第四話 吸収
今日二つ目です。まだ見ていない方は前の話へ。
レン二号。それはレンと外見が全く同じ霊の姿で半透明な体をしていて顔も同じと来たものだからどちらが本物か分かったものじゃない。
「成功したな。さてさてどうせ魔力をそれほど多くは使わないとは言っても俺からしたら莫大な魔力を使う事になるだろうから……レン、まだいけるか?」
「アホか! あんなに魔力吸い取っておいてよく言うわ! 自分の魔力を全回復させてからしろよ!」
そんな漫才のような会話をするアオトとレン。レンとしては別に魔力が足りないと言うのなら魔力をくれてやっても良いのだが、と考えているがこれもアオトが魔力を十分に回復させ、それでも足りなかったらという話でだが。
「分かった。分かった。そう怒鳴るなって」
「怒鳴るわ!」
「でも、魔物よって来るんだよ?」
「うっ」
ここは安全地帯とは言えど結界のようなものがはられているだけで一歩結界から出て行けば魔物がうじゃうじゃといる超危険地帯である。安全地帯までは魔物は入って来られないが、ここにずっと居座るわけにもいかない。移動しなければ“奈落”からは出られないし、第一食料を探す事も出来ない。
魔物が居ようが居まいがアオトとしてはレンが囮になってくれるので関係ないのだが、如何せんそれでは効率が悪過ぎる。
「さてさてどうしよっかな?」
「呑気だな……」
魔物達が結界ごしに沢山いるのにこの男は馬鹿なのか、それとも大物なのか……と考えるレン。馬鹿みたいな能力を持っている時点で大物だと思うのだが……。
「寝よっかな?」
「こいつは馬鹿だな……」
「何か言ったか?」
「何でもないよ」
まだ大物の方が警戒心を持っていてその時その時の対応がこんなやつとは違う筈と考えたレン。
(やっぱあいつがいなけりゃ気分が乗んないなあ)
アオトの考えるあいつとは勿論、コトノの事である。
「おっ、そうだ」
「なんだいきなり」
「《鑑定》」
「おい!」
起き上がったと思えば今度は自分のコピーのステータスを覗いているアオト。とは言えレンもそこまで注意する事は出来ない。一般常識からして礼儀がなっていないがアオトはそんな事知りたくもないと言うし、レンもつい先程アオトのステータスを覗いていたのだから。
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クルス レン
17歳
種族 人間&幽霊
職業 勇者?
レベル 132
体力 21430
魔力 27650
破壊力 9240
耐久力 18520
魔耐久 25480
俊敏力 11730
知能 30790
運 60
魔法適性 炎 水 雷
スキル 経験値3倍 成長力3倍 鑑定 隠蔽 潜在能力解放魔法
称号
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(ぱないな……)
そうアオトが思うのも無理はない。だってレンのステータスは500倍近くも離れたものもあれば破壊力なんかは1000倍を超えているんだから。
(次に気になるのは称号だな。一個もないなんて事はこのステータスで有り得ないと思うし隠蔽の能力かな)
「二代目ってこんな論外な奴ばかりだったのか?」
「うーん。僕よりも強い奴は沢山いたよ。ほら。僕のスキル非戦闘魔法でしょ?」
「……置いとこう。全ては闇に葬ろう」
「葬っちゃ駄目だよ!? それに初代勇者はもっと凄かったらしいし、4代目も一人飛び向けた奴がいたし」
「えー、ナンカイイマシタ?」
「片言で喋らないでよ……」
「……そう言えば、四代目ってことは俺等は何代目?」
「言ってなかったね。君たちは八代目だよ」
(八代目……今まで七代もの勇者がいてその一つも情報が流れていない? いや、恐らく何処かには必ずある筈だ。……というかレンから全てを聞けば良いだけの話なんだがな)
「寝ようか」
「はあ!? 何処から来るの? ねえ、さっきの話の何処からその話が来るの?」
「魔力補充」
そう一言だけを呟いてからアオトは即座に硬い土の上に座り込み、目を閉じた。そんなアオトの姿を見てレンは頭を抱えながら「あいたたた」と呟いた。
「自分がもう一人いるってのも不思議で気持ち悪いな」
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数時間が経過したごろ遂にレンのアオトへの怒りが爆発した。
「どうしてそんなところで寝られるんじゃあ!」
そしてアオトに手加減はしているものの怒りを覚えさせた原因に透けた拳を向けて―――。
「ぶへっ!?」
お約束のように避けられて床に拳を突き立てるみたいな事にはならなかった。理由としてはまだアオトの危機感への察知が上手く出来ていない事と自分には暴力を振るうなと言っていなかったせいだ。
「う、ううぅ……」
当然ステータスの低いアオトはレンの拳をくらってのびてしまった。透けて見える霊のレンの透けた拳がアオトに当たり、吹っ飛ぶ姿はとてもシュールだった。
「ありゃりゃ」
やり過ぎた感が満載の気持ちになったレンは流石に……と思って治癒魔法を施した。傷や痛みが和らいでも先程の痛みと記憶が消されるわけではないのでアオトにはドンマイ以外の言葉をかけようがない。元々アオトが寝るのがいけないのだが。
「……まだ痛みがありそうな気がする」
「治癒魔法使ったんだから大丈夫だよ!」
「そう言う問題じゃないような気がするが……」
ごもっともであるがアオトが悪いので仕方ない。
「もう魔力全回復したでしょ!」
「あ、本当だ。いやあ、眠くてさ」
「こんなところで寝れるお前の神経がどうなっているのかガチで知りたくなってきたよ……」
レンも化け物の様に強く、この迷宮の創造主なんだから寝れるでしょとか思っていたらそれは間違いである。確かにここ安全地帯であるが魔物は入って来れなくても魔族は入って来れるのだ。魔族の方が魔物より危険なので警戒しないわけにはいけない。それに創造主でも迷宮の魔物を統制できるわけではないのだ。唯、創造主として迷宮の魔力を迷宮にいる間貰えると言う特典とかが付いているだけだ。つまり全能ではないのだ。
「そんじゃいくぞ。我は全ての上に立つ全能神の力を持つ者なり この力全てを貰いて強くなる 今こそ我に力を与えよ 《吸収・ステータスドレイン》!」
また何回目かも分からない辺りが輝く現象に包まれる。そしてアオトの中に入っていって……光はすぐにおさまったものの特にアオトはなにも変化しなかった。あるとすれば体が異常に軽いとか位だ。
「ええ〜。失敗?」
そう感じてしまって念のため実験のために地面を少し力を入れて叩く。
ドゴン!!
そんな明らかな破壊音を出していたアオトの地面は1m程の穴のクレーターが出来上がっていた。
「「……」」
「「えええええ!?」」
驚きもここまで来れば滑稽だ。二人は目を見開いて、寸分違わずに揃って声を上げた。そして勢い良く立ち上がったアオトの身体能力は今までの比ではないので―――
ズドドドン!!
破壊音を響かせながら思いっきり天井まで吹っ飛んでいった。
「マジか!」
どちらが発したか自分たちでも分からない程混乱している二人は顔を見合わせた。
「「嘘でしょ……」」
マジですかって顔に書いてある位に表情をあらわにした。
「す、ステータスオープン」
とりあえずステータスを確認と言う事でステータスオープンと呟くアオト。同時にレンも鑑定を発動した。
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カイジョウ アオト
17歳
職業 勇者?????
レベル 10
体力 21460
魔力 27700
破壊力 9249
耐久力 18540
魔耐久 25500
俊敏力 11755
知能 30850
運 645
魔法適性 炎 水 雷
スキル 経験値6倍 成長力6倍 鑑定 アイテムボックス 言語理解 複製魔法 霊召喚魔法 吸収魔法 隠蔽 潜在能力解放魔法
称号 異世界人 勇者? 最弱だった男 奈落の淵に落とされし者 スライムキルマスター 霊王 真の力に目覚めし者 八代目勇者ナンバーワン レベル置き去り ステータス1000オーバー ステータス10000オーバー 極めし者(仮)
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称号は貰えないようだが新しく付いたものはあった。スキルも増えた。そして何より……。
「……」
「……俺の目が情報を間違いで認識してんだろうか」
「いや、間違いではないと思うよ。多分」
基礎ステータスが異常に増えてレンも一度だけで抜かしてしまった。
バグっています。ステータスじゃなくて能力が。ステータスはこれからもっとぱない事になっていくのでまあ、まだまだ……なのかな(^-^;