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第63話 集団からの視線

広場に集まった全員が、一斉に翔太を見つめた。


その数は、千を優に超えている。


猫、元人間、そしてその中間の存在たち。


全ての視線が、一点に集中する。


その重圧は、物理的な力を持っているかのようだった。


翔太の膝が、ガクガクと震える。


立っているのがやっとだ。


その中から、栗田周平が前に出てきた。


完全に猫の姿だが、まだ少年の面影を残している。


小さな体、大きな目、そしてあどけない表情。


「ゴーストハンターさん...」


少年の声は、本当に申し訳なさそうだった。


「ごめんなさい」


「でも、これも自然の摂理なんです」


「変化できない者は、変化した者の特別な糧となる」


「それで、全体のバランスが保たれる」


少年の言葉は、恐ろしいほど理論的だった。


もはや、子供の無邪気さはない。


集合意識の一部として、全体の知識を共有しているのだろう。


「あなたの強い個性は、私たちにとって最高の栄養になります」


「あなたの苦悩は、私たちの幸福をより深くします」


「あなたの絶望は、私たちの希望を照らします」


残酷な真実。


だが、少年の表情に悪意はない。


ただ、自然の摂理を述べているだけ。


草が光合成をするように。


肉食動物が草食動物を食べるように。


当たり前のこととして。


他の元人間たちも、口々に「にゃあ」と鳴き始めた。


それは、哀悼の合唱だった。


『さようなら』

『ありがとう』

『特別な役目を果たして』

『永遠に一緒に』


翔太は理解した。


これは、ただの虐殺ではない。


彼らなりの、敬意を込めた儀式。


餌となる者への、感謝の儀式。


そして、自分には「特別な役目」が待っている。


ただ殺されるのではない。


もっと恐ろしい、永遠の運命が。

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