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8 延長線上の先へ

 「ありがとうございました。お陰様で、楽しい時間を過ごせました。」

 私は、日夏太に向かってお礼を言った。庭園にいた際にドレスについた泥染みも、丁寧に拭いてくれた。彼は、見た目のみではなく、性格も穏やかで優しく、紳士的な人だと、その気遣いからわかった。そして、上品な女性が好きなのだともわかった。他の観客を下品と感じたのだろうが、直接的な表現を避けながら私に説明してくるのも、好感が持てた。何より、初め会ったときから私の反応をちゃんと確認しながら、嫌がることをしないように、気を配っていることに気がつき、彼が私に興味をもって話してくれているのが心地よかった。


 まだ離れがたいと思っている様子に気がついていたので、私は少し意地悪をしたが、彼は気がついていないようだった。だから、取り消し、をしてみた。


 「あの、やっぱもう少しあちらで一緒に過ごしませんか。」


 私が指さしたのは、コンサートホールへと続くエントランスとの間の、最初に私が感じ入ったホールだ。コンサートは大ホール、そこは中ホールというらしい。私たちが今いるのは、ほかのお客さんが食事を楽しんでいる、セレブレーションホール。その横からも階段が続き、エントランスに続いているのだが、私以外のお客さんは、きっとこちらから入場したのだろう。



 彼は私の提案に驚いたのか、そのホールの存在に驚いたのか、あるいは両方に驚いたのか、一瞬呆気にとられた様子だったが、眩しい笑顔を向けて頷いてくれた。

 

 そして嬉しそうに、「ここなら音楽も楽しめますね。」と、コンサートもこの中ホールで一緒に聴くつもりのようすを見せた。私たちが中ホールへ移動したところで、彼は慌てて「友人に伝えてきます。」と言い残し、けれどもその間私を一人にするのを不安そうに見遣り、小走りして消えた。




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