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俺と彼女のミステリな日常  作者: こよる
第四章 俺と彼女のミステリな日常
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第四章―02

「お、おい早季……。俺、今から今世紀最大の衝撃をお前に打ち明けるぞ」

「え。なにそれ」

「いいから聞け。恐らく俺の高校のどこかに、俺のことが好きで、しかも俺に告白したいと思っている奴がいるんだ」

「――――――――!」

 早季の反応は無言だった。驚愕に目を見開き、口もぽかんと開けて呆ける、その動作のすべてがスローモーションのうちに行われる。

 そして、早季の震える唇から出た言葉といえば、

「嘘つけ」

 嘘じゃねーよ! ジト目になるなよ!

「そりゃ、俺だって信じられないけどさ。でもな、これは本当のことなんだ」

「だって、まさかお兄ちゃんに限って、そんな。そういうキャラじゃないでしょ」

「じゃあ、事の顛末をよっく聞かせてやる。あの封筒の謎の正体を、だ」

 俺は語った。降霊会事件、真結の誘拐事件、『さらら』事件を通して、徐々に明かされていったコウライさんのおまじないの正体。

 最初は半信半疑の様子だった早季も、さすがに夜島さんのメッセージに書かれていたことを知ったあたりからは、難しい表情になって黙り込んでしまった。

「そういうわけで、いいか。俺に送られてきていた封筒は、正真正銘、誰かの恋心の表れなんだ。信じられないかも知れないし、俺だって信じられないが……」

「ふたつ」

 早季は真剣な眼差しでぴっと指を二本、俺に向かって立ててみせた。

「お兄ちゃん。この場合、考えられる可能性は二つだけだよ。

 一つ目、誰かのイタズラ説。そうやってお兄ちゃんをからかって、最後にドッキリ企画だったことを明かす可能性。

 そして二つ目、後輩の男の子説。恋心自体は本物だったかも知れないけど、そのおまじないをしている相手は実は後輩の男の子だったという可能性。

 ……きっと、このどちらかが真実なんだよ」

「そうか……」

 って待て、普通の女の子説はどこ行った。普通の女の子から告白される可能性がなんで当然のように排除されてるんだ。

「だって、普通の女の子がお兄ちゃんに告白するわけないじゃん」

「さらっと言うなよ……俺だって傷つくよ……」

「まぁ、常識的に考えれば」

 早季は止まっていた箸の動きを再開させ、レタスをしゃくしゃく噛みながら、

「誰かのイタズラだろうね。偽のコウライさんのおまじないを仕掛けて、お兄ちゃんの様子を観察する。そして思う存分お兄ちゃんの反応を陰で笑ってから、最後にドッキリ企画を打ち明ける」

「残念だけど、その可能性はないな」

 俺も箸を動かし始める。冷静を取り戻しつつあるので、少し落ち着いて推理してみることにした。

「第一。そもそも、コウライさんのおまじないはおまじないであってラブレターじゃない。しかも、知名度の低いおまじないだから、誰でも知ってるとは限らないんだ。ドッキリ企画なら、もっと分かりやすくラブレターを使うはずだろ。それに、ドッキリ企画にしては少々手が込みすぎている。

 第二。俺はお世辞にもクラスの中で目立つ人間とは言い難い。そんな俺にイタズラを仕掛けて楽しむような奴がいるとは思えない」

「んー……」早季は困ったように唸って、「だったら、やっぱり後輩の男の子説、かな?」

「だからどうしてお前は第三の可能性に目を向けないんだ……」

 ともあれ、後輩の男の子説はどうか。送り主を特定できるような手がかりが皆無なので否定できないのがつらいところだが……これについては、違うだろうと推量するしかない。というか、そうでないと信じたい。

「だいたい、後輩の男の子からラブレターをもらう可能性よりは、女の子からもらう可能性の方が高いだろ。そこは蓋然性という概念を用いるんだ」

「そうかなぁ……。蓋然性で言ったら、さきは同じくらいだと思うけど」

 なにこいつ。さっきから俺のこと馬鹿にしすぎだろ。

「でも、とにかくだ」

 このままでは埒が明かないので、俺は一つ明らかな結論を提示しておくことにした。

 レタスを咀嚼し、嚥下し、そして口を開く。

「相手は誰だか分からないけど、あの高校のどこかに、俺に対して恋心を抱いている奴がいる。イタズラ説が否定される以上、これは絶対だ」

「……そうだね」 

 早季は渋々といった様子で俺に上目を向けて、小さく頷いた。

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