表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/91

第56話 夜明け前の審判

ドアから入ってきたのは、悠真だった。


彼の変化は、もう最終段階に達していた。


美しい銀色の毛並み。 しなやかな四肢。 そして、慈愛に満ちた縦長の瞳孔。


もはや、人間の面影はほとんどない。


だが、最後の慈悲として、人間の言葉を話すことができた。


「時間です」


その声は、もはや人間のものではない。


響きが違う。


倍音が混じり、複数の声が重なっているような。


「明日の朝、月の民の集会があります」


「そこで、あなたの...処理が行われます」


処理。


やはり、その言葉。


「本当は、あなたにも変化してほしかった」


悠真の表情に、深い悲しみが浮かんだ。


人間だった頃の感情が、まだ残っているのだろう。


「この幸福を分かち合いたかった」


「でも...」


翔太は、力なく頷いた。


「分かってる」


「俺は、異物なんだろ?」


「餌なんだろ?」


「...はい」


悠真は、静かに答えた。


申し訳なさそうに。


でも、止められない本能に従って。


「でも、それも大切な役割です」


「あなたの命が、私たちの糧となる」


「そういう意味では、あなたも町の一部になれます」


慰めにもならない慰め。


でも、悠真なりの優しさだった。


「朝まで、ゆっくり休んでください」


「明日は...長い一日になりますから」


悠真は、静かに去っていった。


四つ足で、音もなく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ