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第十二話 動き出す闇

 今にも死にそうなこの作者の状態。勉強と執筆のコンボ攻撃で意識が撃沈しそうです。

 話は戻り、フロアボスを倒したアオトは……。


「いやー、やっぱかっこいいな」

「そんなにかな?」

「そんなにだろ。魔法もくるものがあるけど魔法じゃなくて実物があるものはもっと何か良いんだよな」

「同じようなものでしょ」

「そんな事ない! 確かに普通の鉄で出来た剣とかは微妙だけど魔法も柄がかっこいい剣も何かくるものがあるだろ」


 そんな話をしながら次の層の入り口まで鍾乳洞のような感じの細長い道を歩いている。フロアボスを倒しても次のステージに行くまでに結構な距離の通路を歩かなくてはいけない。そしてそれに対するレンの反応は……。


「ごめん。僕には分からないかも」


 と言うものだった。それに対するアオトの反応もまたやはり……。


「……面白くない奴だな」


 というものである。


「え!? それは酷くない!?」

「酷くない。反応が薄いレンが悪い」

「分かったよ……。分からないけど」

「もう知らん!」

「……はあ。やっぱ分からないや」


 最後の呟きは聞こえなかったのかアオトはペースを落とす事なく早足で進んでいく。


 どうでも良い事かもしれないがアオトが持っている“雷狼”は主に黒色で出来ており、魔力を流す事で雷を纏わせ光り輝きだすようになっている。日本で見る外套よりも大きめな魔竜の外套はアオトが羽織り、元々黒かったのが少しだけ赤紫色に変わっている。それにこれにも魔力を流す事でより赤紫色になっていき防御力が格段に上がる。それでも普通に触っても只柔らかいだけでどういう仕組みになっているのかが日本育ちのアオトには分からない。魔法の袋は外套の中のズボンのベルトできつく挟むようにしている。ついでに“雷狼”は魔法の袋とは逆の場所に鞘に入れた状態でベルトに刺している。精霊の盾は今のところ必要ないので魔法の袋に仕舞っている。


「……そろそろ言っとこうかな」

「何をだ?」


 先程のことなどなかったかのように普通の会話に戻る二人。


「この次の階からの事だよ」

「この次の階って……またあの同じような空間が続くんだろ」


 そう。ここまで同じような外見が続くと言ったのはレンなのだから。


「今まではね」

「今までは?」

「そう。この次の階からは一階一階にボスが出て、毎回ステージが変わっていくんだ」

「まじか。って、それが今までの普通か」

「まあね。その分だけ一階ずつに気を配って行く必要があるから面倒な所も出てくるんだけどね」

「確かに面倒そうだな」


 確かに面倒な事だ。だが、その分だけ手に入るスキルは種類が増えそうなので面倒でも得する事はあるのだ。それは一度置いといて……アオトが思った事がどうなるかの方が重要……かもしれない。


「……なんで知ってんだよ」

「なんでって言われてもねー。そうだ! じゃあ九十九階のボスを倒したら教えてあげるよ。百階はボスだけだから」

「だからなんでそんな事まで知ってんの!? ……まあ、そこまで行ったら教えてくれるのなら別にいいけどな」


 ここでアオトは疑問に思っていた事の一つの解決法が見つかったような気がした。


「分かってくれたみたいで嬉しいな」

「はいはい。じゃあ次の層がどんなステージかは分かるのか?」

「うーん。忘れた」

「いや、忘れんなよ!」

「あははは」


 天然のように見えるレンだが別に馬鹿正直ってわけではない。例えば先程の言葉。実を言うと嘘だ。こんな体でも自分はダンジョンマスターなので助言はある程度までと言った責任感が働いている。


「ま、もうすぐ着くから良いけどさ」


 と言っているがアオト達が九十層のステージに進むのはもう少し先の事である。距離が長いと言う点で。




 ーーーーーーーーーーーーー




「……長過ぎるだろ」

「確かに」


 アオト達があれから歩き続けて20分は経過している。だが、一向に入り口の端すら見えて来る気配はない。


(まさかこんなに長く設定してたなんて……。次に来る人がいるかどうか知らないけどもう少し短くしとかないと)


 そう考えレンはアオトを見る。


「どうかしたか?」

「なんでも」


 アオトに気づかれ声をかけられるが適当に流す。その時のレンの気持ちを言うとしたら謝罪を出来るのならしたいと言った所だ。理由はアオトの表情がイライラしているからだが。


「ガルルルル!」


 とその時、突然魔物の声が聞こえ、小さなライオンのような体つきで耳が大きく垂れ下がった魔物が姿を現すと同時に先制攻撃として噛み付いてきた。


「なんで通路で魔物が出るんだよ!」

「そんな愚痴を言っている暇があるなら魔法!」


 そんな事をアオトに注意をしているがレンも突然の事で反応しきれていない。


「この魔物すばしっこいな。ならっ!」


 アオトは声を発すると同時に魔物との間合いを詰めながら外套の中から“雷狼”を抜刀する。そしてそのまま魔物に一瞬にして近づき―――


「ギャアアアア!?」


 顔面から一突きで突き刺した。その速さはもはや俊敏性の高い魔物だろうと比ではない程だった。魔物は目視できたときには前に敵がいて一瞬にして脳天を突き刺されたのだ。悲鳴をあげれるだけ幸運だろう。


「速過ぎでしょ……」


 レンでももう全てを目視する事の出来ない速さで移動し、突き刺すのはもはや神がかっているとしか言いようがないだろう。


「終了……だな」


 アオトは魔物の死を確認すると剣を一気に引き抜く。すると、同時魔物の血が辺り一面に広がり血だまりとなる。


「うっへー、血だらけだな。浄化の魔力 我が身に付いた汚れを取り除け 生活魔法《清浄》」


 アオトが魔法の詠唱を唱えると付いていた血や土が綺麗さっぱり光りになって消えていく。


「生活魔法か。って、勇者が覚えるようなものじゃないでしょ」

「仕方ないじゃん。俺元々魔法適性無しだったんだから」


 生活魔法とはその名の通り日々の生活平民が使うようなものなどの比較的簡単なものの集まりである。只単にものを乾かしたり、焼いたり、水を出したり、汚れを取るなどの効果があるものを言う。攻撃魔法としての効果は低く、戦闘に用いられたという記述は一切存在しない。


 それでもアオトに適性はなかったため自分で金を貯め、自分で買って、一人で覚えたのである。だからこの魔法はアオトにとって一番馴染みがある魔法の一つで一応生活魔法の中では上位のものとして扱われている。それでも最底辺の下級魔法よりも格段に効果は薄いが。ついでに言えばこの魔法が今までの魔法と詠唱が違うのも種類そのものが違うからである。


「それにしてもこの剣の切れ味半端ないな」

「そりゃそうでしょ。何たって絶滅種のサンダーウルフの素材で出来ているんだよ?」

「そりゃあ知ってるけどさ」


 このサンダーウルフと言うのは太古を生きた種類で発する電力は普通のサンダーウルフの約2000倍あると言われている。そしてこの魔物後々遭遇する事に……なるかもしれない。


「それにしてもこんなところに何故魔物が」

「またどうせ管理ミスだろ。俺等にはあんま関係ないけどな」

「そうだと良いんだけど」


(何か引っ掛かるんだよなあ)


「うひひひ」


 そう思うレンと何も知らないアオトの後ろで真っ黒なローブを羽織った男の不気味な笑い声が辺りに響いた。

 うーん。展開が速過ぎましたかね? と言ってもこれから先程の男が重要になっていくのでどうしても早いうちから登場が……。

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