第49話 三毛屋食堂の真実
深夜2時。
空腹に耐えかねた翔太は、再び外に出た。
もう、隠れていても無駄だ。
どうせ「彼ら」は、自分がどこにいるか知っている。
三毛屋食堂の前に立つ。
昼間に見た時と同じように、中から温かい光が漏れている。
いや、違う。
もっと明るい。
まるで、パーティーでもしているかのような賑やかさ。
恐る恐る、中を覗いた。
そこでは、宴が開かれていた。
変化を遂げた者たちが、テーブルを囲んで座っている。
皆、様々な段階の変化を遂げている。
ある者は、まだ箸を使える。器用に何かをつまんでいる。
ある者は、前足で器を押さえながら、直接口をつけている。
完全に変化した者は、床に置かれた皿から食べている。
だが、全員が共通して浮かべているのは、至福の表情だった。
恍惚とした、この上ない幸福の表情。
三毛屋女将が、優しく彼らの頭を撫でながら、料理を運んでいる。
女将も、既に変化が進んでいる。
耳は頭の上に移動し、全身に美しい三毛模様の毛が生えている。
だが、まだ二足歩行ができ、人間の仕草を保っている。
そして、その料理は...
翔太は、目を凝らした。
皿の上には、何も乗っていない。
空っぽの皿。
空っぽの茶碗。
空っぽのコップ。
それなのに、皆、美味しそうに「食べて」いる。
噛む仕草。
飲み込む仕草。
満足げな溜息。
まるで、記憶の中の味を、永遠に反芻しているかのように。
いや、もしかしたら、彼らには見えているのかもしれない。
変化した者だけに見える、特別な食事が。




