第51話 遺品が語る真実
三毛屋食堂から逃げるように立ち去った翔太は、公民館に辿り着いた。
比較的新しい建物で、鍵も壊れている。
中に入ると、広いホールがあった。
そして、その隅に、大量の荷物が積まれている。
近づいてみると、それらは全て私物だった。
バックパック、カメラバッグ、衣類、財布...
失踪者たちの遺品。
翔太は、震える手でそれらを確認していく。
一つのバックパックから、日記帳が出てきた。
表紙には『変化の記録 - 失敗例』と書かれている。
開くと、震える文字で記録が綴られていた。
3月1日 祢古町に到着。 廃墟の町だが、住民は親切。 少し変わっているが、悪い人たちではなさそう。
3月2日 おかしい。 皆の瞳孔が縦長。 でも、幸せそう。 俺も、そうなるのか?
3月3日 変化が始まらない。 他の新参者は、既に瞳孔が変わり始めている。 俺だけ、何も起きない。 なぜ?
3月4日 住民たちの目が変わった。 哀れみと、別の何かが混じっている。 食欲? まさか。
3月5日 隔離された。 「あなたは特別」と言われた。 特別な何? 嫌な予感がする。
3月6日 理解した。 俺は餌だ。 変化できない者は、彼らの食料。 逃げなければ。
3月7日 逃げられない。 町から出られない。 道は全て監視されている。 待っているのは、死だけ。
最後は3月8日で終わっている。 何も書かれていない。 その日に、「処理」されたのだろう。
翔太は、日記を閉じた。
8日間。
変化できないと判断されてから、わずか8日。
自分は今、3日目。
あと5日ある。
いや、違う。
カルテには、明日の日付が書かれていた。
特別扱い。
通常より早い「処理」。
なぜ?




