Day 7.5
昼休み。
弁当を広げたばかりの脩也たちの前に、背の高い男子が現れた。
周りから「王子」と呼ばれているという、梁瀬拓海。ゆるくウェーブのかかった栗毛に、くっきりとした二重が印象的な、目立つ青年だった。
「下の名前、なんて言うの?」
「こいつは脩也!俺が真澄で、こっちが航!」
拓海の質問に、真澄がすぐさま人懐っこく返す。拓海はにこにこと笑いながら、挨拶代わりにとパンを差し出した。
「脩也くん、間近で見るとほんとイケメンなぁ」
思わずムッとして上目遣いになる脩也。
「あー脩也、それ言われるの嫌いなんだって!」
真澄が慌ててフォローする。
「え、そうなん? ごめんごめん」
「……別に」
軽く返すと、拓海はすぐに話題を変えた。
「甲子園の予選、もう始まったんでしょ? みんなも出てるの?」
「脩也はレギュラーで、俺らは応援席〜」
「そうなんだ。全体応援、楽しみだな」
その後も拓海と真澄は頭上で楽しそうに会話を続け、脩也は黙々と弁当を口に運んだ。
「明後日の体育、俺ら1組と合同だから、また喋ろ」
飄々とした様子で手を振ると、拓海は窓際の席へ移動していった。遥と何か会話を交わす光景が目に入り、思わず脩也の手が止まる。
「……幼馴染らしいよ」
それまで黙っていた航が、ぽつりと口にした。
「え?あぁ、伊澄さんと? あの2人?」
真澄がそう言いながら、拓海からもらったあんぱんを三等分し、器用に分けていく。
「なんか意外な組み合わせよな〜」
軽く笑う声を横で聞きながら、脩也は返事をせず、手にしたパンを無理やり口に押し込んだ。