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7 花園でのお喋り※

 

 僕は話を熱心に聞いていたが、見た目に反して彼女が突飛な行動をする人だという点で、一種の驚きと、或いは興味を持った。

 

 「それでは長い時間、ここで吹かれていらっしゃったんですね。」

 「…いえ、私は途中眠ってしまったようで、気がついたらこの時間に。」

 

 僕たちはその後も沢山話をした。


 話をする中で、僕がここに来た経緯や、彼女はこの洋館のその他の場所に興味があり、まだ回っていない場所について僕に聞いてきた。一通り聞き終えた彼女は、観客についての僕の見解に笑い、けれども私はそう思わない、とはっきり言われた。


 穏やかで存外気さくに話してくれたが、その点でも言えるように彼女は芯のある人で、一方人に対して厳しさだけでなく非常に優しさを持った人だとわかった。不思議—不思議な人だと思った。きっと、かなり清らかな心の持ち主であることは確かだ。人を寄せつけないようでいて、突然フッとこちらに歩み寄ってくれる、けれども決して超えてはならない人のプライベートな所には入らない。本当に、猫のような人だと思った。


 「そういえば、まだ自己紹介してませんでしたね。」

 僕はずっとこの人のことが気になっていたが、彼女はあまり僕に興味がないのか、一切、名前さえも、聞いてこなかったので、しびれをきらし、僕から切り出した。

 「僕は今25歳で、○○でコンサルタントをしています。」彼女は心得たとばかりに頷き、「私は22で、今年から社会人一年目として働き始めたばかりです。」と小さな声で言った。


  少女らしさが抜け切れていないのは歳のせいでもあるかもしれないが、この女性は、年をとってもこのまま変わらないだろうという気がした。何故かわからないが、あくなき少女心というか、好奇心に満ちているのが、目の輝きから見て取れた。





 「もうそろそろ、戻ります?」

 恵茉はそう言い、落ち着かない顔つきであたりを見渡した。あまりにもホールから離れているため、人の様子がわからないことに不安を覚えているようだった。

 「コンサート開演時間が、今戻れば丁度いいでしょうね。」

 

 僕はそう教えた。でも、内心まだ二人でいたいと思っていた。彼女の警戒心を解けない限り、彼女はすぐ僕のもとを離れようとすることはわかっていたし、友人をいつまでも待たせるわけにいかない。


次話から恵茉(女主人公)視点に戻ります。

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