俺は試作品……つまりプロトタイプね。
俺のお通夜の帰り道、肝心なところで俺の電源は切られたが、再度電源がオンになった後は、まあ、推測でしかないが、俺はネットで炎上し、アヤノはアイドルを目指していることがわかった。
車内……、俺はまたブルってしまった。
「あれ? おかしいなぁ……、またバイブが……」
(す、すみません……)
「アヤノ、来週早々にでも会社に持ってきなさい」
「う……ん……、パパ……」
アヤノはカラ返事をしながらスマホの画面を見つめる。
不思議な顔をしながら……。
そりゃそうだ。
アヤノが見ていたページではなく、俺はどんどんとまとめサイトのページを読み込み、大量のタブができているのだから、そりゃ変に思うだろう。
「ま、いっか……」
アヤノはそう言うと、またラインの未読メッセージを確かめて、既読にして返信する。
流れ作業のように、スムーズに……。
その日は家に帰ると、アヤノは早めに就寝した。
今週は学校を休み、来週から登校するらしい。
俺は、覚えたロックパターンを入力し、俺の身体の機能とアプリを調べる。
試作品ということで、機能も多く、使える機能も使えない機能もあったが、何よりもも分からないのは、スマホ自身である俺が、どの程度まで機能に介入できるか? だ。
夜の10時過ぎからアレコレ調べ始めて、今は明け方の4時だ。
まず気付いたことは、充電中であれば、俺は全然疲れないし、眠くもならない。
つまり、俺の体力は完全にバッテリーに依存しているということだ。
眠らないことのデメリットは、「暇」だという事だ。
機能の調査もそりゃ飽きる。
寝ようとすると、省電力モードを自分でオンにすればいいけど、今度は自分では復帰できない。
つまり、起きられない。
アヤノは明日は午後から医者だと言っていた。
心理カウンセリングを受けるみたいだ。
PTSDってやつか……。
なので、アヤノは寝る前にスマホのアラームを切った。
いつもは6時にセットしてあるアラームだ。
アヤノはなんだかんだ言って、8時には起きるだろう。
俺は7時50分にバイブモードでアラームをセットした。
これでアヤノより先に起きることができる。
(なぜ、アヤノよりも先に起きたいって?)
ご主人様よりも先に起きるのが、所有物、つまり僕の務めではないか!
決して、アヤノの着替えシーンを見たいなどと言う、下衆い発想ではないっ!
さて、寝るか……。