幼少期 1
プロローグ読んでいただきありがとうございます。
「ォギャア オギャア」
ある春の日の昼頃、ウッドベイル王国の東に位置するブラウン辺境伯家に一人の女の子が誕生した。
「ご覧下さい。元気でとても可愛らしい女の子ですよ。」
と産婆は言った。
「あらほんとね。とってもかわいいわ。あなたもそんなところにいないでこちらに来ればよろしいのに。」
ふふっと微笑みながら、部屋の入口でそわそわしている男性に女性は言った。その男性の名前は、コンラッド・ブラウン。ウッドベイル王国ブラウン辺境を治めている辺境伯でアッシュブロンドの髪に緑がかったヘーゼルアイを持ち、その目は力強くキリッとしている。顔が整っていることもあり普段ならば一見怖そうで威厳たっぷりに見えるのだが、今部屋の前でそわそわしているのを見ると普通の男性となんら変わりないように見える。まあ彼がそわそわするのも仕方の無いことだ。なぜなら彼の妻が今日初めて子どもを出産したのだから。そして、その男性の妻である彼女の名前は、アレクシア・ブラウン。ブラウン辺境伯夫人である。ふわふわしたダークブロンドの髪にグレーの瞳を持ち、儚げな風貌でかなりの美人。とてもじゃないが、たった今子どもを出産したようには見えない。
彼女はいつまでたっても近くに来ない夫に痺れを切らし再度声をかけた。
「ほらあなた。いつまでそんなところにいるのよ。私とあなたにそっくりよ。」
すると、やっとコンラッドは二人の元に歩み寄り、生まれてきたばかりの赤ちゃんに目をやった。二人の元に生まれた赤ちゃんはふわふわしたダークブロンドの髪に緑がかったヘーゼルアイをしていた。美男美女な二人に似ているので将来美女になること間違いないだろう。
彼は涙ぐみながらも
「あぁ、なんて小さくて可愛らしいんだ。アレクシア、私たちの子を産んでくれてありがとう。この子の名前はどうしようか」
と妻に問いかけた。
「実は少し前から考えていたのですが、この子の名前は“ フィリア”にしませんか?たくさんの人に愛し愛され、知識を大事にする そんな子に育ってほしいの。」
「フィリアか。可愛らしくてこの子にピッタリだな。よし、君の名前はフィリアだ。これからよろしくな」
と二人は言い、まるでそのことに返事をするかのようにフィリアは
「ォギャア オギャア」
と泣き出した。
「まるで私たちの会話を理解しているみたいですわね」
「そんな事はありえないと思うがな。いや私たちの子どもだからそれもありえるか」
コンラッドは真面目な顔をしてそう言った。
ブラウン辺境伯家に親バカな父とその愛娘フィリア・ブラウンが誕生した瞬間だった。
この日はとても暖かく、きっと辺境伯夫妻がこれまでの人生の中で一番幸せを感じた日であった。