表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者スイッチ  作者: 阿弥登
9/18

第8話 攻略

再び訪れる試練、天使攻略は叶うのか──

━━フルクトはハムモグラから天使攻略の糸口を見つけ、それを可能な限り確かなものとするため特訓に励んだ。そして遂にその日がやってきた━━



「こうして空き地に来るのも久しぶりね。どう? 私に勝てそ?」


「ああ、まあな」


 なーんて言ってみたが正直なところ自信と不安が半々……いや、不安がちょっと上かも。この前あの対策を思いついた時は興奮して、これはいける! と自信に満ちていたのだが日が経つと冷静になるもので、本当にいけるのか? と不安が大きくなってきた。だが今まで思いついた策の中で一番希望が見えるのだから腹を括るしかない。気持ちで負けないように頑張ろう。


「期待してるわ。それじゃあ始める前にひとつだけ、やっぱり私が付ける的は1枚だけにするわ」


 天使は手に持った的を左胸に当てる。合格条件が緩くなったのは願ってもないことだが――


「どういうことだ?」


 俺がそう言うと天使の雰囲気が変わった。全身から溢れる魔力の勢いが強くなり眼つきも鋭くなる。たったそれだけことなのに俺には彼女が別人になったかのように思えた。


「……絶対手は抜かないってこと」


……もしやムズくなってね?




「始めるわよ?」


「スー……ハー…………いいぜ」


――カツンッ!





――ビシュッ!


 開始の合図の直後、先手はまた天使だった。前回同様高速の魔力弾、前はいきなりこれに被弾してしまったが――


「くぅッ……!」


 なんとか体を捻って躱す! 来ると予想していてなおギリギリの回避、前回よりも速くなっていやがる。だけど、こっちだってそのつもりでトレーニングしてきたんだ!


「流石に当たらないか。なら――」


――ビシュビシュビシュッ!


 高速の三連弾。体勢を立て直し切れていない、さっきみたいな回避はできない。


「叩き落としてやるぜ――とりゃあッ!」


 腰に携えておいた俺のメインウェポンで3発全て弾き落とした! 武器には少し改良を加え、先端だけでなく側面にも石を付けることで槍っぽいものから斧風に仕立てた。更に同じ物をもう1本作って二刀流スタイルになっている。


「へぇ、面白い物を――それで捌き切って見せなさい!」


 天使が手を上にかざすと一気に5個の火球が出来上がった。っていきなり5個?! いいや、今の俺ならいけるはずさ!


「えいっ」


「くッ……たああああ!!」


 なんとか迫りくる火球をひとつずつ叩き落としていく。ひとつ落として回避、ひとつ落として回避、息付く暇が無い! けど、通用する! 武器も、俺の動きも!



「えい。えい。結構やるようだけど逃げてばかりじゃ勝てないわよ」


「ふおおお! それなら! それ投げんの! やっやめ、ヤメロォ!!」


 もうどれだけ捌いただろうか。次から次へと投下される火球はその全てが的確に俺の的に向かって来る。反撃しようにもそんな隙は無い。無理!


「――ぐあぁぁッ!」


 訪れるべくして訪れた結果だ。いくら通用すると言っても無際限に撃たれては限界が来る。捌き切れなかった1発が脚に命中、体勢を崩した後はそれこそ全身が的になったも同然だった。


「まずは1枚」


「ハァ……ハァ……ッ!」


 自分の体に目を落とすと右太腿付け根の的がボロボロと崩れた。なんとか武器でみぞおちと左肩の的だけは守ったがこのままじゃ時間の問題。こっちから仕掛けないと……!


「へっ……今度はこっちからだ……ッ!」


 今の俺はあいつに比べてできることが少ない。同じ魔法でも練度が段違いだから同じことをしても勝てない。よって俺の仕掛け方はひとつに絞られる。遠距離がダメならド近距離! 覚悟を決めて――突・撃・だァァァァ!!!


「はあああああ!!」


――ビシュビシュビシュビシュッ!


「それはもう慣れたぞ!」


 多数の魔力弾。さっきの火球千本ノックに比べれば弾道が予測できるだけマシなもんだ。速度を落とすことなく突進していく。


「ならこれよ!」


――ボッボッボッボッボッ……


 天使の背後に大量の火球が発生する。多すぎてまるで巨大な炎のようだ。それらが一斉に襲いかかってくる。

 ここだ!――


「おおおおォォォ!!!」


――ドガアアアアアン!!!



━━天使の放ったいくつもの火球は包み込むようにフルクトに迫った。もはや逃げ場は無い、今回のテストはこれで終了かと思えた。しかし、今にもフルクトに着弾するその瞬間、彼は一際激しい雄叫びと共に渾身の力を込め地面を叩き割った! めくれ上がった地面が防壁となり火球群がフルクトに届くことはなかった。


「今のを凌ぐなんて――でもこれは無理でしょ!」


 天使を中心に激しい風が吹き荒れる。空き地周囲の木々も大きく騒ぐほどの暴風――前回フルクトを屠った大竜巻。


(そう簡単に合格させる訳にはいかないの!!)


――ドゴオオオオオオオオオ!!!


 大竜巻はいとも容易く防壁を消し飛ばした。それどころか竜巻が通った跡には草の1本も残っていなかった。――フルクトの姿さえも。


(! 彼がいない?! 飛んでった? な訳ないか。じゃあ何処に……ん?)


 竜巻によって抉れた地面の一箇所に大きな穴が空いている、人1人が入れそうな穴が。


「ッ! そういうこと――」


――ドオォォン!


 天使が言い切る前に彼女の真後ろに土煙が立った。その中には━━



「もらったああァァ!」


 これが俺が編み出した竜巻対策『穴を掘る』だ! 攻撃を躱しつつ接近できる。結果は成功、天使に近づきなおかつ背後を取ることができた! ヤツは振り向いている最中、俺の攻撃は始まっている。間違いなく、入る!


「――甘いわね」


――ボォン!


「ガッ……ハッ……!?」


 俺の拳が届く寸前、完全に無防備だった左肩に火球が炸裂した。さっきのがまだ残っていたのか……!


――バキィ!


 あっよくも! 予想外の攻撃を受け逸れた右手に持った愛武器が破壊されてしまった。


「ぐっ……ぅぅ……」


 せっかく近づいたのに吹っ飛ばされ再び距離が離れた。気づくと左手の武器も無い。さっきの攻撃で落としてしまったようで天使の足元に転がっていた。


――バキィ!


 ダメ押しと言わんばかりに天使はそれを踏み抜いた……


「ふぅ、いやあ危なかったわ。まさか地面から出てくるなんてね。以前よりすごく成長してて、本当は合格にしてあげたいけど……ルールだからね」


 風が、彼女の元に集まっていく。集まり、渦巻き、荒れ狂う。武器は無く穴を掘って逃げることはできず、今からじゃ避けるのも間に合わない。そもそも体力も残ってない。

 万事休すか…………………………………………


 いや、まだ、やってないことはある。


「ふぅーーー。ヤケだ。やれること全部やってやる……」


 ゆっくり立ち上がり構える。

 不思議だ……状況は最悪なのに…………一番落ち着いてる。


「ハァ!」


 迫り来る烈風を観察する。その威力、風と魔力の流れ。それをできるだけ見たままに身体の周りに再現する。


「何をするつもりなの……?」


 逃げも隠れもしない、真っ向から突っ込む!


――ゴオオオオオ!!


 竜巻内は見た目以上に乱れている。流石の威力だ。当然ながら俺の体は宙を舞い上下左右も分からなくなっている。だが、ただ吹き飛ばされている訳じゃない! 風には風を。自分に当たる風とほぼ同じ風を出すことで俺は竜巻の一部になろうとしていた。手足をいっぱいに広げバランスを取り、みぞおち部分には特に注意して風を纏わせる。そして――


「はっはぁ! できたぞォォ!」


「ウソ、そんなことが?!」


 風を捕まえて乗りこなしていく。ダメージは0にはなってないが的が壊れない程度に抑えられている。

 この勢いのままヤツの方向へ!


――ドンッ!


「くっ……」


 天使は再び何かしようと構えるが関係ない。もはや俺にはヤツの的以外見えていなかった。


「――これが最後なんだ! 絶対モノにしてやらァァ!!!」


 思いっきり拳を握り後ろに引く!


――グイン!


「えっ?!」


 突然天使の体勢が崩れた――


「たあああらああァァ!!!」


――ドォォン…………




 勢いそのままに地面に激突した俺の手には、しっかりと木の的が握られていた。

フルクト・・・特訓により肉体強化倍率が1.5倍になった。


天使・・・肉体強化倍率は2.3倍程度。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ