第19話 窓の外の「気配」
翔太は、なんとか自室に逃げ戻ることができた。
「彼ら」は、追ってこなかった。ただ、じっと見送っただけ。まるで、逃げる獲物を泳がせているかのように。
部屋に入り、再びタンスでバリケードを作る。
もう、限界に近い。
肉体的にも、精神的にも。
時計を見ると、午前2時。
まだ、夜明けまでは遠い。
窓の外を見る。
相変わらず、無数の緑の光が闇に浮かんでいる。その数は、さっきよりも増えているような気がする。
いや、確実に増えている。
最初は建物の周りだけだったのが、今は道路全体を埋め尽くしている。
まるで、緑の星々が地上に降りてきたかのような光景。
美しくもあり、恐ろしくもある。
そして、その光の全てが、この部屋を見つめている。
「なんなんだよ...お前ら...」
翔太は、疲れ果てた声で呟いた。
答えは、返ってこない。
ただ、緑の光が静かに明滅するだけ。
呼吸のリズムで。
いや、違う。
よく見ると、全ての光が同じリズムで明滅している。
完全にシンクロしている。
まるで、一つの巨大な生命体の、無数の目であるかのように。
翔太は、カーテンから目を逸らした。
これ以上見ていると、精神が持たない。
部屋の隅に座り込み、膝を抱える。
子供の頃、怖い夢を見た時のように。
だが、これは夢ではない。
恐ろしいほどに、現実だ。
時間の感覚が、麻痺してくる。
1分が1時間に感じられ、1時間が1分に感じられる。
意識が、現実と非現実の間を行き来する。
このまま、朝を迎えることができるのだろうか。
それとも、夜明け前に、「彼ら」は動き出すのだろうか。
答えは、もうすぐ分かる。