[010]3月の№10 デスゲーム試験。
雪かきの後に5名でPTを組んだ。
俺と二人は所謂の幼馴染で、兄の時雄が常に面倒を見てきた。時雄も大学生となるのでもう面倒を見れない、なので俺達も色々と考えて話し合った末にこの試験を受ける事にした、俺もアキラも夕霧も、性愛というものが混ざらない間柄なのだ。実質的な絆の関係の兄妹と言ってもよい、最年長の時雄が兄で有り、俺が次男、夕霧が長女で、アキラが次女のようなものである。
そんな3名となったPTに2名が加盟した、なんとも騒がしくなった事もあって、女性3名の姦しくなった事、兄になる予定のコウも、男性の俺もついていけない会話の流れだ。
会話を行う話術の領域で女性には敵わないのだ。それが若い俺らには身に染みてわかる。
▽
・スカオ
[スキル]
射撃武器ⅡLv1 装飾Lv1 戦術指揮Lv1 召喚Lv1 融合Lv1 付与ⅡLv1
[従者]
ゴーレム
[スキル]
武器ⅡLv1 NPC言語Lv1 飛行Lv7
[装備]
メインウェポン:飛行歩兵の複合ライフル(銃重視)
ディフェンウェポン:飛行歩兵の強化複合制服
アクセサリー:複合防御リング
・夕霧
[スキル]
薙刀Lv2 回復魔法Lv1 舞踏Lv1 料理ⅡLv1
[装備]
メインウェポン:飛行団料理人用サポ型薙刀
ディフェンウェポン:飛行団の料理人強化制服
・アキラ
[スキル]
魔杖剣Lv2 攻撃魔法Lv1 妨害魔法Lv1 歌Lv1 裁縫ⅡLv1
[装備]
メインウェポン:飛行団裁縫師用サポ型魔杖剣
ディフェンウェポン:飛行団の裁縫師強化制服
・光姫
[スキル]
武器Lv1 魔杖剣ⅡLv1 召喚Lv1 融合Lv1 ステップLv1 調合ⅡLv1
[従者]
ゴーレム
[スキル]
変化Lv10 変形ⅡLv1 飛行Lv7
[装備]
メインウェポン:飛行歩兵の複合ライフル(剣重視)
ディフェンウェポン:飛行歩兵の強化複合制服
・美姫
[スキル]
武器Lv1 魔杖弓ⅡLv1 召喚Lv1 融合Lv1 料理ⅡLv1 製菓Lv1
[従者]
ゴーレム
[スキル]
変化ⅡLv1 NPC言語Lv1 飛行Lv7
[装備]
メインウェポン:飛行歩兵の複合ライフル(銃重視)
ディフェンウェポン:飛行歩兵の強化複合制服
▽
「狩りに行くぞ」
「良い選択だ」
「「えー」」
「なんでだよ!?」
「買い物に行きたいわ」
「ええ。買い物です」
「女性にも色々と有るのです」
「仕方ないか、町でいいか?」
「はい」
「しゃあないか、雪かきも終わったし買い物に行きながらの狩だな」
「狩りから離れなさいよ」
「そう言われても飛行狩りは楽しいぜ?」
「ああそうですか、少しは女性を楽しませなさい」
「えー」
「あんただっていつかは大人になった女性とくっつくのよ」
「めんどい」
「はぁ。家の男共って皆なガキね」
「男は大抵の場合において永遠に子供だ。アーライルの常識だな」
「コウは大人ね」
「成人が近いからな、まあ男仲間も出来たし、しっかりと教えておく」
「さすがはコウ!」
「しかし断っておくが俺も女性経験はない、何せまだ女性型だ。変な趣味は持ち合わせていないしな、少女趣味でもないし」
「・・・ああくそ、夢も希望もありゃしない」
「いつか誰かを紹介する、それまでは磨いておくのだな」
「期待しているわ。凄く期待している」
「性格を知ったら、男がドン引き間違いなしだぜ」
「私のどこが」
「そうだな。まずは嫉妬深い、直ぐに独占欲を起こす、仕事より私、家庭より私、暴力に訴えること多い、復讐には見境がない、仕返しの為には色々とやる、付き合って後悔しかない女№1の輝く星だ」
「・・・」
「その点夕霧の方はまだ好評だ」
「話したら殺すわよ」
「へいへい、一応幸せは願っているからな」
「一応はいらないわ」
「夕霧のような直そうとするところがないとモテないぜ。それにお前は少しきつい所があるからな、俺からすれば付き合いの長さから特になんだが、初めて知る男性からすればドン引きの点だ」
「寛容さが足りないわ」
「自分を少しは改善しろよ。それにすぐに結果を考える悪い所がある、人には人の長所があるが、同時に短所もある物だぜ。まあ俺の悪い所は女性を楽しませようとはまず考えない、女性を優先する事がないからだ。大切でもない物の為に時間も労力も考えない、よく女性につまらない奴と言われるが、そんな女性のために努力する道具じゃないのさ」
「知っているわよ」
「適当に生きて適当に死ぬ、それで十分なのさ、一々家庭だの、人生などバカバカしい、何故そんなものの為に自分の時間を浪費するのかさっぱりだ。共感しろとは言わないが、相手の事を努力もしないで都合よく動く玩具と考える女なんて御免だね。まあ努力したとしても無駄な事は無駄、空は海にならない」
「あんたは束縛が大嫌いだしね」
「そういう事なのさ。いつか異星に渡って適当に死ぬ、それ以上の人生は考えたくないね。まあ人それぞれ違う、俺は偶々こう言う奴だった」
「風のような生き方ね。偶には休むのもよいわ」
「そいつは別にいい、いつか道が分かれるその日まで、それで十分だ」
「酒ぐらいは出すわよ」
「おう」
「・・・アキラの事だけは聞きますね」
「怒らないでよ夕霧」
「私の事は聞かないのに」
「だって一度聞いたら口煩く色々というだろ」
「あんたは黙ってなさい」
「・・・子供の頃から一緒なのに」
「愚痴なら聞くから、ね」
「ええ。アキラは良い子です」
俺達の事もあり、姉妹はとても驚いていた、俺らは確かにいつも一緒かも知れないが、別に互いの事について不満がない訳ではない、いつも一緒だから忘れがちだが不満はいつも付き纏う、そんな俺らの絆を維持するのは別にそれぞれの想いではない、それぞれとの重ねてきた思い出だ。こいつの為なら少しぐらいはと思える相手だからこそ妥協も出来る。
最初から他人の間柄から始まったからこそのメモリーがあるからだ。
そこに美姫が微笑んでから俺に語りかける。
「アキラには懐いているのですね」
「そう見える?」
「はい。まるで鳥が仲間を労わるようです。大切だからこそ言う事を聞く、そんな風に見えます」
「まあ長いからな。習性みたいなのものだ。夕霧の方は口煩いから、一度聞くと自分好みにしようとするから、それを他人するのは特に別に、だが俺は嫌なのでいう事を聞かなくなったという訳だ」
「アキラはそんな所がないのですか?」
「無い、束縛しようしないからな、自分好みにしようとも思わない、俺を自由にさせてくれるから、なんかいう事をついつい聞いてしまう」
「面白いです」
「ああこいつは面白い奴さ」
「いえなんというか、三人の間柄にある絆という奴が面白いです」
「四人だ。時雄がいるからな、今頃フラスコ片手にコーヒータイムだろ」
「変な人です」
「まあそんな所は確かにあるが要は楓だ。二人からすれば理解の範囲外だろう。二人にとってみれば約束は守る物、楓にとってみれば所詮は一時的な空手形、重んじるもの全てが違う」
「それで」
「俺にとってみれば約束を守るのも何もかもが自由なのさ、守るのも自由、守らないのも自由、守るのもよし、守らないのもよし」
「なら大切な約束はどうします」
「可能なだけは守る、だが守れない物に固執する気はない」
「どうしてもですか?」
「ああこればかりは譲れないものだ。俺は縛られるのが嫌いだ」
「なるほどです。最初に会った時のような印象と何も変わりません」
「そうなのか?」
「はい。最初見た時に直感したのです。この人は自由が好きそうだと」
「おおそれは当たりだ」
「たぶん、それだから夕霧の事が意外だったのです。こんな人にも大切な物が有るのだと、とても意外でした」
「心外だね。大切な物位は守るものだ」
「それならよかったです」
「安心だったか?」
「夕霧から守ってくれましたから」
「まあそうだな」
「だからこそ聞かねばなりません」
「何を?」
「なぜ大切な物に数えられるのですか?」
「そうだな。一言で言うのなら暖かいものだったからだ」
「暖かい?」
「ああ」
困惑する美姫、この純白の翼を持つ少女には伝わらなかったらしい。
漆黒の翼を持つコウの方を見る。
「コウはわかるか」
「妹を守るのならそれ以外が必要なのか」
「そう言う奴だったなお前は」
「夕霧の愚痴話は終わったわよ」
「遅くなりました」
「ほんじゃ行こうか」
□
町の近く、白い雪が降り積もり、かなり歩き難いが、飛行が有るので特に気にならない、学府の学園都市を模したこの町、ヴァーチャルワールドというのに、今では数多い試験生たちが雪かきの時間だ。特に戦闘系はスコップ片手に雪かき、久しぶりの共同屋台村に来る。
知り合いのアーライルの料理人に挨拶し、大好物の弁当を作ってもらい食べる、甘くスパイシーな味わいが良い、よく考えればここから始まった。
数多い想い出が駆け抜ける、様々な人々の笑顔が蘇っては消える。
右隣にはアキラがアーライルの弁当を食べ、左隣りには夕霧が同じような弁当を食べ、真正面にはまだ姉妹の二人がアーライルの弁当を食べていた。
4名から3名となり、今は5名となった。
金髪のアキラ、黒髪の夕霧、赤髪のコウ、黒髪の美姫、黒髪の俺、色彩的にはそうかもしれないが、髪の毛の質の点から言えば様々であり、空の太陽の陽光から煌く者達も居る。
ふと思えば夏の海には繰り出していない、ここには海がないのが残念である、ただ1名ほど人格と性別の一致しない奴が居る為に揶揄うのはよくない、こいつなりに悩んでいるのだろうという事はわかる、好い友人なのだが何やら幸薄なところが親近感が持てる。
その親近感の持てる友人の妹、どう見ても清楚な美人の女性なのだが、常に何かを食べる事を考える食い物天国の頭、目的の為には色々と企てる腹黒だ。
似てない兄妹というしかなく、兄の方は武人とするのなら妹の方は食べる為に料理をするタイプだ。
アーライルの人々には色々と居るが、ここまでの兄妹も典型的という奴らしいが、ここまでにない理由の秘訣は何なのだと思う、幾ら何でも似ない所しかない。
クールな面持ちで、薄い化粧が施された綺麗な顔の美人のコウ、口紅の付いた真っ赤の口唇、見るからに女性なのだが、人格的には男性だ。地球人なら人格と性別の不一致のような奴だ。しかし顔だけなら美人さんだ。
外見は女性、中身は男性の姉妹この姉のコウ。
外見は女性、中身も女性の姉妹この妹の美姫。
変な話ではあるが、二人の仲間にも感謝はしている、二人が俺らから離れなかった貴重な仲間であり、特に美姫の温かい心にはいつも癒される。
『ボスが倒されました』
システムメッセージに全員が噴き出した。
いきなり真冬から春になり、雪かき中の者達が雪が消えて大混乱の真っただ中、厚着の4名はいきなり暑くなり苦しみ出した。
「服屋に行くぞ」
俺の言葉に4名は頷いて走って向かう、服屋で春物の服装にしてから真冬の物はアイテムボックスに突っ込む。
「誰だ。こんな迷惑をするバカは」
「姉さん、たぶん三名じゃないかな」
「ああ。ホーリー達か、彼奴ら」
「レア狩りだしね。最近見かけなかったからもしやとは思ったけど」
「あれですね。あの三名を見かけたら礼を言うべきか文句を言うべきか悩みます」
「雪かき地獄から解放されたから感謝すべきとは思うな」
「スカオ、言うのもなんですがとても暑くなったのですよ、真冬の恰好で春先に現れるぐらいの辛さです」
「俺は冬より春が好きだから感謝するぜ」
「全く、男性は楽かもしれませんが女性はそう簡単にはいかないのです」
「そいつは女性に生まれた事に文句を言うしかないな」
「一度話し合う必要がありますねスカオ」
飛行して逃げ出した。
□飛行場
真冬から春になり、全体的にがらりと変わり、雪がなくなった事で重労働から解放され喜ぶ人達に、雪合戦の雪がなくなった怒る子供達。
帰宅してから裁縫師たちが春物の服を作り配っていた。
真冬の装備は回収され、それに応じた装置も機能を止め、急上昇した気温のおかげであちらこちらで暑いの声が聞こえる。
祭りの翌日、何やら久しぶりの事だったので共同屋台村も大忙し、いつもの席に座り祭りの日限定料理を食べながら、今回のVIPの三名に酒を酌んでいた。
「やるじゃないかホーリー、ガーリック、リール」
「ホリさんも頑張ったよ~ガーリックが冬は嫌だって暴れるし」
「飯が不味くなる季節が嫌なんだ」
「やはり季節は秋よね。収穫がいい感じ」
散々騒いでから翌日、久し振りの飛行団の訓練もあり、飛行歩兵達は複合ライフルでの訓練に明け暮れる、その中、姉妹が別々に行動する姿に周りは驚いていた。特にアーライル系の人々は茫然としていた。
二人の事もあって、アーライル系の人々から相談を受ける様になった。
主に家族の問題についてそれぞれの希望を聞いて打開策や折衷策を提案し、数多いアーライル系の問題を解決した。
この事か少しずつ広まり、毎日のように相談を受け、毎日のように解決していた。
□3月5日№32、飛行場。
アーライル問題も殆ど解決し、飛行団もついの空の探索に向かう。
新人も増え、飛行歩兵の方は新入り達の訓練に忙しく、特に女性型ながらも人格が男性、男性型ながらも人格は女性等の不一致の者達は一纏めにしていた。
地球の人々からは色々と困る、他の母星の者も性別が選べるところはなく、WHO人に対してはアーライル系の問題から、外見通りの性別ではない事が判明し、あちらこちらで混乱が生まれる。
しかも成人に達したWHO人は、性別を自由に変更できるために、女性型、男性型に代表される基盤とする性別でしかないのだから、性別の問題についてはどの組織も広く知らせる事となる。
楓の方は男性型の人格は男性の為に、色々と苦労したのが伺える、何故アーライルの人達が女性を選ぶのかは、主に10代後半での恋愛観によるものが大きい、好きになった人の為に性別を変更する人が多く、たまたま女性に偏る傾向にあった。
この問題についての各異星の組織より、調査が行われ、飛行団の探索は延期され、何かと問題の多い人々がWHO人だ。
彼らは閉鎖的な生活が多かったので、色々と問題が多く、レア狩りのホーリーのように女性型の女性、しかもこのホーリーは武器タイプという人々で本来は剣で有ったり、槍で有ったり、銃であったりする人々だ。
この為に試験生の大半がWHO人についての事には真剣に考えていた。
殆どの種族が性別は固定に対し、WHO人の変更できるようになる、またタイプという民族に該当するものがあり、これにより様々な所が違う。
アーライルタイプのような翼の生えた人々、武器タイプのような本来は武器の人々、兵器タイプという本体が兵器の人々、ニクシータイプのような水中で生活する人々、ヒュムタイプという一般的な人々、エルフタイプという魔法に適応した森に住む人々、ドワーフタイプという山に適応した人々。
数多い特徴がある彼らは宇宙の中でも極めてレアな存在であり、ユニークな人々でもあり、数多い問題を抱える人々でもある、また異星人の多くを占める試験生たちでもある。
彼らは生まれながらスキルを持ち、この試験を受けるのはスキルの初期化を意味し、人生の中でも異星に渡る為にこれを受け入れた人々が試験生たちなのだ。
姉妹の問題を解決し、アーライル系の人々の問題を解決し、これを買われてWHO人の問題も解決に力を貸し、潜水歩兵の指揮官のマーベック、副指揮官のスピアラーの問題も解決したので、時間は経ちすでに夏となっていた。
□3月5日№125、飛行場。
7月に該当する初夏、余りの猛暑にもう我慢できずに開発チームに頼み夏用のリングを作ってもらい、このおかげで涼しくなりアイスケーキを食べながら飛行歩兵の事務作業を行う。
装飾スキルを持つ者達には直ぐに配られるが、持たない者達からは改善してくれと頼まれる、その筆頭たちが姉妹で有り、暑すぎると訴え、仕方なしに冷房が作られて配備された。
飛行団の飛空艇も今までの小型飛空艇から、大型まで拡大し、これにより造船師達も忙しく働き、量産化に向けての様々な調整が行われていた。
飛行団も大所帯になり、旧飛行場もフル活用されるも、まだ足りずに仕方なしに空港が建設されていた、同時に外部用の為の区画も整備され、一番の大所帯の飛行歩兵部隊は特に確にも多い為に、中にはテント暮らしの者もいる。
潜水士達の港も拡張工事で忙しく、空の港も水の港も忙しく、抹茶味のアイスケーキが美味い。
「スカオ隊長」
飛行団の飛行歩兵部隊の事務を担当する事務官の長が嬉しくない物を持って現れる、見たくはない幻覚に悩まされる、上半身が隠れるほどの書類だ。
置かれる書類に、男性型の人格が女性の満が、悪夢のような手紙を置いた。
書かれる文字は見たくはないが、見るしかない為に見ると今日中の文字が書かれていた。
「半分に減らすのに苦労しましたよ。じゃ」
呆然している俺に、仕事を終えオフの時間に向かう相手を見る。
実働部隊の指揮官達にも悪夢の束が置かれる、半分に減った事から感謝すべきであるが、オフ会に行ってきますという挨拶に殺意が芽生える。
「燃やそう」
俺の言葉に殆どの者が頷きかけるが、コウが真面目な顔で首を横に振る。
副官に無理と言われるその根拠は、書類の紙が特殊な素材でできている、前科から学んでらしい。
「鬼か」
初夏の初日はひたすら仕事、好きでもない事務仕事を精一杯片付けた翌日にも増加し、軽く事務職の者の仕事量を聞いたら、10倍ぐらいと聞いてこいつらは異常な奴らと認識した。
週末の土曜日、飛行歩兵の体験会だ。
前の様な誰も来ない場所ではなく、そこそこの人が集まり指揮官達は久し振りに飛びながら説明し、特に開発チームに関する問い合わせが多く、何せ飛行に関しては数多い恩恵がある為に興味がある事が多く、それらから興味を示す者が多い。
開発チームも統合により比較的楽になり、菓子と飲み物が両方とも味わえる時間が得られた、と嬉しい声が聞こえる。
ホーリー達も遊びに来て、つまみの漬物を食べながら様々な武器で遊びだし、担当者は戦々恐々だ。
料理人たちによる飛行食の食事会は大好評、特に和食系の弁当はその芸術的な料理に多くの女性が集まり、近くの製菓担当者が作った飴細工には売り切れが続出する。
アーライルの家庭料理に関しては好みがあるのだが、WHO系の人々が懐かしいと言って購入していた。
逆に不人気なのが防具コーナー、地上系の人々からは性能が不満らしく、文句が多く開発チームも自信があったのにと愚痴っていた。
アーライルの至宝と言われる楓は、主に学術発表会で飛行付与の基礎研究の公表を行い、飛行付与により新たのスキル学の発展が喜ばれていた。
騎兵も、機甲兵も問い合わせが多く、好評なのは良かったが、好評になり過ぎて困っていた。
特に騎兵の生物学に関する事には数多い事が言われており、新たな生物の誕生とも噂されていただけに、地上系の戦闘系に属する人々は興味津々だ。
機甲兵の方は操縦も整備もするために大量の案件を抱え、隊長のブロードも、ミツナとの時間の為にこれを握り潰し、発覚するのは当たり前で、当然に部下に怒られていた。
飛行団の造船師たちの方も、飛空艇に関する話が大きくなりすぎてどれから説明するか悩まし気であり、基本となったスカイドンキー級の説明から始める事で落ち着いていた。
開発チームの裁縫師たちの作る服、非常に専門的な素材で作られているために地上系の人々からは信じられない軽さと丈夫さに、詳しく説明する担当者も専門的な事が多過ぎて困っていた。
空港の建設も休暇も有って一休みであるが、工事関係者は興味が強すぎて混乱を来たし、飛行歩兵の鎮圧チームが要請されて、飛行歩兵の作戦を説明するときに早く来いと要請され、仕方なしに作戦説明を中断しこれを鎮圧していた。
騒がしく忙しい土曜日の終わりに、待ちに待った飛空艇の乗船会、飛行中のエネミーの説明には戦闘系に属する人達からは質問が多く、特に銃使い達は興味がある。
常にダンジョン潜りの為に、飛空団の行う空の探索には興味が湧くらしく一般公開の問い合わせが多かった。
潜水士達の方も大盛況だったために数多い新人を獲得し、問題となるのは常に居住であった、何せ潜水艦などの空間は狭い、飛行団の方も空港建設などで困っているために援軍は無理であるので、潜水艦造りが大変であるそうだ。
□3月5日№156、飛行場
真夏の真っただ中の8月に該当する初日、空港が完成し、今度は転居の為に忙しくなり、何せ一戸建ては無理ではあったが、冷暖房付きの個室が与えられる。
海賊団の方も殆ど空賊団になってしまい、時々の里帰りの度に故郷の変貌についていけなくなっそうだ。
それを不憫に感じた飛行団より潜水用の湖が作られ、海賊たちは大喜びで泳いでいた。
若い人々しかいない為に、真夏という事もあり湖畔には数多い飛行団の者が居た。
俺達PTも水着を着ての水遊び、スタイルが悲しいアキラは可愛い系のビスチェ、スタイルの良い夕霧はビキニ、人格の男性のコウは妹との相談の上に何故かフリル、妹の美姫の方はオフショルダーのワンピース。
男性の方は特に変化のない短パン、水遊びは久し振りになのですぐに潜って泳ぎまくっていた。
エネミーが居ない為に、大規模なプールのような淡水湖で有り、ここは観光名所に決定されるような場所となった。
遊びに遊んだ後に、腹が減り過ぎて目が回りかけながら生還し、夕霧がスキルで作った弁当を食べ、余りの美味しさに涙が溢れる。
「遊んだ後は仕事よ。あんたそれを分かっている?」
「仕事は当座は延期だろ?」
「あー知らされていなかったわけね。まあそうよね。ただでさえ仕事の多い歩兵達には酷よね。会議よ」
本気で転職を考えるような仕事だ。
遊んだ後の会議、歩兵達の顔は天国から地獄に突き落とされるような悲惨な顔で有り、事務長の方も気の毒そうに見ていた。
今までの整理や解決した問題の他に、地球情勢の整理、特に日本の防衛のためには試験の合格後忙しくなるために、船とな飛空艇は欠かす事の出来ない物であり、造船師達の長も難しい顔で一つ一つの確認だ。
潜水士達も恐らく潜水艦の建造の為に忙しいだけではなく、来ることは確実な未来の為に、どのような潜水用の兵器が良いか迷う所だろう。
飛行騎兵、飛行機甲兵も真剣な顔で確認し終え、試験の後のスキル選択もあり、ここからの素材は持ち出せない為に、全てが最初からのやり直しだ。
農園も、牧場も難しい顔で対応する素材や必要となる動植物の確認を行い。
開発チームも設計図の一つでも持っていければと悩まし気だ。
性能と生産性の高さや、簡略性、堅牢さや整備性能、武装面の性能、これらにかかる初期投資額、維持していく維持費、今後の事もある修理費用、膨大な案件を抱えるのは何処も同じである。
鑑定士の長も難し気に一つ一つの性能を調べ、リアルの場合には困難になる事は簡単に予想でき、何せ一括鑑定がなくなるからだ。
現在の状況は例えるのならイージーモード。リアルはベリーハードだ。
家事スキルのあるメイド隊の指揮官も難しい顔で一つ一つの状況を確認し、会議においての数多い案件の中でも代表である楓の仕事量は他の比較にはならない数だ。
合格した後のスキルの初期化、既に取得する予定のスキルはあるが、大幅な弱体化の為に厳しい戦いが待つ。
飛行団の今後の事もあり、リアルでの学府に来たらすぐに空港建設だ。
この予定の為に工事関係者は設計図の一つのミスも許されない為に、何百というチェックの項目に、これでは足りないと更に追加する。
比較的な楽な歩兵達、スキルの方も簡単な武器、装飾、飛行の3個だ。個人スキルは好みによるものと決定してある、難しい事は無いように思え戦いにおいては主力となるので指揮官達は難しい顔でチェック項目から詳細設計図まで確認する。
ヴァーチャルワールドでの試験はそれほど難しくはないが、合格した後の戦いは恐らく激戦だ。それもこちらは初期化の為に全て覚えていくしかない。
歩兵達の指揮官たちの中でも全体指揮を取り行う俺は比較的暇な立場だ。
元々数多い武器の訓練を受けていた事もあり、対応はできるが、飛行歩兵の戦術に関係する基礎的な研究も行い、他の連携に関係する作戦研究、飛行歩兵の典型的な作戦は飛行による突撃作戦、接近しての撃破である。
何せ格闘戦はどんな兵科も真似できないレベルにあり、飛行歩兵との格闘戦を選択する奴は他殺志願のようなものだ。
特に飛行歩兵のキャスター、空中より地上に向けての、範囲系に属するスペルによる破壊活動は、驚異的なレベルにありこれを防ぐ術はない。
飛行歩兵の基本的なタイプである近接、格闘戦に特化されたタイプとの空中戦は、どの兵科も選択しない物であり、飛行歩兵に接近されるのはこの近接タイプの事がある。
比較的マシなのが銃使い達、空中からのアウトレンジ射撃、ただ狙撃に特化された狙撃手との戦いは何処も怖れる。
かつての飛行団では考えれなかったが、現在の飛行団はその驚異的な戦闘能力により畏れられる物だ。
日本防衛での基本となる飛行団、その主力となる飛行歩兵達の責任は重く、一つの作戦ミスも許されずに動く事となる、作戦の一つの失敗は日本防衛の失敗であり、このダメージからの回復は難しい物が有る。
この為に飛行団の飛行歩兵の指揮官達、この責任は重く、0からの飛行歩兵の戦術、作戦の研究は絶対に必要な物でもあった。
副官であるコウは、近接タイプの指揮官も担当し、飛行団最強の剣士でもある、困難な作戦が多くあげられ、特に日本の九州の対馬防衛には心血を注ぐ。
朝鮮半島からの侵攻だけは絶対に阻止しなければならず、この上陸に対する作戦の基本となる潜水士達の妨害作戦も視野に入る。
また北の海に広がるオホーツク海での交戦、この主力となるのが飛び道具の専門家たちの射撃部隊、この指揮官の一番豊富であり、その中でも有力なのが美姫の弓師部隊だ。
南の海には飛行歩兵の最強部隊であるキャスターたち、その指揮官たちの中でも複数の系統を操る零、最強のキャスターというのには若いが、空中、地上、海上においての範囲系に属するスペル研究の第一人者だ。
現時点での尤も危惧すべき方面が太平洋、この方面に向けては潜水士達の主力部隊が居座る予定であるが、最大の激戦地となる。
他の組織よりもすでに基礎的な防衛構想はあり、飛行団もこの支援を受け防衛を行う、特に異星人の生産系組織は、地球の日本の防衛は絶対に行うべき事であり、これに対する防衛構想、特に地上戦に行く予定の箇所への構想は、長い間に練られていた。
これらから分かる様に試験の後の学府は、全試験生が参加する総力戦となる。
困難な戦いの待つ間に、この試験を通し少しでも被害を減らすべく動いている。
騎兵達も愛騎が消えるのが辛いが、生物学者たちによる飛行騎獣の製造による、防衛構想に対する役割は各地の戦線のやや後方からの支援である、何せ歩兵に比べての航続距離や最高速度のレベルは驚異的な物が有り、時間当たりの移動効率の高さには他の兵科からも羨む様なレベルだ。
対応する装備も他の兵科より金がかかり、最も時間のかけられるものだ。
最も高い頻度での出撃となる騎兵部隊、ネックとなるのがまだ見ぬ飛行騎獣達である。
各戦線に対する支援だけではなく、他の地域への偵察活動、他の地域からの偵察妨害による警戒任務、騎兵の中でも重騎兵に課せられる作戦の基本的な物は真正面きっての突撃ではなく、侵攻する相手軍に対するその主力への破壊活動である。
兵站の破壊なども視野に入り、騎兵の中でも重騎兵への任務の多さには、他の兵科よりも困難過ぎるという意見もあるが、指揮官であるハイケルは欠かす事の出来ない任務であると判断しこれを決定した。
騎兵の中でも比較的楽な役割の軽騎兵、各地への護衛任務も多く、輸送護衛の基本となるのがこの軽騎兵だ。
快速自慢の軽騎兵による突撃は、どの兵科でも真似できない完成度でもあり、戦場で最も頼りにされるのが騎兵たる所以である。
初回の戦いには参加できない機甲兵達、他国への爆撃任務が主力となり、地球全域での破壊活動に参加する、その基本となるのが飛行団の飛空艇であり、相手軍の施設破壊が基本となる任務だ。
機甲兵達も一つの決断を下し、個人スキルに関しては機械製造が決定され、元々整備の仕事もあるので、これにより機械工学に関する造詣を深める。
機甲兵達への基本的なる相手は自立型の機動兵器、この主力となる恐れのある次期主力機候補、この解析は当然ながらまだ無理ではあるが、既に詳しく知っていた試験生による開発している対無人兵器への妨害装置、他の通信装置への情報破壊と同じ要領での侵入が検討されている。
十代の面々により日本防衛構想、及び反攻作戦等に挙げられる軍事作戦は、すでに基礎を終えつつある。
視野に入るのは軍事の上位に位置する政治、この基本となる外交分野である。
各所による地球文化に対する研究、特に政治的な孤立をする日本の現状を改善する為には、軍事的なレベルではなく、外交により近隣諸国への協力、スキル生産により大量の支援である、戦うならば妨害し、軍に対しての破壊を行い、これらから相手が採用するのは必ずの補給である、これに合わせてのスキル生産物資による相手軍の懐柔を念頭に置いている。
地球の生産系を束ねるロウ達、交渉スキルの稀少性を理解し、これを基本とした外交戦を展開する予定にある、敵がいるのなら味方にすればよいというのがロウ達の基本となる考えだ。
しかしいきなりは無理である為に、予定される開戦の前までに飛行団、潜水団の二つは防衛を整える必要があり、単純な破壊活動だけではない事が多い。
これらの計画は全て暗記する必要があり、対応する任務各所の全ての情報を常に覚えている。
会議の難しい事の全てを、記録したデータも公開され、飛行団も決定した項目のチェックに入る。
そうして時間が過ぎた。
□3月6日№1、空港。
レア狩りの三名により、ボスが再び狩られた翌日の仕入れ祭り。
共同屋台村での集まっての祭り、明日で7日、一週間の過ぎる前であった。
飛行団開発チームの裁縫師長のアキラ、飛行団料理長の夕霧、飛行団の飛行歩兵隊長の俺、飛行団の飛行歩兵副隊長のコウ、飛行団の飛行歩兵弓師部隊指揮官の美姫。
この5名と酒を飲むレア狩りの三名、本来なら大戦力でのボス狩りを成功させるのだが、この三名は稀なまでの戦闘能力を持ち、たった三名で成功させていた。当然のように勧誘の誘いが多過ぎて、逃げるようにここに来ていた。
「一応聞くが、そんなに死にたいのか?」
「ホリさんは暇が嫌いなのだ~強い獲物と戦うのが喜び~」
「単細胞の狩猟民族が」
文句を言いながら酒を注ぐ、ホーリーは生姜の漬物のガリをつまみに酒を飲む。
エルフの二人も酒を飲みながら新作の漬物を試し、HITな物はガリのような歯答えのある漬物らしく、タクワンもお気に入りの一つだ。
農家の代表も漬物を持って勧め、受け取ってからボリボリと食べていた。
稀な戦闘能力を持つ三名は戦闘系でいえば英雄のようなものだ。
戦闘系全ての戦力を持って倒すようなボスを、たっ三名で倒せば、その名の方がどのようなレベルの物か想像に難くない。
WHO人の中でも高い戦闘能力を持つ武器タイプ、この中でも英雄レベルの戦闘能力を持つのが、凛々しい金髪の少女のホーリーだ。
飛行団もこの珍妙の三名は勧誘しない事が決定している、この三名は気楽な狩猟生活が好きなので放置する予定にある。
異星人の生産系を束ねるタスクも、この三名の信じられない戦闘能力には調べたがっていたが、三名が嫌がるのでこれは延期になった。
「で、ホーリーとしては人格の方は女性だったな」
「そだよ~」
「どうすんだホーリーは、このままだと3月も終わり、狩りが出来なくなるぞ」
「一般公開されたら空に行く~、その後は海~」
「自由だな、縛られる事もない自由な風だ」
「スカオは~」
「俺は飛んでいるのが好きなんだ、飛行歩兵隊長はついでだ。本来なら自由気ままに空を飛ぶかが、可能ならばそのまま何処かに行きたいな、ただ」
「ただ?」
「学府は地上にあるんだよ」
これにホーリーは目を大きく開いて丸くし、エルフの二人も大丈夫かこいつと言った顔だ。言葉を意味するのなら、空にあればよいなと思うが、基本的に施設は地上の置かれるものだ。こればかりは常識的な物である。
「やはり施設の基本は空に置くべきだと俺は思うね」
「どうやって~?」
「飛行石で浮かせるのだ。それなら完璧だ。やはり場所的には太平洋なんかも悪くはない、海的なら南西諸島もいい、いっその事、日本海に置く案も悪くはない」
「色々と不便だよ~?」
「飛べるから問題はない」
「飛行団以外は喜ばないよ~」
「器の狭い連中だ」
「そうかなぁ~」
「まあ農業的な事で無理だがな」
「よかったぁ~美味しい生姜と大根が作れる~」
こいつらの生命線の為に仕方がないもので、えらく日本贔屓の三名だ。
この三名の夢は最高の漬物を作る事、その手始めに日本で勉強して漬物を学ぶ。
最近の流行はピクルス、酢漬けのキュウリをボリボリと食べる。
三名にとってみれば地球はまさに宝箱、偉大なる漬物を生んでくれた母なる星だ。
普通の人とは感性が違う為に誰も突っ込まないが、各所より専門的な支援組織もあり、料理人たちも祭りまでに準備する。
決して悪い奴らではないが、人と違う価値観に生きる為に理解し辛い。
ちなみに副菜は米だ。スープの方は概ね味噌汁だ。
何か違う気がするが、農家や料理人たちが話し合い栄養価は調整されるので気にしない。
もしリアルでこいつらを放置すれば、永遠に漬物ばかり食べるので、放置はする事は出来ない、この結果、色々な生産が協力する取り決めだ。
知らないのはこの3名だけだ。何せこのPTのみでボスを狩るような最強の狩猟集団で、全戦闘系と対峙しても生きていそうな連中なのだ。
エルフたちも、同族の貧し過ぎる食生活も有って、この食べ物天国での暮らしを満喫している、何せエルフ料理を食べた他の種族が、ドン引く様な激マズ料理で暮らすような連中だ、いかにここが天国なのかはよくわかる。
この為にエルフ料理は世界一不味い飯の代名詞だ。
その為か、エルフの料理人は皆無で、他の種族の料理人と組む事が多い。料理人たちもエルフの悲惨過ぎる食生活には深く嘆いていたので特に問題はない。
そんなエルフたちの主な飲み物は水、正確には唯一の飲み物がただの水、三度の食事も水、スープ類は一切なし、紅茶も、ソフトドリンクもない、聞いた異性の人達が同情するのは当たり前だった。
どうしてこんな貧しい食生活で生きていけるのが、不思議に思われる人々がエルフだ。
エルフの宿敵の竜、酷過ぎるエルフの食生活には噂にしていたらしく、一度食した竜が余りに不味さに死んだとも言われる。
宇宙種族中でも進んだ文明のドワーフは、このエルフの食生活だけは受け入れ難く、長年抵抗していた。このためかエルフは何かと人気がない。
そんなエルフたちは主に料理人と組むが、特にWHO人の料理人たちはエルフだけには無銭飲食を許可している、エルフを見たらまずは菓子を勧めるのが礼儀とも言われるほどだ。
エルフタイプのWHO人、この人々は同じエルフたちに同情以外何もなく、見た目も同じなのにと嘆く、色々と違うが、森の惑星のエルフたちは試験が終わり、学府での生活が終われば、一人残らずWHO惑星の森に移り住むが満場一致で可決された。
色々と進んだ文明のエルフではあるが、食生活だけは原始の頃と同じだ。
これを知った食い物天国の美姫は泣いていた、酷い生活だと。
地球人でもエルフの森の惑星に住む事だけは断固として拒む、見た目が良いとかそう言うレベルではなく、毎日の食事が水とただの品種改良もされていない野菜だけ、こんな生活なら地球のアルバイトの方が幸せな生活だ。
とある人が、このエルフの人達に何が幸せなのかと素朴な疑問を聞いたら、誰一人答えられなかった、正真正銘にエルフは食生活の酷さから幸せが感じられなくなってしまっていた不幸な人々なのだ。
この不憫過ぎる人々の、目の前にいるエルフ男性のガーリック、エルフの中でもエルフの変革を考える男ではあったが、今は石頭のエルフたちの事は忘れ、今の幸せな時間を楽しんでおり、長い時を生きたエルフはやっとの事で幸せを感じられるようになった。
いつの日か、この友人の惑星に行き、なぜエルフは幸せを麻痺させるようなことをするのか、それを聞かねばならない、何らかの理由があるのは明白であった。
何の娯楽もないエルフの惑星、唯一の楽しみのはずの食事すら美味しくない水と不味い野菜、高い文明を誇っても生活に対する何の喜びもない、金を受け取っても使うのは芸術品位、こんな社会でよく人々が暮らす事が出来るのは奇跡的なレベル。娯楽も何もなければ、経済が上手く機能するのも奇跡的な物だ。
そんな社会に若者が喜べる環境の一つもなければ、良く栄えるのが不思議に感じない者はいない。
この友人がエルフの生活に嫌気がさすのも無理はなかった。何せ笑った事もこの試験が久し振りという有様だ。幸せ指標というものがあるのならエルフは最低ランクに位置するような生活がエルフの生活という奴らしい事に、疑問に感じない若者が入れればそう言う奴は別の楽しみを見つけたから言える事だ。恐らく芸術、もしくは技術、学術などに目覚めたか、それ以外を認めない生活に馴染める者しかエルフは受け入れないのかもしれない、それを考えれば制限のない自由な生活がどれほど楽しいものか、この友人はよく知っているのだろう。
意外にエルフたちはこれが狙いなのかもしれないが、大半の者が馴染めないとしか思えないような生活でもある、知的のみしか認めない生活、それ以外の全ての排除、惑星の発展の為にはこれを強いるような考えに従うしかなかった生活、酷い圧政のような生活だ。
そんなエルフたちの教育文化も馴染める者がどれほどいのか懐疑的だ。
エルフの生活を行う中で、楽しみを知性の求めるしかなかった文化、それがエルフの発展の礎であるのなら、その先に行く目的は一体何なのか、なんにせよ、こんな文化を好む様な奴は殆どいない事は間違いない、他の種族との仲が悪い最大の理由は、別に知性ではなく、傲慢な性格でもなく、多様性を一切認めようとしない文化によるものとしか思えなかった。
森が広がる、その中で変化というものを認めようとしないエルフの生活、これによる発展か、変化への厳しい制限、自分達の好みの文化しか認めないのなら、どうしてエルフたちが一つの文明を築けるのかとても疑問だ。一つの文化のみに執着する事によりまるで変化というものを排除し、文化の発展を制限し、自分達の安泰のみを考える古ぼけた政治によるものなのかも知れない。
恐らくエルフの政治家たちからすれば文化の制限は、自分達の繁栄の為の犠牲なのかもしれないと思うと、あるのは秩序の為には99を犠牲にしてもよいという恐ろしい考えの窺える。
必然的にエルフの政治家たちの権力は盤石となり、何せ変化というものを人質に取るのなら、その政治的な権力が盤石のなら、痛くも痒くもないからだ。若者が吼えたところで何の意味もない、若者の文化を一切認めなければいい、それだけで十分だとしか考えないのは、自分達の趣向のみに従えという事にもなり、それでは単なる道具でしかないような生活らしい、頂点に立つ政治家のみが変化的権利を持つ文明と言えばよいのかもしれない。
これに魅力を感じるものは皆無としか思えない生活、それがエルフの生活らしい、これを惑星誕生より永遠に行う長老たちの政治というらしい、地球人では絶対に馴染めない政治思想の中にある。共産の方が遥かに理性的な社会が維持できる、そう言う生活に満足できるような若者は皆無だっただけの話でもあった。何せエルフの若者全員がこの試験に居るのだから、エルフの長老たちも思わぬ足がすくわれる結果に繋がるのかもしれない。