武器を作ろう!
ヤツを放置してから約1週間が経過したこの日、僕はあることで悩んでいた。
鉱山で働かせたのは良いとして……その金属をどう加工するかである。
鍛冶屋で修行させることも考えたけれど、修行を終えるまで待つことは到底出来ない。
この小説を書き始めて気が付いたことだけれど、ヤツの成長には現実世界と同じく[時間]が必要なのだ。
そう考えると、この小説を書き終えるまでに何年必要なのかと……気が遠くなる。
「うーん……どうしようかな」
そして、数時間悩んだ結果……若干どうでも良くなった僕は、静かにノートパソコンを閉じようとした。
「おい待て! どうでも良くねーだろうが!」
「えっ何? 居たの?」
「居たの? じゃねーだろうが! どんだけやる気ねーんだ、このクソ作者!」
「だって、お前のことで悩むのって、正直……面倒くさいじゃん?」
「面倒くさいって言うな! お前が俺を作ったんだろうが!」
「そう言われてもな。 普通さ……勝手に喋ったり、メシ食ったりするとか思わないじゃん?」
「うっ……」
「大体お前さ、すげー生意気じゃん?」
「あ、いや……」
「文句多いしさ、僕に失礼なことばかり言うし」
「も、もうそれくらいに……」
「頭悪いし、僕が指示しないと何も出来ないし」
「……頼む、もう許してくれ」
「で? 何か文句でも?」
「い、いえ……ありません」
「そう? 言いたいこと言って良いんだよ?」
「ぐっ……」
ヤツを散々からかって、少しストレス解消をした僕は、本題に入ることにした。
「ストレス解消かよ!」
「黙れ! 話が進まない」
「……は、はい」
「それで金属は?」
「……食糧庫にあります」
少年は数日間鉱山で働き、給料として大きな塊の金属を貰った。
それはとても不思議な金属で、羽根のように軽かった。
少年は貰った金属を、食糧庫に保管することにした。
「食糧庫なら丁度良いな」
「へっ?」
「そこに圧力鍋みたいなのあるだろ?」
「う、うん」
「その圧力鍋に金属と水を入れて、火にかけろ!」
「は、はい?」
「とりあえず、言われた通りにしやがれ!」
「う、うっす」
不思議な金属を加工するために、少年は金属を食糧庫からキッチンへ運んだ。
そして、キッチンに置いてあった圧力鍋のような鍋に、金属と水を入れて火にかけた。
「冬至さん?」
「ん? 何?」
「あれって金属なんだよね?」
「そうだけど?」
「あんなに軽いのに……武器になるの?」
「は? 魔界のそこそこレアな金属だから、大丈夫に決まってるじゃん!」
「……マジか。 俺、魔界へ行ってたのか」
「お前……気付いてなかったのか? ツノとか生えたヤツ居ただろ?」
「……言われてみれば」
「流石に……アホだな」
「アホって言うな!」
「おいおい、鍋の火が少し強いぞ! 弱火で煮込め!」
「お、おう……」
少年は、グツグツと音を立て始めた圧力鍋の火力を弱火にし、さらに煮込むことにした。
「とりあえず、2時間くらい煮込め」
「う、うっす」
「それで……煮込み終わったら、後ろの機械の穴に流し込め」
「機械?」
しばらく圧力鍋を眺めていた少年が、ふと振り返ると……腰くらいの高さの、四角い謎の機械が現れた。
機械の上部には穴があり、その横には[武器作れるくん]と書かれたラベルが貼ってあった。
「武器つくれるくんって……」
「うるさいっ! 名前なんてどうでも良いのさ」
「そうだけど……」
「じゃあ、僕は寝るから!」
「え? 冬至さん? 冬至さーん!」
ヤツの言葉を無視して、僕はノートパソコンを閉じた。