十三話『二人の協力者』
新キャラが更に二人出ますよー!
ネコの働くゲームセンターは、全国展開された有名なゲームセンターだ。
しかし、建てた土地が悪かった。
良く有りがちなヤクザのような柄の悪い男たちが嫌がらせに来る事があり、奏もこの事は知っていた。
だが店長はそんな脅迫にも屈せず、荒らされた店は綺麗にし直して営業を続けた。
奏も見かねて何度か護衛を申し出たが、店長はそれを拒否。
結局、起きてしまったのが今回の事件である。
「……っ!」
奏が、変わり果てた建物を見て言葉を詰まらせる。
ガラスというガラスは割られ、壁にはスプレー等で絵画とは言えないような落書きが一面に為され、これではお客など到底呼べない位に荒れ果てていた。
ふと、イヴが足にぶつかった何かに気付き、それを拾い上げる。
細長く、金色に輝くそれは、明らかに銃の空薬莢だ。
「――39mmってところかな。径は7.62mmかな? AKで銃撃した可能性が高いね」
親指と人差し指で立てるように挟み込んだ薬莢を眺めて、それから足元に目をやる。
大量に転がる薬莢の中に数発分、別な薬莢が落ちていた。
素人目には判りづらいもの、それから拳銃弾用の短小薬莢もある。
「51mmNATOと、19mmパラかな? どちらにせよ、派手にやったのは間違いないね……」
地面を転がる薬莢に目を通している奏。
そんな彼女達の前に、また一人別な人物が現れる。
白いファーの付いたコートを羽織ったその人物に、三人は同時に銃を向ける。
だが、その人物もさも判ったかのようにマガジンが長く突き出た二挺の拳銃を構える。
「――貴女も、銃士だね?」
その人物の見た目は、明らかに人間としては浮いている。
ウェーブの掛かった髪に、服と同じような白いふわふわの兎耳が異質さを醸し出す。
そして何より、その銃士の見た目はまだ十代に入ったばかりの少女のようだった。
「見つけました、奏さん。今回、この事件の解決に協力している者です。名は有りません、“ウサギ”とは呼ばれていますが」
少女――ウサギは両手に握られたグロック18Cを背面に下げた二つのヒップホルスターに手慣れた手付きで押し込むと、ゆっくりとしたペースで歩み寄ってくる。
「撃つ必要は無さそうだな」
AN94を水平に構えていたキツネは警戒心を解き、銃を下ろした。
二人も、同じだ。
このウサギからは、殺気が感じ取られないのだ。
敵ではないのは、間違いない。
「もう一人、仲間も埠頭に向かっています。行きましょう」
「埠頭か……いかにもそれらしい場所だ。楽しみになってきたよ……」
――埠頭に向かう、別な三人の影。
クレア、啓汰、そしてネコだ。
クレアは自身の自慢の短剣を、啓汰は愛銃Px4を携える。
だが、それ以上に迫力があったのはネコだった。
「許せない。今度こそ痛い目遭わせてぎったんぎったんのぼっこぼこにしてやル!」
ネコが手に持っているのは、軍用ヘリに使われるような多銃身形式の機関砲。
M134ミニガンと呼ばれる、モーター駆動式の重火器だ。
「ボコボコどころか、そんなンで撃たれちまったら、粉微塵だな」
ミニガンを見ながら、クレアはけらけらと笑って見せる。
ミニガンの総重量は銃弾1セット4000発を含めれば、50kgは軽く越える。
個人運用等、映画や漫画の世界位なものだ。
しかし、そこは銃士。
ジョイスティックのようにカスタムされたグリップに、左手はしっかりとキャリングハンドルを握りしめ、背中にはまるで墓標のような大きな弾倉を背負ってもなお、まだ普通に歩いていた。
「一応言っとくけど、殺すなよ?」
啓汰がそう言うと、クレアは肩を竦めて鼻で彼の言葉を笑う。
彼女にとって、手加減の方が逆に難しいのだ。
がしゃがしゃと、まるでロボットが歩く様な音を立てながらネコ達三人が埠頭に向かっていると、突如目の前にライフルを構えた人物が立ちはだかる。
「ア? 何だ、オマエ……エラくちんちくりンだがよォ――持ってンのは、ガーランドかァ?」
修道女のような衣服に身を包んだちんちくりん――少女は、木製のレシーバーを持つ槍のようなライフルを片手に、三人を見回す。
「三人か。悪くないね。おい、そこの露出狂! あたしはちんちくりんじゃァ無いよ!」
……修道女のような少女の耳には、狼の耳。
彼女もまた、銃士だった。
「それにだ、久し振りじゃないか。大きくなったね、啓汰の坊っちゃん」
懐かしそうに啓汰を眺めて、彼女はうんうんと満足げに頷く。
三人は彼女の言葉遣いが、やけに年を食い過ぎているような気がしてならなかった。
実際、そうだ。
少女の見た目に、修道女の服装、第二次大戦中の古いライフルM1ガーランドを手に所謂“ババァ口調”といった、あべこべで胡散臭い銃士だ。
「あー、あたしもこの事件を知ってね。奴等にゃ借りもある、それに奏の嬢ちゃんも動いたようだし、啓汰も……だから、手伝いに来たって訳だ。あたしの事はシスター、とでも呼びな。カミサマは嫌いだが、森の奥の教会が根城だからね――」
(話なげェな、このちんちくりン……)
ぺらぺらぺら……次から次へと言葉をマシンガンの如く吐き出すシスターに、クレアの額に青筋が立った。
「まあとにかく仲間が多いに越した事は無いニャア。犬はキライだけど、折角なら付いてきてもらおう!」
がしゃりとミニガンを持ち上げて、万歳するネコ。
背中の弾倉とベルトリンクで本体と繋がった銃弾ベルトが揺れる。
あまりに物騒すぎる光景だ。
「とにかく、奴等が今集まっている場所は近い。気を付けて先に進むよ」
結局、シスター先導により四人となった啓汰組。
彼等は、今誘拐事件の現場に乗り込もうとしていた……
さて、大体キャラも出揃ってきたかな。
タイトルに反して平和じゃないじゃんって思うかもしれませんが、銃がある以上仕方ないのです。
十六夜的、銃器カタログ
Glock/18C
使用弾薬:9mmパラベラム
装弾数:33+1
オーストリアにあるグロック社が開発した、G17ベースの機関拳銃。
17との違いは、スライド左面に射撃モード切り換え用セレクタースイッチを備えている位。
スクリーンの世界ではウサギが使用したように、33連発ロングマガジンと組み合わせられる事が多いが、フレーム自体はG17と大差ない為G17の17発マガジンも使用可能(逆も可能――というより、グロック9mmモデルならば大抵17発以上のマガジンは使用できる)
連射速度は毎分1200発と、小型さも合間ってコントロールは容易ではない。
その為、銃床を備えたり、マガジンをフォアグリップがわりにするアダプター等を備えるケースも散見される。
GE/M134
使用弾薬:7.62×51mm
装弾数:4000
航空機用機関銃、バルカン砲として有名な“M61”を、対人用に小型軽量化したモデル。
改良はM61と同じ、ゼネラルエレクトリック社。
24V若しくは28Vの外部電源によりモーターを駆動し、回転する六本の銃身から断続的に発射を行う。
その為、連射速度は驚異の毎分3000発以上を誇る。
装弾数は大体1セットを4000発としている模様だが、連射し過ぎて砲身が加熱するのを防ぐために、連射は大体一秒以内に抑えるよう訓練を受けるようだ(一秒の連射でも、おおよそ100発の銃弾をばら蒔く)
スクリーンの世界では、力技によるごり押し銃器としてその猛威を振るうが、全体重量は50kgを越える。
そのステージガンの大半は、外部に電源を設けたり、連射速度を落としたりして人間にも立射が可能な様に改良されている。
また、無痛ガンの異名も持つ。
これは『対象が痛みを感じる前に死んでいる』という、物騒な意味合いから付けられたものとされる。
ヘリのドアに据え付け、自衛火器とするケースが多いが、現在は屋根に穴を開けた専用改造のSUVに搭載する、等の例もある。
Springfield/U.S.Rifle Cal.30 Model.1
使用弾薬:7.62×63mm
装弾数:8
通称、M1ガーランド。
尚、ここで紹介するスプリングフィールドは現在のスプリングフィールドアーモリーとはあまり関係無い。
スプリングフィールド造兵厰で設計された、自動式ライフルである。
現代の銃に対しては若干見劣りするものの、威力に優れ、また本銃が活躍した第二次大戦ではボルトアクションライフルが大半であり、大威力の銃弾を次々と連射出来た本銃は脅威的存在だったとされる。
その後、M1は20連発の着脱式弾倉を備えた“M14”へ改良。
主力はM16ライフルに譲ったものの、現在も現代のマテリアルで改良したM14EBR等のカスタムモデルは現役で戦っている。
また、M1自体も行進等の姿勢矯正等、未だ相当数の本体が現役であり、決して存在が忘れられる事は無いだろう。