表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

自主性を持て!

「ゴゴゴゴゴ、グオングオン!」


 地鳴りのような轟音で目が覚めた僕は、ノートパソコンを開いた。


 聞き覚えのあるこの音は……ヤツの腹の音だ。


「うるせぇよ!」


「ぜぇぜぇ……やっと来たのかよ」


「何? ずっと素振りしてた訳?」


「お前がさせてたんだろうが! このクソ作者!」


「こいつまた言ったよ。 またクソって言ったよ」


「クソにクソって言って何が悪い!」


「ほう? そんなに降ろされたいのか?」


「く……」


「大体さ、お前って僕の意思に関係なく勝手に喋ったりするよね?」


「まぁ、そうだな」


「それってさ、お前に意思があるって事だよね?」


「確かに……そうなるな」


「自主性って言葉知ってる?」


「自分で判断してどうのこうのってやつだろ?」


「だったらさ……腹減ったら勝手にメシ食えコノヤロー!」


「……確かに」


「疲れたら休む、腹減ったらメシを食う、面倒くさいからそれくらいは勝手にしてくれ」


「お、おう」


「それと……食糧庫の隣に脱衣所を用意するから、定期的に風呂に入れ!」


「わ、わかった」


「脱衣所に風呂場とトイレがあるからな!」


「ど、ども」



 素振りを終えて疲れ切った少年が床に座ると、突然……食糧庫の隣に新たな扉が現れた。


 少年が扉を開けると、そこには脱衣所があり風呂場とトイレが別々に用意されていた。


 素振りでかなり汗臭い少年は、食事の前にお風呂に入る事にした。



「そうそう、着替えはタンスに入ってるから適当に着ろ」


「う、うっす」


「それと、食糧庫の奥にキッチンも作っといたからな」


「……今日は怖いくらい優しいな」


「優しい?」


「至れり尽くせりじゃないか……」


「何を勘違いしてるのやら……まとめてやらないと面倒くさいだけだ」


「流石……クソ作者」


「クソクソ言うな! 抹殺するぞ!」


「サーセン」



 風呂から出た少年は、脱衣所の鏡で自分の体を眺めた。


 走り込みと素振りのおかげで、かなりたくましくなっていた。


 少年は部屋に戻り、タンスから新しい服を取り出して身に着けた。



「お、おい……このシャツは何だ!」



 少年が着たシャツには、大きな文字で[ドM]と書かれていた。



「あん? 普通のシャツじゃないか」


「ドMって何だよ!」


「何? 気に入らないの?」


「気に入る訳ないだろ!」


「他にもあるぞ? 下僕とか、家畜とか、クソガキとか」


「鬼かっ!」


「良く似合ってるじゃないか」


「悪魔め……」


「はいはい、たわむれはそれくらいにして、さっさと飯を食え」


「くっ……」



 新しいシャツに満足した少年は、食糧庫の食材を手に取りキッチンで適当に料理を作った。


 少年は、何度か失敗の末出来上がった料理を部屋に運びテーブルに並べた。



「クソマズそうな料理だな……」


「料理スキルとかないから仕方ないだろ……クソ冬至!」


「はい、5点減点」


「減点だと……」


「そう、減点」


「そ、それ……減点されるとどうなるんだ?」


「んー、それは僕の気分次第?」


「ま、マジっすか」


「マジに決まっているじゃないか」


「う……この人マジだ、マジの目だ」


「さて、そろそろ本題に入りたいのだが」


「本題?」


「そこそこ鍛えて強くなったはず……なので冒険に出そうと思うのだけど」


「おっ、ついに冒険か!」


「まぁ待て、肝心の武器がないと敵と戦えないだろ?」


「た、確かに」


「流石に僕も、素手で戦えとは言わない」


「うんうん」


「そこでだ……これからお前には鉱山へ行って貰う!」


「へ?」


「だからさ、武器の材料の金属を掘るのさ」


「……えっと冬至さん? 武器とかも簡単に用意出来るのでは?」


「だってお前ってさ、ありがたみとかわからないじゃん?」


「じゃん? と言われましても……」


「それに、苦労して作った武器なら大事にしそうだし」


「は、はぁ……」


「なので、これから毎日8時間、鉱山で働け」


「……マジか」


「朝8時から17時までで、休憩は1時間な」


「は、はい」


「何度も言うけど、メシと風呂と睡眠は自分で決めてやれ!」


「……はい」


「それと、これ渡しておくから」



 少年が食事をしていると、テーブルの上に突然、謎のリモコンが現れた。


 リモコンには……液晶パネルの他に、青と赤と緑の3つのボタンだけがあった。



「リモコン?」


「そう、大事な話するから良く聞けよ」


「まず……青いボタンは、現在の場所を記憶する」


「場所の記憶?」


「とりあえず最後まで聞け」


「……はい」


「赤いボタンは、部屋に戻る扉を呼び出す」


「なるほど」


「これから冒険に出た時、部屋に戻ることもあるだろ?」


「確かに」


「まず、青いボタンでその時の場所を記憶させる」


「ふむふむ」


「それから、赤いボタンで部屋に帰る」


「ふむふむ」


「で、次に部屋を出ると……記憶した場所に行ける」


「それは便利だな」


「それと……緑のボタンは、過去に記憶した場所の選択が出来る」


「ふむふむ」


「複数記憶した場所がある場合、緑のボタンを押すと液晶にその場所が表示される」


「なるほど」


「緑のボタンを何度か押すと、行き先が変わる仕組みだ」


「何だか凄いな……」


「ふん……僕が本気を出せば、これくらい朝メシ前だ!」


「流石! よっ! 冬至様!」


「ふふん」


「だけど……それなら武器も用意して欲しかった」


「……う、うるさい! 明日から仕事だ! もう寝ろ!」



 食事を終えた少年は、明日からの仕事に備えて早めに寝ることにした……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ