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異星探索はチャイムのあとで  作者: 123456789
第1章。入試
12/12

[012]3月の№12 デスゲーム試験。

 3月7日№4、空の探索の2日目、新記録なほどの長さを旅する。

 地上の限界に対し、空へは限界はなく、どこまでも続く空がある。

 その浮島の一つを拠点に置き、空港の一つを建設し、ここを拠点に探索を行う。

 浮島の一つを探索すると、小さなダンジョンがあり内部には遺跡があった。

 主に飛行歩兵が探索し、エルフの少年の零が、この遺跡のとある仕掛けを解明し、保護者の副官と共に宝を持ち帰ってきた。

 鑑定士たちが喜んで現れ、なせ探索で初めての宝だ。

 期待が膨らむ中、零が代表して開け、中にあるのはチケットだった。

 重い沈黙、肩透かしを食らった面々、開けた零すらも紙切れに怒り心頭、副官が落ち着かせこのチケットは鑑定士たちに渡された。


「ふーん。これ課金交換チケットだよ」

「なんだそれは」

「本来なら課金しなければ、手に入らないアイテムと交換できるチケットなのさ」

「どうやって使う」

「詳しく調べるって訳なのさ、まあやってみるよ」


 ミツナがあれこれと行い、判明したのか零が呼ばれて説明を受ける、周りの者もどれほど貴重な物か理解に至ると大騒ぎになった。

 説明を聞けば、課金アイテムと交換できるために、店で売られるような通常級、生産で手に入るような生産級とは違ったものが手に入る。

 零はいつも世話になる副官の渡そうとしたが、生真面目な副官は今回の旅の目的から事務に渡すべきと主張して、副官の意見が採用された。

 実質的な旅の成功に、事務員たちの長の満は震える手で受け取り、扱い方を教わると直ぐに事務系を選択し、表示された課金アイテムの一覧を見る。


『満が課金交換チケットを使いました。おめでとうございます』


 手に入った事務用品、性能は事務作業効率を最高峰の1%向上させるアイテムだ。


「やったぁ!」


 喜ぶ事務員達、旅の成功に、第2空港の広場は騒がしくなる。


「スカオ隊長」


 名前を呼ぶのは実験小隊の小隊長の蓬莱だ。


「探索の許可を貰いに来ました」

「しかし専用装備の調整があるのではないか?」

「何とかします」

「分かった。許可する、気をつけろよ」

「はい」


 忙しくなり、飛行歩兵も探索チーム、警戒チームに分かれての作業、楽しい探索チームの幸運を引き当てる者も居れば、退屈な留守番のチケットを押し付けられる不幸な奴らも居た。

 WHO人の他にも、二番目に多いエルフ達も居るので、地球人の方とも組ませてから向かわせる。

 そんな幸運なエルフの少年の零に提案した。


「よし零、ヘイ、俺らと臨時を組もうぜ」

「いいのか?」

「お前さんの実力は評価している、何より幸運が味方する様な奴だ」

「実力と言ってほしいね」

「はいはい、実力は認めるよ」

「おう」

「彼方の浮島だ。コウ、美姫もよいか?」

「問題ない」

「零君との冒険です楽しみです」

「君は余計だ」


 ▽

 ・スカオ

 [スキル]

 射撃武器ⅡLv1 装飾Lv1 戦術指揮Lv1 召喚Lv1 融合Lv1 付与ⅡLv1

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 武器ⅡLv1 NPC言語Lv1 飛行Lv7 

 [装備]

 メインウェポン:飛行歩兵の対物複合ライフル(銃重視)

 ディフェンウェポン:飛行歩兵の強化複合制服

 アクセサリー:複合防御リング

 ・光姫

 [スキル]

 武器Lv1 魔杖剣ⅡLv1 召喚Lv1 融合Lv1 ステップLv1 調合ⅡLv1

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 変化Lv10 変形ⅡLv1 飛行Lv7

 [装備]

 メインウェポン:飛行歩兵の複合ライフル(剣重視)

 ディフェンウェポン:飛行歩兵の強化複合制服

 ・美姫

 [スキル]

 武器Lv1 魔杖弓ⅡLv1 召喚Lv1 融合Lv1 料理ⅡLv1 製菓Lv1

 [従者]

 ゴーレム

 [スキル]

 変化ⅡLv1 NPC言語Lv1 飛行Lv7

 [装備]

 メインウェポン:飛行歩兵の複合弓(弓重視)

 ディフェンウェポン:飛行歩兵の強化複合制服

 ▽臨時メンバー加入

 ・零

 [スキル]

 武器Lv1 防具Lv1 装飾Lv1 攻撃魔法ⅢLv1 妨害魔法ⅡLv1 付与Lv1 飛行Lv7 

 [装備]

 メインウェポン:飛行歩兵の複合ライフル(サポ型)

 ディフェンス:飛行歩兵の強化複合制服

 アクセサリー:複合リング

 ・ヘイ

 [スキル]

 武器Lv1 防具Lv1 装飾Lv1 回復魔法ⅡLv1 支援魔法ⅡLv1 防御魔法ⅡLv1 料理ⅡLv1 製菓ⅡLv1 調合Lv1 飛行Lv7

 [装備]

 メインウェポン:飛行歩兵の複合ライフル(サポ型)

 ディフェンス:飛行歩兵の強化複合制服

 アクセサリー:複合リング

 ▽

「なんだこれ!?」


 エルフの少年は俺らのスキル構成に吃驚していた。

 ヘイも訳の分からないスキルの数々にスキル欄をしきりに見ていた


「おい隊長!なんだよこれ?というか!」

「落ち着けよ零。俺らも色々と有るものだ」

「んなことはどうでもいいんだよ!」

「おーい。ヘイ、落ち着かせてやってくれ」

「あっはい」


 渡されたチョコ菓子に、零は喜んで落ち着く、すっかり餌付けされていた。

 WHO人のニクシータイプこの飛行歩兵という珍しい女性、かなりの変わり者ではある一面もあるが、腕利きのキャスターでもあり、零の全てを担当する程の女性だ。


「まずは、召喚と融合ですね、訳の分からないスキル過ぎます」

「あーまあ、召喚は知っているか?」

「はい。従者召喚ですね」

「ああ。その従者と融合するのが融合だ」

「融合するメリットは」

「スキルが使える」

「・・凄い情報ですよそれは、これがあれば家も随分と強化できます」

「問題もある」

「はい」

「融合すると従者が成長し難くなる、また従者も装備は解除される」

「それは、かなりのデメリットです」

「しかも融合する従者がいる以上、MPは常に減少したままだ」

「デメリットが多すぎます、これは家では採用できません、どう考えても不利です」

「メリットもあるし、デメリットもあるが、俺らはメリットを採用した方だ。しかしこれをサモナータイプのキャスターが行えというのは無理だ」

「確かにです。では次に変化と変形です」

「変化は他種族に変わる事が可能となる、人も獣も可能だ。また変形に関しては生き物ですらない物、例えば石や壁にも成れる」

「ユニークなスキルです。利用価値は多いですし、今後の研究課題です。ではNPC言語は」

「ほれ、俺と美姫の翻訳機能だ」

「・・・道理で、獣たちの言葉が分かるのは何故かと、皆で噂していたらそんな秘密があったのですね。随分とまあ、レアなスキルしかないユニークな構成だったとは」

「話は聞いた、随分とあれだな、戦闘には全く意味のないスキルばかりじゃないか」

「そうですね。それと戦術指揮とは?」

「PTの何かを減らす代わりに何かを増加させるスキルだ。スペルに該当するスキルだな」

「・・・常識が帰ってきてほしいですけど無理ですよね」

「まあ定番じゃないな」

「定番なのは付与と飛行のみじゃないですか」

「まあだから臨時すら組めなくなった、だって説明しなければわからないだろ」

「説明されても理解はまあ出来ても取ろうとは思えないスキルばかりです」

「じゃ探索に行こうぜ」

「おう」

「分かりました」


 飛行スキルを使い空を飛び、一つの浮島に向かう。

 浮島に下り、俺らのPTと臨時の二人、遭遇したエネミー、これに武器は向けずに美姫が挨拶した。


「こんにちは、おひとついかがです?」


 見せる菓子に、動物型のエネミーはじっと見てから、菓子に恐る恐る近づいて口に入れる、美味しいのかボリボリと食べて、強請る様に美姫を見る、この純白の翼の少女も笑顔で与えていた。


「他の方々にも提供したいと思いますので、紹介してもらえませんか」

「・・・(コクリ)」


 エネミーの案内された洞窟に、小さなエネミーの一家が暮らしていた。

 何やら言い争う一家ではあるが、美姫が小さな子供に与えると、美味しそうに食べ始める。この匂いに釣られて隠れていた者も現れ、美姫が提供していた。

 この行動にキャスターの二人は信じられない行動についていけない、エネミーは敵という意識に固まっている二人には衝撃的だったらしい。


「まあこうなるだろうと思って組んでみた。衝撃的だったろ?零、ヘイ」


 二人にとってみれば考えるまでもなく衝撃的だったらしく、二人揃って頷いていた。


「戦うだけが全てじゃない、戦わずに勝てるのなら楽なものだ」

「普通のやり方じゃない、俺は・・ヘイ?」

「ええ。普通の戦い方ではありません。むしろ懐柔の様な物のです。どれが正しいという訳ではないのですが、こういうやり方もあるのならとっても良い方法のひとつです。なるほど、確かにNPC言語は有効です」

「そうか、なんかすげえ勉強になる」

「一度取ってから色々と試しな、良い結果になるぜ」

「冒険が楽になるぜ。皆に知らせて来よう」

「ええ。これは大きな収穫です」


 二人が報せに行き恐らくありのままに知らせるだろう、一人一人が考える様になる、自分達は何をしてきたのだと、認めない者も出るだろう。だが認める者もいるだろう。それらが良い結果に繋がれば幸いである。

 昔はエネミーを見れば敵だと思っていたが、NPC言語での、獣と試験生たちの翻訳を行う事で次第に考えが変わった。

 獣達とも話せるのならエネミー達とも話せるのではないのかと、それが可能ならと美姫と相談し、いつか臨時を組んでら行ってみようと決めていた。この成功であった。


 エネミー達の表示が、いつの間にかNPCに変わっていた。


 一度戻り、第2空港で誰も言わないが美姫や俺を凝視ていた。

 何が正しいかはまだわからない、しかし飛行仲間も一考の値があったらしく、テイマー達の小さく会釈し、どうもテイマー達は理解を示したようだ。

 キャスターたちの方も、指揮官の説明に渋い顔で有り、特に攻撃魔法使い達は指揮官の心変わりに困っていた。

 荒治療かも知れないが、NPC言語の取得を命じ、エネミーとの会話を行う任務を出した、だが誰もそんな経験がないためにどうしたらよいのかが分からない、獣使い達が臨時を呼び、このテイマーたちの呼びかけで参加していた。

 美姫と拳を突き合わせ、ひとまずは成功であった。


 飛行団内部でも議論の中心のNPC言語、エネミーは敵だと考える者、話せば伝わるかも知れないのなら話してみるべきだとする考える者、現在調査中とした。


 NPC言語の登場により変化しつつある飛行団、その中心の飛行歩兵、この飛行歩兵の全員が取得したNPC言語により、今までの俺と美姫がしていた人と獣の間に立つ役割が拡散し担い、飛行騎兵も全員が取得した。

 機甲兵達も、実働部隊の2つの取得もあり、ひとまずは静観した。


 楓に呼ばれ、事情を話した。

 臨時も組む事を要請され、俺らのスキルを伝えた。

 極めてレアなスキル構成の俺ら、単純な構成ではない為に楓も考えるに値する構成だったらしい、沢山考えてからタスクに伝えた。

 NPC言語には時間がいる、しかし騎獣達の事もあり推進スキルの一つとなった。

 厩舎より解放された騎獣達、よく騎兵達と出歩く姿が見える。

 生物学者たちも取得しており、騎獣達と会話していた。

 騎獣達の指揮官である天狼から要請があり、俺らは呼ばれた。

 翼の生えた天狼は頭を器用に下げてから礼を述べる。


「貴方方にとってみれば我々は恐ろしい」

「そうなるな」

「我々にとってみれば主達の仲間だ」

「そうなんだ」

「今まで幾多の戦いの中、我々は力を欲し、彼らが与えてくれた、空を飛ぶために翼もある、今は会話する事も出来るようになった、何故そんな真似をする」

「とある惑星には人と獣の間に立ち、通訳を行う白い獣達がいるそうだ」

「それで」

「もし会話できればまあ面倒は増える、だが話す事も出来る」

「その話す事は本来は不可能だ。貴重なスキル枠を減らしてでも取るべき事だったのか」

「必要だった、冒険には言葉の通じないのが当たり前の事だった、それを変えられるのならよい選択なのかもしれないと思った、だって世界中が敵だらけだと辛いだろ」

「貴方は愚かだ。しかしその愚かさが我らの言葉を与えた、これをなんという」

「俺にとってみれば言葉もあるが、人と獣の間に立つ役割を皆で負担できればよいのかなと、君らがそれが出来ない理由はないからね」

「・・・可能であれば取りたい」

「ありがとう、だから一つ聞きたい、君らにとって主とは何だ」

「半分だ」

「感謝を、不可能を可能としてくれたスキルには感謝しないとね」

「我らも少しだけ愚かになろう、何かの愚かさが何かを与えてくれるのなら、その愚かさは確かに意外性に満ちてる」

「ああ」

「貴方にとって我らは何だ」

「同じ空に居て同じ会話が出来る獣達、人と違う所は有るが、人と同じ役割もないが、同じ空に居るのは同じ事の一つだ」

「共通するところがあれば協力するのもよい、敵対するのなら戦うのもよい、自由が好きなのだな」

「よく言われるよ」

「貴方方は我らと会話を求め、我らも会話を求め、今会話しているのなら、我らの人に成れるのだろうか?」

「なりたいのか、こんな面倒な物に?」

「なりたい」

「変化というスキルがある、他の種族に変わるスキルだ。当然、人も獣も同じく、好きな物を選べる」

「感謝を」


 天狼は礼を述べる、主であるハイケルも嬉しそうに天狼の喉を撫でた。

 天狼は変減のスキルを取り変化した、ハイケルのような姿に、ただ性別が女性だったらしく、重い沈黙が流れる。


「おー外見が変わったな、随分とまあ」

「ハイケル」


 抱きつき甘えていたが、体の動かし方を知らな天狼は滑って転んでとんだお転婆娘だ。

 会話を聞いた騎獣達、あちらこちらで大混乱、獣たちが人となった事で周りも混乱の真っただ中、騎兵達も、騎獣達も、何せ性別というものがあるので男性も女性も混乱の中だ。

 押し倒された顔を舐められるものもいるのだが、男性、女性もあり、たとえ人と会話できても、人の姿になれても騎獣達の行動は獣で有り、これは困った。

 色々と収束した、人となった騎獣達は、一度元の姿に戻り、主達と話だし、殆ど甘える生き物の為に、押し倒された女性たちは怒って躾けていた。

 中には冷静な獣も居て、主に苦言を呈していた。

 NPC言語と変化の取得により、騎兵達も混乱し、ハイケルや天狼達もひとまず一緒に住んで常識やらなんやらを叩き込む事が決定した。

 殆ど育児の様な物の為に約束した相手に助けを求め、当然のように知った周りも大混乱、混乱に次ぐ混乱の為に、俺は楓に呼びだされて怒られた。

 反省し、スキルについての事は機密を守る事になった。

 懲罰の為に飛行歩兵より俺ら三名は騎兵に配属された。

 飛行歩兵達も困って何とかしようとしたが、楓は怒っていたために聞き入れずにいた。


「おう」

「感謝はしているが、無理だぞ?」

「だよな、騎乗経験なんてないぜ、俺もコウも美姫も」

「う、うむ。獣は好きではないが、努力はする」

「そう言う問題ではない、1年程度の訓練でやっと見習いになれるぐらいだぞ、それも飛行とは比べようがない難しさだ、はっきりと言おう無理だ」

「なんだよなぁ・・・」

「スカオも騎兵となるのか?」


 獣娘の天狼が興味がありそうな顔でいう、今回はしっかりと服を着せられ、近くには疲れた顔のヨリィがいた。


「どう考えても無理よ。逆立ちしても出来ないわ。そもそも天騎になる様な騎獣ですら非常に貴重なのに、それを飛行歩兵に与える?正気?」

「スカオは口が軽いからな、まあ変化の事も知られていなかったから仕方がないが、まか獣たちが人となるなんで、こんなスキルがあるとは」

「まさかとこうなるとは思わずに、誰だって失敗はある物だ」

「貴重な天騎を危うくただ常識知らずの人にしようとするなんて、私が上司だっらPKしているわよ?」

「いや会話が出来て姿が変われば面白いかなと」

「あんた頭が悪いのね。まあ良い事もあったし、悪い事もあったから相殺ね」

「・・・一応、一応だが」

「ダメに決まっているでしょうが!」

「し、しかしヨリィ、こいつらには訓練が必要になった」

「追い返しなさい!」

「し、しかし」

「天狼!」

「?」

「こいつらをPKしなさい!」

「?」

「言葉の意味が解らなかった?」

「・・・・(コクリ)」

「分かったわよ。一応、一応、無理!」

「ひとまず訓練をしようと思う」

「・・・騎獣探しか、大変だぞ?」

「地上に降りて探すさ、これでよいかヨリィ?」

「・・・分かったわよ。ちょっと地上に降りるわよ、まあ色々としてくれたから貸しは返すわ」


 懲罰の為に飛行騎兵に配属され、飛行歩兵に貴重な天騎は支給できないとして、地上での騎獣探しに行く、これにハイケル、天狼、ヨリィが付き合い、飛行歩兵は一時的に零が預かる決まりとなった。

 飛行歩兵の為にそのまま飛べ、地上の町のペットショップ。

 飛行歩兵の隊長、副隊長、弓師指揮官の三名が、飛行騎兵の隊長と、その約束中の相手とペットショップに現れた事で、知らせを聞いた各所より確認の話が来る。

 激怒中の楓は、バカには躾がいると言い返し黙らせた。

 噂を聞いた潜水団より勧誘が来るが、さすがに無理と断る。

 潜水歩兵の隊長は非常に親しかったために、潜水騎兵の隊長と共に付き合ってくれ、互いの情報交換の場ともなり、騎兵同士、騎獣の話で花が咲き、ヨリィは天狼にしっかりと言い聞かせ、分かっていない天狼に絶対するなと何度も言っていた。

 そんなペットショップ、潜水可能な水騎、飛行可能な天騎を探すには経験や勘しかない、ペットショップ全部を回っても見つからない事が当たり前だ。

 しかし稀にはいる為に、見付けたらすぐに購入しそれぞれが大切に育てる。

 その中でも貴重なまでの確率のある店に来た。

 生き物が好き俺と美姫の方は、獣を見ると餌を上げて直ぐに可愛がる、コウの方は獣が好きではない為に、凄く努力はしているが苦手過ぎてどうしようもない。

 その中でもいくつかの候補が上がり、小さな狐の三匹、どうも飛行可能な天狼を恐れずに何故か懐いてしまい、店員も珍しがって購入を勧めてきた。

 天狼の方も懐いてしまった狐達が、なかなか離れたがらないので、困ってしまっていた。


「よし買おう」

「まあ、天狼にも懐いたし、悪くはない」

「小さいの、ちょっと話を聞いてもらえないか」


 スキルを発動し会話する、狐達は吃驚、言葉が通じる様になったために他の獣たちも驚き、全獣が俺を凝視ていた。


「空を飛ぼうと思うのだがまあ事情があって何らかの獣に乗らないといけなくなった、小さいの達とはこちらの狼とも話せそうだし、どうだ空に上がらないか」

「・・僕らをどうするの?」

「一緒に住んでから考えてもらえないか?何をするのかを」

「もし嫌と言ったら?」

「このままここで暮らす事となる」

「・・・」


 勇敢なのか、臆病なのかはわからないが、リーダーらしい狐は、思案顔で俺らを見ていた。


「食事とか色々と出すぞ」

「本当?」


 食い意地の張った一匹が確認していた、リーダーの狐に睨まれて黙る。


「暖かい寝床も用意しよう、布団もある、休暇も提供しよう」

「・・・うーん」

「菓子も出そう、飲み物も出す、安心しろ味は保証しよう」

「・・・イマイチ」

「装備も提供しよう」


 一生懸命勧誘する俺に、分からない潜水歩兵と潜水騎兵の隊長の二人は、苦笑していたが、俺が獣と会話できる噂は知っていたために突っ込み入れなかった。


「ひとまず、これを食べてから考えてくれ」


 出した獣用の菓子、食い意地の張った一匹は食べたそうにしていたが、リーダーは慎重に嗅いでから、小さく舐め、思案した顔で小さく齧る。


「うーん。まあ悪くはないお仕事のようだけど」


 凄く渋られるが、ここは押すしかない、出した獣用な飛行団の菓子、同じ様に慎重に調べてからリーダーが齧り、このリーダー狐は意外そうな顔でしげしげと俺を見てから、更に渋る。


「労働条件の方の確認だ」

「おう」

「まず3食の食事、給与はまあ今後の相談の上、休暇は週に2日、労働時間は一日8時間、残業は無し、事情がありどうしてもという場合には特別ボーナスを支給、ここまではいい?」

「ばっちりだ」

「装備の方も支給する事、負傷などもあった場合の方は直ぐに手当て、後昇進とかは有るの?」

「昇進の方はないな、しかし賢いなお前」

「獣の社会も労働だから。こればかりは仕方がないよ」

「しっかり者だな他には」

「風呂と個室は?」

「風呂は可能だが、個室は俺の立場からして無理だな」

「平なの?」

「最も悪い」

「・・・」

「とある事件を起こして懲罰を受ける」

「バカをしたね」

「きっと面白くなるのだが、色々と足りなかったらしい」

「ふーん」

「ただ財産は有るから安心しろ、生産スキルもあるから金にも困らん」

「随分と変な人だね」

「やり過ぎた結果かな、反省はしている」

「反省ね。やっぱりどっかの組織の人?」

「飛行団という組織の者だ」

「なるほど、元の地位は」

「飛行歩兵の隊長だった」

「現在は」

「飛行騎兵の見習いになる予定」

「・・何をしたの?」

「機密の為に話せない、さすがに話したら怒られるでは済まん」

「うーん。労働条件は悪くはないけど、なんというべきか立場が非常に悪いというのが少しね、しかも色々と足りていないスキルも有るし」

「スキルは今後取る、これは労働条件に盛り込む」

「なるほど、本当に反省している様だし、結構こたえている様だね」

「危うく酷い目に遭い掛けた」

「なるほど、もしかして組織の長を怒らせたの?」

「・・・」

「ああなるほど、それは不味い」

「・・・」

「うーん。どうしてここまでの好条件が出るか大体わかった、組織の長を怒らせて懲罰を受けるから、組織の支援も受けられそうもない、まあ味方はいるようだけど」

「ああ味方はいる」

「・・・なるほどね。相当不味い事をして懲罰を受けるも、味方に助けられて追い出される事はなかった訳か、好条件でもあるし、ただ組織の者なのに組織の支援が受けられないのはね。まずは体験だね。試しにやってみてこれは危険と思ったら辞めるよ」

「恩にきるぜ」


 労働者を雇う様に契約し、金やら手続きを終えてから三匹を連れる。


「まさか雇うとはな」


 呆れるハイケルに、ヨリィは何処か納得がいかないらしい、二人の仲間は雇うのなら何の問題もないらしく歩き、潜水士の二人は獣を雇うと言う事に理解が及ばない。


「騎獣を雇うなんて」


 ヨリィはぶつぶつと呟く。

 三匹は久し振りの自由な時間に、とことこと歩きながら町中を見ていた。


「おし上がるぞ、マーベック、スワード付き合ってくれてありがとう、いつか礼はするぜ」

「・・・よくわからないが、機密というものか?」

「ああ。話せばさすが追い出される」

「何をした?」

「それも話せん、話せば激高した楓にPKされかねない」

「あの楓がか?」

「凄く怒っている」

「余程の事をしでかしたか、何かあれば連絡しろ、いつでも席は開けておく」

「感謝を」


 二人と別れて、三匹を抱えて飛ぶ、空を飛びだした俺達に三匹は驚き、食い意地の張った狐の方は食い物から遠ざかるのが悲しいのかしきりに臭いを嗅いでいた。


「後で食べ物は出すから、少し我慢しろよ」

「貴方は我々を雇った以上、我々も働く事は確かにある、しかし空が労働の場所か?」

「主に」

「リーダー、確認ミスだ」

「・・・まさか空とは、これは予想外だね」


 □


 第2空港に付き、三匹は空の旅に混乱する様子もなく地面についてから降りて近くで休む。美姫が料理を作り三匹に提供、コウの方は三匹の近くで待機。


「熱いからゆっくりね」

「なんだ話せるのか?」

「ええ。飛行歩兵は全員話せます。飛行騎兵も同じですよ」

「で、彼奴は何をした?」

「スキルの知識を教えたの」

「スキルの知識?」

「本人取ってみれば親切心からだったけど、楓は激怒した飛行隊長の任を解いて騎兵に配属され、訓練生に降格されたのです」

「余程の事を教えたのか、対価は」

「ないです。そう言う下心のあるタイプじゃない」

「・・・バカか」

「うーん。確かに頭の方はそう賢くはないけど、なんというか飛行出来れば幸せって言う風の様な人なの、永遠に飛んでればいいと」

「賢くはない?そう言うのをバカというのだ、リーダー確認ミスだ」

「なんか最近失敗が多いよ。悪い奴じゃないけど、なんというか足りなそうな奴だ」

「正直な意見だが、転職は辞めた方がよいかもしれん、余程のバカだぞ」

「しかし好条件だしな、ああいう奴が嘘を言うタイプにも見えない、そもそも難しい駆け引きが出来るような奴でもないし、相手の弱みに付け込むタイプでもない、こいつは上手くやらないと大変な職場になる」

「・・・味方は?」

「沢山います。飛行歩兵も騎兵も同じ様な味方ですし、そもそも飛行団はスカオを中心として組織ですし」

「だが代表を怒らせた」

「はい。楓も友人のバカには怒っていますし、その内何とかなりますよ」

「なるほど、意外に労働期間は短そうだ」

「えー。あんなところにまた戻されるの?」

「お前は喋るな!」


 食い意地の張った一匹を、冷静な一匹が殴る、リーダーの方は慎重の食べながら何やら思案顔だ。

 三匹の個性に美姫はクスリと笑いながら殴られた方を薬で癒した。


「怪我をしたら治すのが労働条件ですし、これでよいですか?」

「・・・本当にするのか?」

「というよりしていますし」

「獣を雇う言うか、しっかりと労働条件を行うとか、変な連中だ」

「そうですね。確かに変です」

「自覚があるのならよいが」

「そこの黒い奴は何で黙っているの?」

「姉さんは、獣に虐められた経験があるから獣が苦手なのです」

「・・弱いのか?」

「今は強いです。飛行団最強の剣士ですし」

「・・・変な連中だ」

「僕は美姫、貴方達の名前は?」

「ないよ。リーダーと、其の1、其の2」

「じゃ部屋に付いたら名前を考えましょう」

「・・・もしかしてとは思うけど、あんたもか?」

「僕も姉さんも止めなかったら同じくです」

「物好きだな」

「同じPTですし、一蓮托生です」

「なるほどね僕らと同じという訳か、あの黒いのも同じとすると代表は相当頭に来ている様だね」

「はい。友人でなければとうにPKされています」

「ぴーけー?」

「殺害です」

「・・・・大丈夫かこいつら」

「整理するのなら、飛行団という組織は彼奴が中心となった組織で、友人の楓という代表の逆鱗に触れる様な事をして、飛行歩兵から、飛行騎兵の見習いに降格した」

「見習いの下の訓練生です」

「・・・リーダー、確認ミスだ」

「どれ位で訓練生から見習いになる?」

「1年位です」

「なるほどね。僕らの労働期間か」

「いえ、それ以上です。相当長くなります」

「それ程楓という代表は怒っているのか?」

「・・はい」

「しかし友人の為に少しの理性だけは残っていた訳か、余程大切な者だったのだろうな」

「楓の無二の友人です。放置しておけば二人で永遠と遊ぶ関係ですし」

「その楓という奴はあまり好きになれなかったが、余程の苦労をさせてきたようだな」

「・・・はい」

「なるほどね、単純な短期労働とは違う訳か、これは長い間になるからよい条件も有るし、転職も悪くはないね」

「でもテイムも騎乗もないよ?」

「労働条件には盛り込まれているし、取ってもらうしかないよ。まさか労働者の方が雇用者に色々と教えないといけないなんて」

「その点は大丈夫です。スキルは有りませんが、訓練などは全て受けられますから」

「懲罰なのに大切にされているな」

「そうなんですよね。スカオが飛行団の中心ですし、楓も頭には来ていますが、色々な関係各所からも戻すようには言われたのですが、珍しく意地になっているのです」

「飛行歩兵という奴の長だったそうだが」

「飛行団創設者、飛行歩兵の創設者、つまり最初に行ったのがスカオなのです」

「なるほどね。色々と有るけど、バカなためにやらかしたわけか」

「はい。利口という言葉が通じにくいタイプなのです。打算も特に考えませんし、まあ別に真面目という訳でもないですけど」

「苦労したのか?」

「いえ、むしろ何度も助けられた側です。多いですよ」

「なるほどね。そう言うバカだったために出来たが、そう言うバカの結果、バカをして怒らせて懲罰を受ける訳か、バカというのは要注意だね」

「善い人なのですが、足りないところが多いというか、完璧な人ではありません」

「ふーん。悪い所は頭が賢くないタイプ、別に知識の方でなく、頭の考えの方が利口とか、賢いというタイプでもない、色々と出来るが色々と足りない、変な奴」

「確かに一般的な人に比べで随分と風変わりです。特に人とエネミーと獣を区別できるのかが疑問です」

「・・・頭が悪いぞ」

「エネミーと話そうとしたり、獣を雇ったりするのがその大きな理由です」

「正気じゃない」

「多分、襲ってくるのは敵、それ以外で友好的な物は味方という認識なのかもしれません。随分と普通の人とは違います。人は人と、獣は獣と、エネミーとエネミーとというのが当たり前で常識ですが、スカオはその区別というものに疑問があるようです」

「変人という奴だな」

「はい。変人です」

「なんでそんな人が好いの?」

「そうですね。普通なら無理な事を数多くこなしてきました、長い間無理な事も、誰でも無理な事を、仕方がないと諦める様な事をスカオは一人で解決しました。僕も姉は随分と助けられましたし、飛行団の人達も、潜水団の人達も、地上の人達も多くが助けられました。だからユニークな人かもしれませんが、傍に居てもよいと考えるのです」

「要するに気に入っている訳か」

「はい。お気に入りです」

「そう言う組織なのか?」

「近い人たちの集まりです。特にWHO人という人達、僕もそうですが、スカオにはとても感謝しています、永遠に不可能なはずの問題を解決してくれた、何の見返りもなく何の下心もなく行ってくれたことには深い感謝です」

「・・・バカは要注意だな。バカだし」


 三匹の中では俺はバカ決定らしい、とても言いたいことがあるが難しい為に口が挟めなかった。

 納得がいかずに不満そうな顔でいた、コウは考えてから頷いていた。

 酷く裏切られた気分だ。

 天狼の方はハイケルに毛繕いをしてもらい、気持ち良さそうに寝そべり、ヨリィはそんな1名と1匹の近くでウトウトと船をこぐ。


「休憩終わり、直ぐに向かうぞ」


 八つ当たりに指示を出し、十分に休んでから向かう。

 第2空港に付き、直ぐに楓に呼ばれた。

 俺らと雇われた騎獣達も呼ばれ、茶色の翼を持少年は、とある報告書を見せた。

 極秘裏に進められていた飛行歩兵の飛行騎兵化計画、これらの簡単な内容及び細かな計算、飛行歩兵が飛行騎兵になる事で数多い問題が付くが、変幻により積載量や収納スペースの減少がこれを解決した、騎獣達の人型装備化も進められ、最終的な結論を言えば飛行歩兵り騎兵への転向は内部的な反対により不可能と推理されていた。


「スオ、どうだい?」

「悪くない、むしろ飛行歩兵の数多い問題が全て片付く、ただ俺を以てしても飛行歩兵を全て騎兵にするのは難しい、しかしモデルケースになれると判断するのなら応じよう」

「うん。きっとなれる、博打を打ってみたら以外に成功したね」

「楓は天性のギャンブラーだからな、しかしいつから?」

「開発チームにも色々あるんだよ。何より飛行騎兵は魅力がある、対して機甲兵はちょっとね」

「ブロードが聞いたら激怒するぞ」

「だってね。機甲兵はなんというか、それゃあ強いけど、熟練までの時間が長すぎるし、装備もいまだに研究中だし、実働部隊随一の問題児だよ」

「色々と問題があるからな彼奴らは」

「うん。これも見てくれ」


 もう一つ報告書、飛行騎兵の魔法騎兵化計画、どうも開発チームは裏で色々と動いていたらしく、飛行歩兵の飛行騎兵化計画や、この魔法騎兵化計画、これの総合的な防衛計画への影響を考えれば現在の比ではない効率を示し、煩雑な作業の多くを簡略化できる、何よりも装備の開発速度の向上は魅力的だ。

 しかし内部の抵抗から不可能であるはずだったが、俺としてもこれは受けるべきだったので一読後に頷く、楓はやっとの事で緊張を解き、水を飲む。


「正直緊張しすぎて危険だったよ」

「楓は何かあると言葉が短くなるからな」


 俺の言葉に、楓の幼馴染の二人は吹き出し、楓は最初からばれていた事に苦笑していた。


「なんだばれていたのか、最初から話しておくべきだったね」

「まあ俺は口が軽いからな」

「それは仕方がないよスオだし」

「飛行歩兵の騎兵化計画、飛行騎兵の魔法騎兵化計画は了解した。俺らはモデルケースとなり、数多い装備開発に協力する」

「ありがとう。でもその三匹は子供じゃないか」

「ああ雇った」


 三匹が頷くと、楓は驚き直ぐに事態を理解していた。


「うーん。まさか獣を雇うとか、いや決して、でも」


 頭の良い楓でもこの常識知らずの行動は付いていけそうにもなかったらしい。


「・・・まあいいや、一言で言うのならあまり非常識な行動は慎んでくれ、僕だって偶には常識が恋しくなるからね」

「努力はする」


 そんな一日の事だった。

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