処刑の日
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石畳は冷たく、雨粒が容赦なく頬を叩いていた。
空はどす黒い雲に覆われ、まるで世界そのものが彼女の罪とされる“闇”を証明するかのようだった。
「――国家転覆を企てた、闇の魔女エリシア・フェルンを、ここに処す」
処刑塔の上から響く宣告は、もはや誰の耳にも新しいものではなかった。
人々はすでに判決が正しいと疑いもせず、口々に罵声を浴びせてくる。
闇の魔女。反逆者。国を呪う災厄。
エリシアは震える唇を噛みしめた。
私には……何の力もなかった。
闇の魔法なんて、そもそも使えない。
ただ……何者かに証拠を捏造され貶められた――
必死に訴えた。
何度も、何度も、「私は違う」と叫んだ。
だが覆す証拠はどこにも見つからず、味方になってくれる者は一人もいなかった。
家族は私の訴えに耳をかすことなく、守ろうとすることもなく、世間に流れた悪評を鵜呑みにして彼女を見捨てた。
婚約者であったアレクシスでさえ、私を信じてくれることはなく、冷たい瞳で背を向けた。
「……エリシア・フェルン。あなたという人を、私は信じられない」
その言葉が、刃よりも深く心を裂いた。
処刑台の階段を上る足は重く、鎖の音が虚しく響く。
首に縄を掛けられても、エリシアはうつむいたまま動かなかった。
もはや死の恐怖よりも、空虚しかなかった。
雨の匂い。
濡れた木材の軋む音。
群衆の冷えた眼差し。
彼女の人生は、ここで終わる。
「……今更ながら、私の何がいけなかったのか。
他者に人生を終わりにされてしまうほど、私は無力だった……」
声にならない祈りが喉の奥で震える。
合図とともに足元の板が落ち、首の縄が呼吸を一気に遮り、視界が暗転した。
呼吸のできない苦しさと共に意識が世界が遠ざかっていく。
そして――
処刑はそれで終わらなかった。
「闇の穢れを祓うため、火刑を実施せよ!」
吊られたまま、炎の熱が迫る。
身体を炎が包みこみ焼け付く痛み。
皮膚が裂け、煙が立ちのぼる。
燃え盛る炎の中で、エリシアは最後の力で願った。
……やり直せるなら……
今度こそ……力をつけて…
…他人に左右されない人生を歩きる…
意識が白く融けていく。
――その瞬間。
まばゆい光が、すべてを飲み込んだ。




