第39話 追い詰められる孤独
日が暮れ始めた。
西の山に太陽が沈み始め、町に長い影が落ちる。
翔太は、完全に孤立していた。
どこに行っても、変化した者たちの視線。
彼らは翔太を見ると、一様に首をかしげる。
『なぜ変わらないの?』 『可哀想に』 『もうすぐ楽になるよ』
哀れみと期待が混じった視線。
餌を見る視線。
翔太は、もう耐えられなかった。
公園のベンチに座り込む。
全身から、力が抜けていく。
戦う意味が、見出せない。
どうせ明日には...
その時、また悠真が現れた。
だが、様子が違う。
瞳孔が、縦長になり始めている。
表情にも、微かな恍惚感が。
「藤原さん...」
悠真の声は、申し訳なさそうだった。
「私も、変化が始まりました」
「そんな...」
「でも、不思議と恐怖はないんです」
悠真は、幸せそうに微笑んだ。
「むしろ、安心感があって...」
「今まで抱えていた重荷が、全て下りていくような...」
翔太は、言葉を失った。
最後の仲間も、向こう側へ行ってしまう。
「あなたは、どうやら本当に変化できないようですね」
悠真の表情が、深い悲しみに変わった。
「つまり...」
「分かってる」
翔太は、力なく答えた。
「俺は、餌なんだろ?」
悠真は、静かに頷いた。
そして、去っていった。
もう、人間らしい歩き方ではなかった。




