第二十五話 墓
何か今回シリアス感が。自分で書いといて俺が書いたの? って感じになります。後、今までの中で一番長いです。
今日三話目! 久々の三連続です。この前を見ていない方は見ていない所まで戻って読んだ方が良いかも。
レンは極普通の高校生だった。
只平凡に生きて平凡に死ぬ。そうなる筈だった。だが、人生とはなにがあるか分からない。
異世界転移。
誰も予想していなかった。予想できる筈もなかった。そんなもの創造物の中だけのものだと誰しもが思っていた。だが、起きた。それもクラスごと。
「勇者様、どうかこの世界を救ってください」
いきなり連れて来られて言われた事も創造物の中では定番のものだった。
なんでも世界は魔族の力が着々と強くなり全てが魔族の支配下に陥ろうとしているというものだった。
馬鹿な奴らが勝手に話を進めて彼等の先生が止めに入る。だが、先程の声の主の王女は話を馬鹿な奴らと勝手に決めて勝手に行動を開始した。
レンは悩んでいた。元の世界に帰る方法はないと言う。もしあってもそれは高価なもので自分達に使う事はほぼないと言って良い。それならばどうするのが一番得策か。
(僕は……)
レンは普通の人の考えを遥かに凌駕していた。別に他の人よりも頭が切れるわけでもない。唯、心の切り替えだけは他より一枚も二枚も上手だった。
それから数年が経っただろうか。剣の振り方を教わり、戦術を教わり、魔法も教わった。だが、事態は混乱を極めていった。
そんな中、レンは草原の丘で一人顔を下げていた。
魔族の攻撃。それに伴う犠牲者。その中にはクラスメイトも含まれ、レンは絶望のどん底へと落ちていった。いや、落ちていく筈だった。
「大丈夫?」
頭の中では嫌だ嫌だとだだをこねる子供のように意地を張っていた。
何に対してか。
自分が死ぬ事に対して?
人を見る事に対して?
絶望を味わう事に対して?
レン自身でも分からなかった。自分が何故顔を上げないのか。
そんな事を考えるに連れて頭痛がしてきていつしかもうなにも考えなくなっていた。
「怖がらなくていいよ」
そんな中で救ってくれた言葉がこれだ。自分を絶望という名の牢獄に入りかけていたところを間一髪で止める事ができた。
レンはこの言葉がこの瞬間になければ絶望から這い上がってくるのは不可能だっただろう。
「本……当に?」
「うん!」
そんな声につられて頭痛など綺麗さっぱり忘れ、彼女の顔を見ていた。その顔は鼻が高く、何より白く純白というのがよく似合っていた。
「私サーシャって言うの。あなたは?」
「僕はレン。クルス レンっていうんだ」
「レン、レン、レン……。覚えた! ところで君は何故此処に居るの?」
これがレンの愛したサーシャとの出会いの始まりだった。そしてその瞬間にまた絶望の淵が開きかけた。
だってクラスメイトはもう何人生きているのかしらないのだから。
一番最初に死んだのは成績優秀、スポーツ万能、容姿抜群の迅だった。
「うっ、だ、誰か助けてくれ!」
彼は特種なケルベロスに食われた。真ん中の頭はソウルイーター、右の頭はビーストイーター、左の頭はヒューマイーターの三つでできており全てを喰らうケルベロスとして恐れられてきた。
そんな中真っ先にその場を離れたのはジンの彼女の雪奈だった。
そのまま彼女がその場を去った後皆一斉にその場を離れ、ケルベロスから逃げようと走り去っていった。そんな中、ケルベロスに睨まれながらレンは只呆然とジンが喰われていく所を見ていた。
別に恨みがあったわけではなかった。だが、動けなかった。ケルベロスに睨まれたからでもない。唯何故かレンの心に穴があくような感覚とともに不思議な感覚が浮かんできた。
(何故皆逃げる? 何故? 何故?)
レンが自分の事を強いと思っていて感じた事ではない。今までクラスメイトだったのに何故そんな簡単に逃げられるのかと言う不思議に悩まされたからだ。
「助……うわああああ!!」
悲鳴が聞こえた。レンはそれを聞く度に頭痛がしてきてだんだんと意識を手放していった。
そして気が付いたら病室だった。
きっと誰かが運んできてくれたのだろう。
それからも学ぶ事は沢山あったし、友達もいた。別に不自由な事は何もない。唯、その時以来レンは心の中に穴があいた。それはとても小さなものかもしれないし、大きなものかもしれない。レン自身もどれ程のものか分からない。
だが、これだけはレンの中ではっきりしていた。
人の死は不幸しか呼ばない。
そして今ここに自分だけが生きている。他の人は魔族に殺されたのか。何時殺されたのか分からない程のいきおいで死んでいった。
「ごめん、なにか嫌な事思い出させちゃったかな」
「…………大丈夫だよ。ありがとう、話しかけてくれて」
そう答えるしかなかった。喋るのに時間が掛かったが出て来たのはそんな言葉だった。
(僕はどこで間違ったんだ? 戦う事を決意したときか? それともっと前か?)
そんな事を頭の中で考えてみるが勿論答えなどでない。唯、何故自分は他のクラスメイトよりもステータスは低いのにここでこうして生きているのだろうと言う疑問が浮かんでくる。
「ねえ、知り合いとか家族は」
サーシャはそんな事を聞いてきた。勿論、家族なんて此処に居るわけがないし、クラスメイトもどこで暮らしているのか分からない。それに生きているのかすら分からないのだ。唯一つ分かっているのは自分より強いのだからもっと違う所までいっている可能性もあると言う事。
「いないよ」
「……ごめんね。私駄目だね」
「そんな事ないよ!」
自分を救ってくれた。それだけでどれだけ恩を返そうがその恩に見合う事はできない。だって、生きている事だけでもサーシャのおかげだから。
「ありがとう」
満面の笑顔に惚れたれんだったが首を振ってその考えを無くす。
「実はね、私も頼る人だけも居ないんだ」
「え?」
話しだした声は震えていて、笑顔も何時しか消えており悲しみしか伝わって来なかった。
「父と母は戦争に巻き込まれて死んだんだよ。私は母に抱えられながら辛うじて生きていたの。父は母と私を助けようとして火の魔法をもろにくらって黒こげになって私たちを追ってきた兵士によって母は矢で両足をやられて私と一緒になんとか家に入って身を隠したよ。私をベットの下の隙間に隠して自分は近くにあった棒を持って兵士を待ち構えて、窓が割れたと思ったら母はのど元を剣で一突きで倒れてて、私は何もできなくて……」
「……」
なにもいう事ができなかった。言う事ができる筈がなかった。
「その後に最後の頼みとして祖母の家までいったの。だけど、五年後におばあちゃんは他界して、それからはずっと一人。一人。一人。……一緒だね」
最後の方はもう声が震えていてとても怖かった事が目に見えて分かる。
(僕は一緒じゃないよ。サーシャの方が辛い過去があるじゃないか。僕なんかとは比べ物にならない位に)
クラスメイトとは言え、友人と他人どちらかと言えば他人と感じる人の方がだんとつに多い。それに皆死んだと決まったわけではない。だが、サーシャは家族を皆失っても一人でも生きてきたのだ。今思えばあんなことで絶望の底に堕ちかけていたなんて恥ずかしい限りだと思ってしまう。
「ごめんね。そんな過去も知らないで……君の方が辛かった筈なのに」
「いいの。私辛くなったらこの草原にいっつも来るんだ。でもここに誰か居て同じような境遇に経っている人が居てとーーても嬉しかったんだよ?」
「ありがとう。本当にありがとう」
自分の方こそサーシャが来てくれて嬉しかったなんて恥ずかしくて言えなかった。
そして度々この丘の上で会う事で信頼を深めていった。
だが、そう長くも平和は続かない。丘の上で二人で話していたときにいきなりサーシャが倒れたのだ。原因は魔力不足。魔力が空っぽになり遂にはマイナスまで落ちていったときに体を保つ為に意識を失うのだ。レンの魔力を使って魔力は戻ったもののいつ同じような事になるか分からない。サーシャは昔から体が普通の人より悪いと聞いたときに一つの方法がレンの脳を揺るがした。
ダンジョン。
創る事でその中は魔力が充満していき、サーシャの魔力不足にも効果があると思える方法。だが、ダンジョンを創るには大量の魔力が必要不可欠となる。よってその日からレンの地獄のような魔力採取は始まった。全ては自分を救ってくれたサーシャの為に。
二ヶ月後。それまでサーシャと会う回数も減らし、魔力を自分から取り出し続けた。そして決して大量とは言えないもののダンジョンの形成に必要な魔力は揃った。後はダンジョンを創る為に必要な場所のみ。だが、その場所はもう決めていた。
「サーシャ、もう目を開けていいよ」
「分かったよー」
その場所は―――
「あれ? ここっていつも会ってる丘の上だよね」
「うん。僕が創ったんだ」
「凄い。凄いよレン!」
「えへへ」
自分達が良く会っている場所であり、レンがサーシャと初めて会った場所。丘の上。そこにまだ新生ながらもダンジョンが形成された。
「中はまだ魔物一匹たりとも居ないけど魔力は着々と集められているからサーシャが魔力不足になる事はないと思うよ」
「ありがとうレン。大好き!」
そう言って抱きついてくるサーシャに若干照れながらもサーシャの髪を撫でた。
それからは平凡な生活だった。ダンジョンは着々と大きったことで途中からは野原をイメージとした空間を作った。そしていつの間にか結婚していつの間にか笑っていた。ダンジョンの名は迷宮“奈落”と名付けてもう一つの名を“花園”と名付けた。
だが、幸せはまたもや突然崩れさる。冒険をしにきた人達にサーシャは見つかり―――
殺された。
まさに一方的な攻撃だった。敵意など一切ないサーシャに数人がかりで魔法や矢、剣や槍で焼いて、射て、斬って、貫いた。
「サーシャどこ? サー…………サ、サーシャ!!」
「レン……あの人、達は……許してあげて。お願い……」
息を引き取る寸前までサーシャは笑っていた。そして誰よりも優しかった。例え自分が死ぬ事になろうとも。
勿論、そんな事をしていた奴らはレンが皆殺しにした。初めてサーシャのお願いを破った。サーシャの思いをレンは果たす事ができなかった。
レンの服は人の血で汚れていた。さっきまで人だったものは只の肉塊と化していた。だが、サーシャは帰って来ない。元々白かった肌はより白くなりサーシャ自身の血で赤く染まっていた。
「サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャ、サーシャーー!!」
(くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそー!! なんで僕はもっと早くに駆けつけられなかった。なんで、なんで、なんで、なんで、なんで………………サーシャが死ななければならない理由なんてなかっただろ!!?)
そしてまる10日は泣き続けた。涙が枯れれば声で名を呼び続け、声が嗄れれば涙を流し、どちらもかれればサーシャに縋り付いた。
そしていつまでもめそめそしてたらサーシャに笑われるという思考が頭をよぎり、涙でぼろぼろになった顔だができる範囲の笑い顔をつくりながらサーシャを抱え、自分たちが会ったときに一番酷似した一面草だらけの野原の中にある丘へと行き時間をかけて、更に時間をかけて穴を掘ってサーシャを埋めた。魔物などレンの放つ気迫だけで近づくどころかその姿を見る事すらできなかった。
そして最後に文字が書かれた墓石をサーシャの真上に置いた。その出来映えは素人が涙をずっと流しながらしたものだから決して良いものとは言えない。だが、気持ちはどの墓よりも籠っていた。
最後に人も魔物も自分がいなければ近寄る事ができないように幾日もかけて呪文を唱えた。
「サーシャ。ありがとう。また来るよ」
かすれ、そして震えた声がよりいっそうレンのサーシャに対する愛の大きさを表していた。
そしてその隣に手紙を置いてその場を離れた。
『僕の最愛なるサーシャ。君の笑顔を忘れない。君の涙を忘れない。一緒に喜んで、悲しんで、笑って、泣いて、怒って、話して、歩いて、遊んで、苦しんで、励まし合って、愛し合って……。もうなにを伝えたら良いのか言葉が出てき過ぎて困っちゃうけど僕は君を絶対に忘れない。君との思い出を君と過ごした日々をずっとずっと何時までもどれだけ時間が経とうが忘れない。絶対に忘れないからサーシャもできれば僕の事を覚えていてくれないかな。一人で寂しかったら此処に帰ってきて。今は少しだけ離れちゃったけど僕はいつも君の傍に居る。僕も君の所に行くからそれまで待っていてくれないかな。僕のお願い届くと良いな。僕も泣かないから、君も泣かないで笑って勇気を出して待っていて。きっと楽しい毎日がまた訪れるから。 byレン』
墓には―――
『忘れないよ、絶対君の事を。沢山の思い出をありがとう。サーシャ、ここに眠る』
その場を震える足で去っていくレンの背中を励ますように押すサーシャがいう気がするのは気のせいではない。
なんかシリアスです。
次からは本編に戻ります。
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