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第71話 最初の一時間 - 威嚇と恐怖

ドアへの物理的な攻撃は止んだ。


代わりに、もっと恐ろしいものが始まった。


ドアの下の、わずか2センチほどの隙間。


そこから、何かが覗いている。


翔太は、思わず後ずさりした。


無数の目。


緑色に光る、縦長の瞳孔。


隙間にびっしりと並んで、じっと室内を見つめている。


瞬きもしない。


ただ、じっと。


獲物の様子を観察するように。


「うわっ...」


翔太が声を上げた瞬間、全ての目が一斉に瞬きをした。


パチン。


完璧にシンクロした、機械的な瞬き。


まるで、一つの巨大な生物の無数の目のように。


そして、声が聞こえ始めた。


いや、声というより、音の再現。


『やあ、みんな!ゴーストハンターだ!』


翔太自身の声だった。


初期の頃の配信。まだ希望に満ちていた頃の、明るい声。


ドアの向こうから、自分の過去の声が響いてくる。


月の民たちが、完璧に再現している。


音程も、抑揚も、感情も、全てが完璧。


「やめろ...」


『今日も最高の配信をお届けするぜ!』


続く声。


かつての栄光の日々。


『おっ、スパチャきた!ありがとう!』

『1万円!?マジか!愛してるぜ!』

『みんなのおかげで10万人突破!』

『20万人!夢みたいだ!』


歓喜の瞬間が、次々と再生される。


それらは全て、翔太の記憶から抽出されたものだった。


月の民たちは、彼の精神に既にアクセスしている。


最も大切な記憶を、最も残酷な形で利用している。

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