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第41話 絶望の夜へ
翔太は、旅館へ逃げ帰った。
もう、どこにも安全な場所はない。
部屋に籠もり、ドアに家具でバリケードを作る。
無意味だと分かっていても、他にできることがない。
窓の外を見る。
月が、不気味なほど大きく見える。
そして、町中から聞こえてくる鳴き声。
『にゃあ』 『にゃあ』 『にゃあ』
数十、いや数百の声。
カウントダウンが始まっている。
明日、3月26日。
収穫の日。
翔太は、震えながらカメラを構えた。
最後まで、記録する。
それが、配信者としての意地。
「俺は、藤原翔太だ」
レンズに向かって、宣言する。
「ゴーストハンターだ」
「最後まで、人間だ」
窓ガラスに、何かがぶつかった。
ヒビが、蜘蛛の巣のように広がる。
時間は、残されていない。
明日、全てが終わる。




