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第55話 最後の独白

もう、すべてが終わりに近づいていた。


翔太は、公民館の隅でカメラの前に座った。


最後の、本当に最後の配信。


いや、配信ではない。


ただの、記録。


誰も見ることのない、独り言。


「...見てるか、まだ人間のやつら」


声は掠れ、顔は憔悴しきっていた。


目の下の隈は、もはや黒ずんでいる。


「俺は...変われなかった」


カメラを見つめる目に、深い絶望が宿っている。


「みんなが幸せになっていく中、俺だけが取り残された」


「田中も、山田も、他の配信者も...」


「みんな変化して、幸せそうで...」


「俺だけが、餌として...」


声が震える。


涙が、止まらない。


「でも、分かったんだ」


「これが、俺の選んだ道なんだって」


「『ゴーストハンター』として生きることを選んだ瞬間から」


「俺は、こうなる運命だったんだ」


深呼吸。


最後の力を振り絞る。


「20万人...」


「再生回数...」


「評価...」


「これが俺のすべてだった」


「これを手放せなかった」


「だから、俺は変われない」


「だから、俺は餌になる」


窓の外から、大合唱が聞こえてきた。


変化を遂げた者たちの、幸福の歌。


今度は、はっきりと歌詞が聞き取れる。


『もうすぐだね』

『さいごのよる』

『あしたは、ごちそう』

『みんなでわかちあう』


翔太は、カメラに向かって、力なく笑った。


「でも、俺は最後まで...」


「藤原翔太として...」


「ゴーストハンターとして...」


「人間として死ぬ」


その時、公民館のドアが、ゆっくりと開き始めた。


軋む音が、静寂を破る。


そして、入ってきたのは...

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