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第73話 二時間目 - 疲労と誘惑
ドアへの物理的な衝撃は、完全に止んでいた。
代わりに、もっと巧妙な攻撃が続く。
精神への直接攻撃。
ドアの隙間から、紙が差し込まれた。
震える手で取り上げる。
そこには、丁寧な文字で招待状が書かれていた。
『特別招待状』
藤原翔太様（28歳）
あなたを永遠の配信会場へご招待します。
日時：本日これより
場所：体育館地下特設スタジオ
配信時間：永遠
視聴者数：∞（月の民全員）
特典： ・永遠に配信できます ・視聴者は決して減りません ・低評価はありません ・アンチもいません ・ずっと必要とされます
条件： ・現在の肉体を手放すこと ・精神エネルギーの提供 ・個人としての死
ご返答をお待ちしております。
月の民一同
翔太は、紙を握り潰した。
だが、次々と新しい紙が差し込まれる。
内容は少しずつ違うが、本質は同じ。
永遠の配信者になれるという、悪魔の誘惑。
「ふざけるな！」
翔太は叫んだが、声は既に枯れかけている。
