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石の記憶  作者: 羽柴るい
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石の記憶 はじめてのともだち


この物語は、日常の中の出来事をもとに紡いだ短編です。

 

瑠璃は、中学二年生の春に大阪へ引っ越してきた。

父の仕事の都合だった。

 

見知らぬ街。

聞き慣れない言葉。

教室にいるだけで、どこか落ち着かない。

 

関西弁は、少しだけ強く聞こえて、まだ少し怖かった。

 

昼休みも、うまく輪に入れず、ひとりで過ごすことが多かった。

 

そんなある日の帰り道。

商店街の一角で、瑠璃は足を止めた。

 

色とりどりのキャラクターグッズが並ぶ中に、

ひとつだけ雰囲気の違うガシャポンがあった。

 

透明な石が入った、小さな機械。

 

どこか場違いのようで、でも――

だからこそ、気になった。

 

硬貨を入れて、ハンドルを回す。

カラカラと音を立てて、小さなカプセルが転がり出てきた。

 

中に入っていたのは、丸みを帯びた小さな水晶だった。

 

手のひらに乗せると、指先でころころとやさしく転がる。

光を受けて、透明な中に小さなきらめきが揺れた。

 

――かわいい。

 

気づけば、何度も転がしていた。

 

見知らぬ街の中で、

それはまるで、初めてできた小さな友だちのように思えた。

 

次の日、瑠璃はその水晶を筆箱の隅に入れて学校へ持っていった。

 

休み時間、そっと取り出して眺める。

それだけで、少しだけ心が落ち着いた。

 

「それ、きれいやね」

 

不意に声をかけられて、瑠璃は顔を上げた。

 

隣の席の女の子が、少しだけ身を乗り出している。

 

「ガシャポンで出たん?」

 

やわらかい口調だった。

 

「うん……水晶、だと思う」

 

「へえ、ええやん。透明で綺麗やね」

 

その子は少し笑って、自分の筆箱を開いた。

 

中から、小さな紫色の石を取り出す。

 

「うちはアメジストの方が好きやねん。紫、好きなんよ」

 

「アメジスト……?」

 

「うん、これ」

 

手のひらの上で、やわらかく光る紫。

 

少しだけ間があってから、その子が言った。

 

「よかったら、放課後うち来る?」

 

「え……」

 

「石、ちょっと集めてんねん」

 

 

放課後、瑠璃は少し迷いながらも、その子――由美の家へ向かった。

 

机の上には、小さな石がいくつも並んでいた。

丸く磨かれたものや、少し歪なもの。

 

「安いタンブルやけどな、つい集めてまうねん」

 

由美は少し照れたように笑った。

 

その空間は、どこか落ち着いていて、居心地がよかった。

 

 

それからしばらくして、二人で小さなパワーストーンの店に立ち寄った。

 

棚には、たくさんの石が静かに並んでいる。

どれも、やわらかく光っていた。

 

「これ、安いし可愛いやろ」

 

由美が手に取った石を、そっと見せてくる。

 

瑠璃も、少し迷ってからひとつ手に取った。

 

前よりも、少しだけ自然に選べた気がした。

 

 

教室に戻ると、まだ知らない言葉や空気はある。

全部に慣れたわけではない。

 

それでも――

 

筆箱の中の水晶を、そっと指で転がす。

 

そして、隣には、話せる人がいる。

 

それだけで、少しだけ世界がやわらいで見えた

あなたはどの石が気になりましたか

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