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第二話 万能過ぎる能力

 明日テストだと言うのにやる気になれない……。

 今日二つ目の話です。まだ見てない方は前の話へ。

「ぐあああああ!!」


 迷宮の深部に響き渡る人の悲鳴。勿論、その悲鳴をあげた主はアオトである。


「92回目。耐えるねー。普通なら発狂どころじゃないんだけど。もう少しだ。頑張って!」


 そんな励ましがアオトの心を傷つけているのを知ってか知らずかニコニコと笑うレン。アオトとしては「黙れー! あと八回も残っているんだぞ。数だけで見ればもう少しかも知れないけど、八回も死にかけるんだからな!」と言うのが本音である。


 92回もやっていれば馴れてきてはいるものの死にかけると言うものを克服しろと言うのは無理がある。それこそ人間、いや生き物としてどうなんだろうか。アンデット系の狂ゾンビじゃあるまいし。だが、92回も瀕死の状態までいってまだ正常な理性があるのは十分人間を辞めているのと同じような気がするが……。


 まあ兎に角、この時アオトは誓った。そこで見ているままのレンという名の霊を懲らしめてやる事を。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーー




 結局100回に及ぶ苦しみと言うよりも死の感覚そのものを味わって尚アオトは何処もおかしくはならなかった。その一つとしてあのクズ野郎がアオトを物理的な方で虐めを繰り返していたから精神力が普通の人間の比じゃないのだがアオトはその事を知る由もない。


 それでもおかしくならなかったのは精神面で身体の方には相当なダメージが加わっていた。


「うぅー……。レンは治癒魔法が使える?」


 このままでは迷宮を抜け出すよりもまず当分の間正常に歩く事も侭ならないので手っ取り早い方法を聞いてみる。


「いやー。そっち系の魔法は好きじゃなくてね。出来たとしても多少の痛覚を鈍らせる程度だよ?」


(それでいいだろ! 今はここで寝転がっている方が危険なんだから。せめて少しでも安全なところにでも行ければ……)


「それで良い。頼む」

「分かったよ。傷を癒すその力 女神の力を持たんとする 女神は癒しの神なり 今光を纏いて彼の者の傷を癒す!」


 治癒とは光魔法に分類するものが殆どとされ、あらかじめ才能があるものは大きく開花させ、才能がないものでも少しでも持っておけば生存率が大きく上昇する魔法である。階級が同じでも魔力を他の系統の魔法より多めに使ってしまう事から前衛としてはあまり覚えようとせず、覚えたとしても自分の小さな傷を癒せる程度の魔法である。理由としては前衛が魔力を枯渇させると敵に与えられるダメージが激減してしまう。それは攻撃系の魔法を使う者にも同じ事が言える。


 よって治癒魔法を使うのは補助魔法等を得意とする者達になり、レンが治癒魔法を使えても何ら問題も無い。ついでに言っておくとコトノは治癒魔法が一番適性が高かったりする。


「《回復(ヒール)》」


 そう唱えた瞬間に透けたレンの手の前に光が集中してきてそのまま俺の体全体に魔力が伝わって来る。外傷は勿論無いが、血管や細胞は激しく消耗しているのでアオトの体が徐々に赤みを帯びてきているのが分かる。


(血液の循環する量まで増えるのか……。便利だな)


「もう良いかな?」


 体力の1しか残っていない状態から半分近くまで回復させたレンはそう質問を口に出す。


「ああ。一応動ける程度には回復しているし、魔物と出会う事が無いのならなんの支障もきたさないと思う」

「そっか」


 アオトはレンの様子を見てみるとレンが相当疲労している事に気が付いた。


(やっぱり馴れない魔法を使うのはいろんな意味で苦しいか)


「お、そう言えばまだ解放されたスキルがあったな」

「まだあるの!?」


 先程までの疲労していますとでも言うかのような態度はなんなんだと思ってしまう程レンは仰天していた。


「あるぞ。確か複製魔法と吸収魔法が他にあったな」

「何それ?」


 レンも知らないようなのでそれぞれの魔法の説明を開いてみる。




 ーーーーーーーーーーーーーーー




  複製魔法

 この魔法はありとあらゆるものをコピーし量産する事の出来るものである。例外は無く、例え生きている者だろうと触れるだけでその本体を複製し意思を持たせる事が出来る。もしそれが死んだ者の一部だとしても複製する事も可能なので歴史上の人物なども複製できる。それが例え神だろうと変わらない。数を増やすごとに消費する魔力のコストを抑える事も可能。性能測定不可。


  霊召喚魔法

 この魔法は召喚魔法の特異変質化した魔法である。霊を魔力を支払う事で霊体としてこの世に甦らせる事が可能な魔法。召喚魔法と違い、魔法陣を必要とせずに死んだ者を自分のものにできるのはまさに霊王の力。ただし、魔力の操作を間違えれば自分の命と引き換えに死者の霊をこの世に大量放出させる事になってしまうので注意が必要。召喚した霊は主の命令に逆らえない。魔力を微量に持たせておく事によってどんなときも主の元に転移する事も可能(例外は無い)。契約を切り、黄泉の国に霊を戻すときに二度と出す事の無いようにする“自由の選択”を発動できる。唯、これが使えるのはその霊と一定以上の信頼を得ている者のみである。もし霊が後にまた“自由の選択”を結んだ者に召喚される時があったとすればそれは選択はその霊に全てを委ねる事となる。その霊が有能な程消費魔力も莫大になる。性能測定不可。


  吸収魔法

 この魔法は未知で無限の力を秘めた魔法である。生き物以外(魔物を除く)のありとあらゆる者を吸収する事が出来る魔法。吸収してもその媒体がなくなる事はない。吸収できるのは能力値とスキルだけである。唯、複製魔法と霊召喚魔法は特別とされており、複製魔法は生き物の場合のみに取り入れる事が可能(一度吸収したものでなければ同じ存在でも重複可能)。霊召喚魔法は吸収してもその霊が黄泉の国に戻る事等は無い。一度その媒体自体を吸収した場合、複製しても吸収する事は出来ない。神を複製して、吸収する事も可能。万能過ぎのため今まで一人たりともこの三つの内一つたりとも所持できた者はいない。魔力は比較的少なめで発動可能。性能測定不可。




 ーーーーーーーーーーーーーーー




(………………)


 アオトはもう何がなんだか分からなくなる程に混乱した。能力の有能さに。確かにリスクとして一つだけはヤバいものがあったがそれを加えても良い点と悪い点では100000;1程度の差があると考える。


「いやいや、流石に万能過ぎるだろおおおおおお!!!!?」

「どうかしたか?」


 アオトは今更ながら人間を辞めて結構な時間が経っているかも知れないと思った。アオトは思った。誰だこんな能力を創ったのはと。

 ……。アオト君の万能ぶりには書いた自分でも驚きな位です。それと終わりました。さらっと。さらっととばされましたよ。死の淵まで100回行ってらっしゃいの旅が……。もう少し虐めてあげた方が良かったかな? まあ、どうせ迷宮の中では地獄のような生活が待っているんだから良いかな……。

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