第38話 音無神社の祠
悠真と別れた後、翔太は境内の探索を続けた。
本殿の裏手に、古い祠があるのを見つける。
扉は朽ちかけていたが、なんとか開けることができた。
中には、大量の写真と記録が保管されていた。
埃を払い、懐中電灯で照らす。
写真の多くは、失踪した配信者たちのものだった。
最期の瞬間を記録したもの。
@truth_seeker:変化を拒否。最後まで抵抗。集団に囲まれる写真。 @void_walker:変化に失敗。錯乱状態。自ら地下へ向かう姿。 @last_human:文字通り最後まで人間。月の民に「処理」される瞬間。
どの写真も、凄惨な最期を物語っている。
変化できなかった者たちの運命。
これが、自分を待つ未来。
さらに奥を探ると、もっと古い記録が見つかった。
昭和32年の新聞記事のコピー。
『祢古町住民1500人が集団失踪』 『原因不明、政府は立入禁止区域に指定』
記事を読み進める。
『3月26日午前0時、町民全員が同時に姿を消した』 『残されたのは、大量の猫と、変化できなかった者たちの遺骨』 『調査団も次々と失踪』 『最後の生存者は「みんな幸せそうだった」と証言』
3月26日。
明日と同じ日付。
これは、偶然ではない。
定期的なサイクル。
約70年ごとに、同じことが繰り返されている。
そして、明日がその日。
「収穫」の日。
変化した者は、新しい住民となる。
変化できなかった者は...
翔太は、震える手で記録を戻した。
もう、十分だ。
真実は分かった。
だが、それが何になる?
逃げる方法は、ない。




