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第67話 追跡

町中を、壮絶な追跡劇が展開された。


翔太は、路地を曲がり、建物を迂回し、フェンスを飛び越える。


アドレナリンが、疲労を忘れさせる。


限界を超えた身体が、最後の力を振り絞る。


だが、追跡者たちは容赦ない。


屋根の上を、猫たちが並走している。


地面すれすれを、別の群れが走る。


路地の先々で、新たな追跡者が現れる。


空からも、鳥と化した者たちが監視している。


完全な包囲網。


逃げ場など、最初からなかった。


これは、狩りごっこ。


獲物に、最後の抵抗をさせる余興。


それでも、翔太は走り続けた。




15分の逃走劇の中で、翔太は自分でも驚くほどの力を発揮した。


普段の怠惰な生活が嘘のように、俊敏に動く。


柵を飛び越え、狭い隙間をすり抜け、急カーブを曲がる。


「はあ...はあ...」


息は上がり、足は棒のようになっている。


心臓が、胸郭を破裂させそうなほど激しく脈打つ。


でも、止まれない。


止まったら、終わり。


前方に、田中と山田が回り込んできた。


完全に猫化した二人。


だが、その目には、まだ人間だった頃の感情が残っている。


「ゴーストハンターさん...」


にゃあ、という鳴き声の中に、かつての言葉が混じる。


「もう、いいでしょう...」


「こんなに頑張らなくても...」


彼らの声には、心配さえ混じっていた。


獲物を心配する捕食者。


奇妙な矛盾。


「まだだ!」


翔太は、二人の間を強引に突破した。


爪が、シャツをかすめる。


布が裂ける音。


でも、止まらない。


「まだ終わってない!」


その叫びに、月の民たちは複雑な感情を抱いた。


哀れみと、尊敬と、そして高まる期待。


これほどまでに抵抗する獲物は、久しぶりだ。


きっと、最高の味がするだろう。

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