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最終話 人生の一幕
「お褒めにあずかって光栄です。」ふざけた様子で答えてみた。彼は少々不安げな表情になった。
「からかっているわけではなくて、本当にそう思います。こんなに有意義な時間はなかった。」
そして彼は私の手をためらいがちに取った。
「出会えてよかったです。…出会ってすぐ言うことではないと思いますが、貴方が気になっています。これからも僕と一緒にお話してもらえませんか。」
微笑みをたたえて、彼女は僕のほうをじっと見つめた。感極まって言葉が出てこない様子で、僕が十分すぎると思うほどの間があってから、小さく「はい。」とだけ答えた。
そうして、僕たちはこの出会いという不思議な体験に、何年も感謝するのだ。
この物語はこの話をもって最終とします。お読みくださってありがとうございました。