表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/91

第76話 最後の一時間 - 極限の心理戦

もう、翔太には反論する気力もなかった。


ただ、ドアに背中を預けて、座り込んでいる。


全身から、力が抜けていく。


月の民たちは、最後の手段に出た。


ドアの隙間から、写真が差し込まれる。


一枚、また一枚。


それは、過去の犠牲者たちの「処理」の様子を撮影したものだった。


一枚目:広場に集められた男性。恐怖に歪む顔。

二枚目:月の民たちに取り囲まれる瞬間。

三枚目:抵抗する姿。無駄な足掻き。

四枚目:諦めの表情。全てを受け入れた顔。

五枚目:体育館へと運ばれていく姿。

六枚目:扉が閉まる瞬間。これが最後の写真。


「これが...俺の未来...」


次の写真。


それは、合成写真だった。


翔太の顔を、過去の犠牲者の体にはめ込んだもの。


リアルに、自分が同じ運命を辿る様子が再現されている。


恐怖で身体が震える。


でも、もう逃げる場所はない。


「もうやめてくれ...」


弱々しい懇願。


だが、写真は続く。


そして、最後の一枚。


それは、体育館の内部写真だった。


床に開いた、巨大な穴。


深さは計り知れない、漆黒の深淵。


そして、その穴の縁に刻まれた文字。


『永遠の配信スタジオ』


穴から、微かに声が聞こえてくるような...


『配信中...』

『誰か見てる...?』

『お願い...視聴して...』

『評価ボタン...押して...』


過去の犠牲者たちの声。


永遠に配信を続ける者たちの、絶望の声。


翔太は、もう何も感じなくなっていた。


恐怖も、怒りも、全てが麻痺していく。


ガシャン!


突然、大きな音がした。


閂が、限界を迎えた。


金属疲労で、真ん中から折れた。


もう、ドアを守るものは何もない。


ゆっくりと、ドアが開き始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ