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第81話 穴への投下
もう、全てが終わった。
翔太は、自ら穴の縁に立った。
強制される必要もない。
もう、抵抗する意味がないことを理解している。
下を覗き込む。
真っ暗な深淵。
底は見えない。
だが、確かに声が聞こえる。
永遠に配信を続ける者たちの声が。
「ようこそ」
悠真が、最後の言葉をかけた。
「あなたの個性は、永遠に生き続けます」
「私たちの中で」
「私たちの糧として」
周平が、そっと翔太の手を取った。
小さな、猫の前足。
でも、その感触は優しかった。
「ごめんね、ゴーストハンターさん」
「でも、ありがとう」
「特別な役目を果たしてくれて」
田中と山田も、最後の別れを告げた。
「最高の配信者でした」
「永遠に、忘れません」
「文字通り、永遠に」
翔太は、深呼吸をした。
最後の、人間としての呼吸。
そして...
一歩、前に踏み出した。
重力が、翔太の身体を捉えた。
落下。
暗闇の中へ。
風が、顔を打つ。
下へ、下へ、下へ。
最後に見えたのは、円を描いて覗き込む月の民たちの顔。
皆、満足そうな、でも少し悲しそうな表情をしていた。
そして、すべてが闇に包まれた。




