二話『とてもステキなネコゲーセン』
先述しておくのを忘れていた……
この小説は、基本的に季節不同の終わりのない小説です。
ネタがある限り、書き続けたいなぁ
――昼
「……引っ張り入れられてしまった」
西崎家リビングの座卓に、正座しながらキツネが呟いた。
彼女、予定通り町内の自警をしている奏に会うだけの予定だったのだが――
「だって、銀――じゃなかった、月ちゃん以来の仲間なんだもん! 嬉しくって!」
――と、まぁ奏がそんな風に言いながらキツネの制止も聞かずに彼女を引っ張り入れた訳だ。
周囲の住人からは、キツネが消えたように見えたという。
「待て、まだ仲間だと言った覚えはない! 勝手に仲間にするな!」
そうは言いつつも、腹が減っていたのかキツネは出された海苔煎餅をかじっていた。
行動と言動が、いまいちマッチングしていない。
「銃も弾もあるし、お望みなら部屋も提供するよ?」
奏は可愛く言ってのけるが、前半部分はとてつもなく物騒な話だ。
「うるさい! 一つだけ言っておく、私は迷惑は掛けない。一人で良い! 自分に降り掛かる火の粉は――」
「――んー! キツネちゃん尻尾ふっかふか! ケイが惚れ込むのも判る気がするなぁ……」
気づけば、まるで啓汰のようにキツネの大きな筆のように立派な尻尾に奏はしがみついていた。
「はぁなぁしぃを……聞けぇぇぇ!」
――迷い込んだら最後、なかなか出られそうにないのが西崎家である。
場所は変わり、啓汰はゲームセンターにやって来ていた。
学校帰り、こうしてたまに来てはレースゲームや所謂『萌え系』のクイズゲームで遊んだりする。
「よー、ネコ!」
――そして、ここのゲームセンターには一人銃士が働いていた。
ネコと呼ばれた彼女は、ぴこぴこと奏より色の暗い茶虎毛の耳を動かして啓汰を見つける。
「来たナ人間! 今日こそ店のためにキサマから絞り尽くス! 今日はアレで勝負ニャー!」
あざとい気もするが、これが彼女のしゃべり方である。
どうも幾つかの発音が得意ではないのか、たまに言葉がおかしくなったりする。
そんな彼女が指差したのは、実際の高速道路を舞台にしたレースゲーム。
今人気のゲームで、休日や学校帰りの夕方等は人だかりも出来たりする。
しかし、今日は空いているようだ。
「よし! 俺に勝てるって思うなら、まずはそんな期待をぶち壊すぜ!」
二台の筐体に二人同時に腰掛け、硬貨を投入。
そしてまたまた二人同時に、ゲームデータ保存用カードをタッチさせてデータを読み出した。
――六分後。
「な、何故ダ! 何故勝てないんダ! ていうか、フル改造フルデザインって一体幾ら注ぎ込んダ!」
結果はネコ店員の惨敗。
彼女は悔しげに騒ぎ立てた。
「まぁ、ざっと10万? いや、もっとかな……」
「ニャー! あり得んニャ! 暇人にも程があるゾ!」
騒ぐネコの肩に、のしっと突然手がのし掛かるように置かれる。
その瞬間、ネコは全身の毛を逆立てて冷や汗を吹き出させる。
尻尾なんて、モップのようになってしまっている。
「君も、暇人だろ? ホラホラ! 仕事に戻らんか!」
「は、はいぃぃ!」
出てきたのはゲームセンターの店長で、ネコはそんな急かされる声にぴゅうっと走り去ってしまうのだった。
「――行っちまった。仕方ねぇ、適当にぶらついて帰るかな」
遊び相手は仕事に戻ってしまった。
啓汰は仕方なく、他のゲームで遊ぶこともなく帰ってしまうのだった……
ゲーセンの店員がゲームやっちゃダメじゃないですか。
サボりですよ。