プロローグ3
今日三つ目の話です。まだ見てない方は前の話へ。
急いで書いたので誤字の可能性大です。
(うっ)
強い光を全身に浴びて少しの間蒼音は動けずに立ち止まってしまった。どうやらこの記憶を遡っている間は光量がそのときよりも強く感じるようだ。
『なんなんだこれは!?』
目を開けると一番見たくなかった奴の顔と声がそこにあった。
(俺を突き落とした元凶の、確か名前は……忘れた。こんな奴の名前なんて覚えていたら逆に今すぐにでも発狂してしまうか。名前は、そうだな。クズでいっか)
幸いだったのはまだ目がはっきりと見えるわけではなくまだぼんやりと見えるだけだった事だ。もし蒼音の目がはっきりと見えていたのなら本当に発狂してしまいそうだ。そのぐらい蒼音のクズに対する敵対心と殺気、憎悪は大きくそして根深く濃厚だ。
『何があったの!?』
次に聞こえてきた声は蒼音が一番聞きたかった女神の様な声だった。その声の持ち主は勿論琴乃である。とても慌てたような表情は先程自分を見たときのような自身に溢れた、そして全ての事情を知っているような姿ではなく、何もかも初めてで頭の中で理解が追いついていないような表情だ。
(琴乃……声が出せれたら)
そんな蒼音の思いは当然ながら敗れ去る。どんなことをしても声が出ないのだ。まるで自分の中で自分に呪いでもかけられたかのように。
『琴乃! 大丈夫!?』
最後に聞こえたのは自分の声だった。琴乃のことを心配して慌てた表情で琴乃に歩み寄っていく。
と、そのときだった。
『上滝さん!』
先程まで現実感のない出来事の恐怖に陥っていたクズが早くも恐怖から脱し、記憶の中の蒼音を蹴り飛ばした。そのまま蹴り飛ばした蒼音を細い目付きであざ笑い、心配するように琴乃の方へと走って行った。
この後二人の蒼音がどんな表情でどんなことを思ったのかは言わずがもなだろう。
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あれから少し時間が経ち白色の薄汚れたような色をしたローブを羽織った神官達が出て来た。薄汚れたとは言っても何処か高級感が漂っているが。
『我の名はグロスデルト・スパルト・デログレスと申します。以後お見知りおきを』
そう言って頭を下げるデログレスはこれから約1ヶ月後の迷宮探査まで蒼音に嫌みな表情を与えてきた奴だ。男で表情はクズと一緒で細い目付きが印象に残る蒼音の嫌いなタイプである。
元々神官は神に仕える者として存在し、神の導きに従って行動する言わば神のブリキ人形の様な者である。それでも神を尊敬し、崇めるのは神の絶対的な力によるものが殆どを占めていると考えても間違いではない。そんな者が神の導き通りに勇者として学校の者とその環境をそのまま一定範囲で召喚したのだ。その中に弱者が居たのなら神の信用が少しでも失われるかもしれないと“神敵”と判断しようとした者も数少ないわけではない。
『では皆様、ステータスオープンと唱えてください』
(このときだ。俺の無能と言う烙印が押されたのは)
『どういう意味ですか』
そう説明を求めようとしているのは蒼音より学年が上の3年で生徒会長の内之宮晴香だった。
『おお、これは失敬。勇者様の世界では魔力という概念がないのでしたな』
『『『『?』』』』
皆頭の上にクエッションマークを浮かべているが誰も声を出す事はなかった。そして……。
『『『『ステータスオープン』』』』
まず琴乃、クズ、晴香がステータス表示の魔法を唱え、それに続いて次々とステータスオープンと唱えていく。
今も然程変わってはいないがこのときの蒼音のステータスがこれである。
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カイジョウ アオト
17歳
種族 人間
職業 勇者?
レベル 1
体力 10
魔力 10
破壊力 5
耐久力 5
魔耐久 5
素早さ 8
知能 10
運 3
魔法適性 無し
スキル 経験値3倍 成長力3倍 鑑定 アイテムボックス 言語理解 ???? ????? ????
称号 異世界人 勇者? 最弱
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何時見ても良い気のしない最低なステータスだと思う透明な蒼音。そのとき―――
『ぶっ、おいお前そのステータスはなんだよ。笑えるわ、くっくっく』
そう言ってクズが蒼音のステータスを見た瞬間人が集まってきて各自に鑑定のスキルを唱えだした。この鑑定というスキルと経験値3倍と成長力3倍、アイテムボックスは誰でも勇者なら使えるらしくつまりこのとき蒼音は無能の烙印を押されたのだ。
だが、皆が皆馬鹿にするわけではなかった。
『やめなさいよ!』
先生達まで見下したような目で見てくる中琴乃だけは違った。と、間髪入れずに世界が、時が止まった。全ての生き物の動きが止まり、呼吸が止まった。空気まで止まっている。
そしていつの間にか蒼音の後ろには大きな時空の穴が開いていた。このとき蒼音はこう思ってしまった。
(ああ、終わりか。この先に待っているものは完全な死か……)
『負けないで』
全てが止まっている空間で琴乃の声が響いた。動ける筈がなかった。この記憶の中の世界がどんな構造で出来ているのかすらまだ分からなかったが時が止まった中で動ける筈がなかった。
『私は貴方の事が好きだから』
そんな言葉が聞こえた瞬間に今までにない程に大きく、濃密な光が輝きを解き放った。そして何時しか真っ暗な世界へと消え、またあの冷たい光の中に意識が戻っていった。
先程の言葉は現実か空想か。
先程の言葉は真実か幻影か。
その答えを見つけるにはどうしたら良いのか。
そんな言葉が蒼音の頭の中を過った。
(生きて確かめる!)
蒼音の強くはっきりとした意志に反応したかのように光は辺り一帯を包み込んだ。
次回、蒼音の力が覚醒!?
未熟者ですので間違いなどがあればどしどし送ってください。