第7話 対策
圧倒的な力の差を見せつけられたフルクトはなんとかテストに合格するため対策を立てていく──
改めてヤツの手札を考え直してみようか。まずは魔力弾だ。テスト開始早々にぶち当てられたアレ、油断してたとはいえ相当なスピードだった。だが、正直これはそこまで脅威ってわけじゃないと思う。というのも俺は元の世界ではかなり球技に自信があって特にドッジボールにおいてはキャッチやスローは並だったが避けることに関しては右に出るものはいなかった! 多分! だから少しトレーニングしてこっちの身体に慣れれば大丈夫だ。問題は――
「曲がる火球とデカい竜巻だよなあ」
いくら避けるのが上手いと言ってもそれはボールがまっすぐ飛んできた場合だけ。……一応対策はある、が、残り十日で身につけられるかかなり怪しい。
――「魔力は常に全身に流し続けること!」――
魔力操作の練習をし始めた頃よく言われた。魔力は全身に流すことで肉体を強化することができる。どれくらい強化できるかは流す魔力の量や素の肉体の強さに比例するらしい(人によって限界値は違う)。ちなみに今の俺の強化倍率は約1.4倍だ。受ける攻撃の威力と肉体強化が釣り合っていれば防げるのだが…… さっき火球が直撃した所を摩ってみると少しヒリヒリして押すと痛い。つまり守りきれていないのだ。おそらくあの威力なら1.8倍くらい欲しいがここまで2ヶ月練習してやっとこさ1.4倍なので期待はできない。ということで俺は別の案を試してみることにした。
肉体強化倍率を簡単に上げられない理由、それは一度に流せる魔力の量にある。過剰な魔力を一気に流してしまうと制御し切れずどこかに綻びができたり酷い時は逆に身体を痛めてしまう。だからゆっくりじっくり制御できる魔力量を増やしていくのだ。それでは間に合わない。ではどうするか――
「できた!」
家の薪置き場にあったちょうどいい大きさの木材の先端にその辺に落ちてた尖った石をブッ刺して作ったどの武器種に分けられるのかもわからない原始的装備。だがこれでいい!
「あとはこれに魔力をっと」
肉体に多量の魔力を流せないのは流しすぎることが良くないのであって技術的に流せない訳じゃない。武器にならもっと多くの魔力を流しても耐えてくれる……ハズ! 早速やってみよう〜。まずはいつも俺が流してる量…………大丈夫そうだ。よし、どんどんいくぞ――
「これくらいが限界か」
魔力注入をやめ、目の前にかざしてみる。武器全体に魔力が漲っているのが分かる。多分肉体強化倍率に直すと2倍くらいの強化になってるだろう。かなり頑丈な素材だったようだ、ラッキー!
場所を変えていつもの空き地に来た。せっかく武器をこしらえたんだし試し斬りしてみたいだろ? 天使の奴がなぎ倒した木があったのでちょっと攻撃してみよう。
「たらァァ!」
――バガアアアン!!
「うおおお! すっげー!」
コレハスゴイ! 丸太が真っ二つにかち割れた! でも絶対人には使えないな、危なすぎる。これならあの火球も叩き落とせるだろう。
さあ残る問題はひとつだ。まあこれが一番キツイんだけどさ。対策も何も諸共吹き飛ばされる未来しか見えない。
「いっその事迎え撃ってみるか?」
この武器は想像以上の威力だったしもしかしたら…… 目の前に散らばる粉々に砕けた木――の周りのなぎ倒された木々を見て乾いた笑いが出た……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あれから五日経った。俺は空き地の中心で大の字で寝っ転がっている。顔の筋肉に全く意識を割いていないから多分すっとぼけた顔してるだろうが、そんなこたどうでもいい。この五日間俺は脳細胞をフル稼働して竜巻の攻略法を考え続けた。色々アイデア出したよ……防御に全振り(足りない)、範囲外へ逃げる(クソデカ範囲)、俺自身が風になる(できなくはなさそうだが)、はがねタイプになる(?)etc. そう考えているうちになんだかなんとかなるような気になっていった。これはアレだ、テスト一週間前特有の謎のイけるんじゃね!?感という名の諦めだ。俺は現実から目を背けるように体の向きを変えた。
「……ん?」
何気なく見ていた地面の一点が突然盛り上がり、その中からハムスターのような動物が顔を出した。カワイイ顔とは裏腹に手は大きく爪も鋭い、元の世界のモグラみたいだ。人間を警戒する様子はなく辺りをキョロキョロ見回している。手がかなり生々しいがなかなか可愛らしいじゃないか。名前でもつけようか…………ハムモグラくん、おっいいじゃん特徴を捉えまくってる。そういえばコイツは図鑑で見たことあるな……確か危険を感じると………………ん? んんんんん?!
「――そっか! その手があった! ありがとなぁ!」
俺の声に驚いたのかハムモグラくんは元来た穴に逃げ帰って行った――
フルクト・・・主人公。攻略本は見ないタイプ。




