ふらふら、ふわふわ
浮気された。
断捨離しない夫はスーツ、Tシャツ、スマホにタブレット、書類もため込みがちなため、気を抜くとこれら全てがカビの餌食になってしまう。個人的な持ち物だし仕事に関わることもあるから、こちらも最低限、陽に干したり拭いたりすることもあるが、それも嫌がられる。PCやゲーム機のパソコンはすでに加水分解して、べたべたとホコリを掃除するための何かみたいになっている。
床に、触ると手がべたべたするくらいにカビて汚い鞄がいつも放置してあった。プライバシーを考えてこれまで触らなかった。昔、夫が鞄の中に飴を入れっぱなしにしていたのが溶けて、家の中まで蟻の行列ができていたことを思い出した。今住んでいる家はよく虫が入ってくるし、気を付けた方がいいよな…と、中を確認した。
血の気が引くとはこのことか。浮気の証拠がゴロゴロと出てきた。手足に力が入らずクラクラする。こういう時、どうしたらいいんだっけ。とりあえず証拠を集めておかないといけないんだよな…
ショックが大きすぎて一つ一つをじっくり吟味する余裕はなかった。見ることすらできなかった。証拠品を袋に入れて、理由は言わず、「開けないで保管してほしい」と書いて、電話も入れて、実家に送った。
夏休みで子供たちが家にいたから、笑顔を作った。すごくテンションの高いお母さんに見えていただろう。現実感のないまま、フラフラと日常の雑務をしていた。決してテキパキとは動けなかった。手足に力が入らないし、時々意識が遠のくので、とりかかっても普段の10分の1しか仕事が進まなかった。
ふらふら、ふわふわと現実味のないまま子供のために演技している自分を、本当の自分が見つめている。乖離状態とはこういう状態なのだろう。前にも似たような状況があったな。ああそうだ。311、東日本大震災で大地震があったときだ。日常が壊れるという意味で確かに一緒だもんな。私は現実をまだ受け入れられていないんだな。