

「分かった。共闘PTを申請したい」

「了承しよう、この場合のPTの優先は互いのメンバーの優先」

「了解だ」

「また前衛を担当するものへ、両者を超えての優先を提案したい」

「了解した」

「良い冒険となる事を期待しよう、星の導きが有らんことを」

「いつか別れるその日まで、力を貸す事を希望する」


 互いに納得した上で共闘した。

 ▽共闘PT参加

 光&美

 ・光姫

 [スキル]

 魔杖剣 召喚 融合 

 個人スキル:調合

 [装備]

 メインウェポン:魔杖剣

 メインディフェンス:高等部への試験生の制服。

 ・美姫

 [スキル]

 魔杖弓 召喚 融合 

 個人スキル:料理

 [装備]

 メインウェポン:魔杖弓

 メインディフェンス:高等部への試験生の制服。

 ▽

「なるほど、我らと同じ考えに行き着いた者も居たか」

「まさか同じ事に行き着くとは、正直に言うと奇妙な気分だ」

「同じ事だ。まさか異星人と同じような事になるとは」

「従者の方はどうする」

「互いに開示しよう、何せ同じ考えのものはお前ひとりだ」

 ▽

 スカオ

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 武器Lv1 NPC言語Lv1 飛行Lv1

 光姫

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 変化Lv1 変形Lv1 飛行Lv1

 美姫

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 変化Lv1 NPC言語Lv1 飛行Lv1

 ▽

「武器、これはまた」

「汎用的になります、とても汎用的に。攻撃力その物は一番低い、対して武器は全て装備可能、一見不利に見えてどんな状況にも対応できる」

「変化?あの姿形を他の種族の物に変えるという?」

「ああ。まさかのNPC言語もある、なるほど同じ答えに行く付くのだから構成スキルも有効なものばかりだ」

「実にユニークです、異星人って面白いです」

「他の二人は特に珍しい物ではないが、同じ魔杖剣使いと、なぎなたと言う武器の使い手か興味深い」

「もしかしてスカオつて異星人?」

「どう見ても日本人にしか見えませんよ?」

「にほんじん?」

「地球の日本と言う国に住む人々です」

「くに?」

「国と言う一つの社会の事です。主に国防などもありますし、地球での基本的な国際単位です。国際とは複数の国の事ですね」

「こくぼうとは?」

「軍事的なものです。兵士を使った勢力防衛ですけど」

「なにから防衛する」

「同じ人からです」

「つまり地球には複数のくにというものがあり、それが一つの社会を形成し、これらを防衛する人々が居り、これらの事をこくぼうと呼び、国防に属する人々はへいしというものがなる、人とは?」

「同じ地球人です」

「同じ地球人同士争うのか?」

「よく争います」

「・・・我々とは随分と変わっているな」

「そうですね。とても言うのもなんですけど、何故争うのかはわかりませんが、母星では間違いなくそんな事はしません、そもそもくにというものがありませんから」

「そうみたいね。ちょっと考え辛いけど、惑星単位での社会なの?」

「いや村や町やら森やら海やらだ」

「村、町は分かるけど、森?海?」

「森に住む人々、海に住む人々だ」

「へ、へー、住むんだ」

「一番大きいのでやはり海、次に森だな」

「地球人からすればカルチャーショックよ。文化的な衝撃ね」

「違う星の者だ。同じの者の方が珍しい」

「一理あるな。じゃそろそろ狩りに行って装備を強化しよう」

「異論はない」

「問題なし」

「消費が大きくなりますね」

「大所帯になれば楽にもなりますから、まずは狩ってみましょう」


 □


 アキラと光姫の武器である魔杖剣、杖のような握りに、MPを消費して使え事が可能な巨大な剣を使う為の武器であり、魔法に対するサポート機能なども使え、万能的な武器かも知れないが、魔法使いがMPを消費する、魔法に対してのサポート能力が低い、サポート専用の特技が使えない等々と欠点も多い。


 戦う中、射撃担当の俺と美姫、前衛の三名の中でも近接戦闘を好む光姫への支援が主であり、ダメージを受けると回復担当の夕霧ヒーラーよりヒールが行われ、強固な守りに対しては主な火力担当のキャスターのアキラが攻撃する。

 前衛と射撃の二人との共闘により、比較的難しかった狩りは劇的に簡単になり、地球の日本の食事であるたこ焼きを取り出すると、美姫が興味がありそうな顔で近寄ってきた。


「なんですこの丸いのは」

「たこ焼きって食べ物だ」

「こんな丸い物がですか?」

「ああ中にタコの足が入っている」

「タコ?あの足がいくつかある無脊椎の?」

「地球にはよく居るタイプの海の生物だ」

「ユニークです。これをどうやって食べるのですか」

「うーんまあソースを掛けるのが一番だけど、まずは一口だな」


 一つを爪楊枝で採って食べる、仲にはチーズが混ざったモチモチの生地、中には男性にはありがたいタコの足にしては大きい身が二つ、この身にはタコ焼きソースがかかっている、さすがはロウ、仕事ぶりが素晴らしい。


「美味い、さすがはロウ、仕事ぶりが天才的だ」

「一つ頂きます」


 止める前に一つを取って食べる、顔を見ればわかる信じられない顔でゆっくりと咀嚼していた、どうやらお気に召したようだ。

 飲み込むと、更に一つを取って食べる。


「美味しい!凄く美味しい!姉さん、これ凄く美味しい」


 妹さんの暴走に、姉の方は慣れているらしく、仕方がないと言わんばかりに肩を落とし、よってきて説明を受ける、クールな女性は訝しがりながらたこ焼きを取り、そのまま口に入れる、そうすると落ち着いた感じの顔には変化が現れ、片眉が大きく上がりたこ焼きを食べる。


「美味しいでしょ?」


 妹さんの言葉に、姉の方は大きく頷いて飲み込む。


「確かに美味い、地球人の食生活は信じられないほど豊からしい」

「あっ、そうだ」


 美姫から取り出した一つの焼き菓子のような物、棒菓子のようで細い鉛筆のようなものだ。それを口に突っ込まれた、味の方は意外な事に濃密な蜂蜜味、生地にはやや辛めの香辛料、これは美味いと素直に感じた。


「美味い、凄く美味しいというよりこれは高いのでは」

「はい。ちょっと値段は高いですけど、お菓子には金を掛けるもので、アーライルでは一般的な考えです」

「なるほど、一度この菓子を腹一杯食べたい」

「好い夢です」


 仲間の二人も来る、棒菓子を見せられて、二人も食べる、直ぐに咀嚼をとめ、非常に味わって食べ始める。


「これ凄く好い、でも贅沢な物じゃない」

「はい。値段の方は高いのですけど、アーライルでは一番売れる為に専門店も多いです」

「そこは天国?」

「はい。美味しい店なら直ぐに売れるので品切れが多いです」

「ボスを狩ってから早く買いに行きましょう」


 何やら纏まったらしい、何せ日本では事件があったために食糧事情が悪い、昔の飽食な時代はとうに消え失せ、今では菓子一つが信じられない金額だ。

 この為に大量にとれる海産物、また簡単に作れる料理の素材なども大量生産されている、特に北海道などは農産の大地だ。南の沖縄には海産物の為に港が非常に多い、この為に食糧事情は改善しつつあるが、昔のようにはいかないのだ。

 ちなみにタコ焼きの方は姉に完食されていた。

 しかし腹は減る、余りに空腹になったので近くのWHO惑星の屋台村に行く、そこは一言で言うのなら異世界。地球側を庶民文化と言うのなら、ここは明らかに高級な場所で、富裕文化だ。

 ここでは異星人の俺達が珍しいらしく、全員が見ている。アーライルの屋台の料理人が作っていたスパイシーな野菜炒め、猛烈に食べたくなり直ぐに注文、店の人も快く応じて購入し、三名で食べる。

 涙が零れるかと思うほどに美味しく、一つ一つが丁寧に刻まれ、炒められ、香辛料がたっぷり、やや塩味は薄め、代わりに隠し味の方のソース系が美味しい。

 一言で言い表すなら塩味より香辛料の辛さに、少し甘めの味わいもする。


「そういえば」


 アキラが取り出した焼きそば、それに二人が軽くとって食べると、間違いなく美味しそうに食べていたので、アキラも一口食べ、俺の方にも出されたので食べる。

 雑と言えば雑であるが、いかにも男料理と言った荒っぽい味わいだ。


「これを料理人に出せる?」

「・・出せるが、出来る事ならだが」

「なに?」

「真剣にレシピが知りたい、そちらの料理はどれも美味しい、特に塩見が良い感じでもあるし、その他の料理の材料も素晴らしい、もし交易が出来たら間違いなくそいつは大商人になる」

「確かにね。交易かぁ。悪くないけど、色々とね。でもレシピだけなら家の料理人が作れるわよ」

「私です。日本料理なら大抵作れます」

「良かった、ぜひ教えてもらいたい」

「なのですが、材料や調理器具がありません、他にもスキルに乗るようなレシピもありません、全てマニュアルでやるしかないのです」

「なるほど、深刻な問題になりつつある食糧問題もある、うむ。どうにかしなければ落第も有るし、まずはローグ系か」

「あっ私の夜食もありますこれです」


 出された肉まん、割ってから二人に渡し、二人が口に入れる、これが衝撃的だったらしく、蒸し調理というものが珍しかったらしい、つまり両者の食文化から交易は100%可能、食べれば互いに虜になる様な物が多い。

 料理の方も一つ出されて一見すると単なるスープのようだが、金糸のような細い植物の茎、中央には角砂糖のような外見の四角い物、料理人がスプーンを出すので受け取ってから一口取ってから飲む、基本的に今までの香辛料とか塩見というものではなく、見た目はスープかも知れないが、甘く澄んだような後味の甘味だ。


「これって高い?」

「・・・(ふるふる)」

「そうなんだ。こんな贅沢な物が安いって」

「逆に失敗ってものとかは有るの?」


 出されたのは見た目もあれであるが、失敗したとしか思えない焼き魚、マイハシを取り出して、身を解してから食べ始める、美味いと言えばまあ美味しいが、焦げ味が強くて食べる量がどうしても減ってしまう、特に美味しい骨の近くの身がすぐに消えていった。


「骨の近くの身が美味しいけど、焦げが辛い」

「・・・(コクリ)」


 互いの文化の違いから、まずは互いの料理、その中でも安い物から互いの料理人に食べてもらう事になった。

 この事をロウに伝えると、居場所を聞かれ、異星人の屋台村と言うと怒られた。

 長い時間に説教され、軽過ぎる行動は慎めという言葉を数十回言われた。

 しかし企画はちゃんと通り、一つまずはアーライルからとなり、毎日交代で行えばよいとなった。

 アーライルの料理は兎にも角にも香辛料が使われる、次に甘味料、塩見の方は少なく、うま味の方はよく分かっていなかったが、どうすればこの味が出せるのかという事には行き着いており、このうま味は徹底的に教えて欲しいという事が多かった。

 逆にコーヒーなどは大変に嫌われた、とても飲めたものではないと。

 飲み物でいえば一番人気は炭酸飲料、次に紅茶、三番目に緑茶、こちらは個人的な好みが強い分野らしく、炭酸と紅茶で割る者もいた。

 ただ舌や喉が痛くなるので、注意は必要という事で、飲料系の料理人が教えていた。

 手っ取り早いとある世界的な炭酸飲料は、人気がありそうながらも何故か受けが今一つ、むしろ炭酸と紅茶やお茶で割るのが好きだった。

 この為に人気のある料理順にレシピ交換、料理人達はほくほくとした顔で互いに話していた。

 次の日本人の食卓には欠かせない海産物の料理、これには海の人達が快く応じ、日本側の見事な調理技術と、海産物を贅沢に使ったスープ類、日本側の握り、海の人側の豪快な丸焼き、色々と違いはあったが、一口食べたら他の料理を考えるのが辛くなる。

 この為に美味しい料理が食べたい、しかし料理をするための食糧事情が悪い、これを解決するために料理人たちにより食材ハンターと言う組合が直ぐに結成された。

 何せ全員分の夜食がない、明日の朝食など無理、この為に互いの料理人たちは頭をひねり、一番多い動物の猪をメインに使う事になった、また植物なども食べられる筈だという事にもなり、防御草やサボテンを狩る事にもなるが、スライムはさすがに無理だった。


 結果的に食糧問題は多少の改善が可能になった。

 だが手に入らない食材も多く、特に日本の家庭料理の定番のカレーやハヤシ、他にも数多い料理の為に物がない、調理された物を加工するにしては色々と限界もあり、ボスを早急に倒す事は互いに共通する事だ。

 ひとまず俺達のPTはアーライルの料理人と交渉し、弁当の一つを貰った。


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