第6話 試練
ついにテストが始まった。意気揚々と臨んだフルクトだが──
――ハラハラドキドキさせてやる
とはなんてバカバカしい台詞だったのだろうか。ちょっと魔法ができるようになって浮かれていた。反省も後悔も、もう遅い。なぜならば――この女超強ェ!
それは勝負が始まった瞬間に分かった。俺が手に魔力を集中させ発射しようとした時には既にみぞおちに付けた的が弾け飛び、俺自身も吹っ飛ばされていた。何が起こったのか分からなかった。
「まず1枚。本気の戦闘だったら今ので終わってたわよ?」
天使はピストルの形にした指の先をフッと吹きポーズを決めていた。追撃する素振りは見せない。俺が立ち上がるのを待っていたらしい。
「このォ!」
なんとか立ち上がり今度は天使の右肩に向け魔力弾を発射する。
――パンッ!
個人的に、咄嗟に撃ったにしてはかなり良い弾だった。が、現実は虚しくも手で払われただけで消えてしまったのである。
「ほっ」
お返しとばかりに天使が火球を投げつけてくる。さっきは突然すぎて対応できなかったけど今度は別だ。来るのが分かってんなら打ち消すまでだ!
「たあッ!……ウゲッ!!」
火球とそれを相殺するために放った魔力弾が衝突する瞬間、火球の軌道がグインと逸れて吸い付くように無防備になっていた右腰に着弾した。試合前に天使に言われた通りに全身に魔力を流しているから多少軽減されてるとはいえ、まあまあ痛い。
「ッくそ、あと1個か。でも、これを死ぬ気で――」
その後の言葉は続かなかった。なぜなら視線の先には天使を中心とする激しい竜巻が吹き荒れていたからだ。小学校の体育館くらいある空き地のおよそ半分を埋め尽くす規模の竜巻。
「あ……えぇ…………」
「……これから先、あなたにはいくつもの試練が待っている。それを乗り越えられるように……私が最初の試練になる!!」
――ドゴオオオオッッ!!!
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「うあぁ……痛ってえ」
身体中がズキズキする。そりゃそうだよ! あんな竜巻に吹っ飛ばされたんだから! 天使の繰り出した特大竜巻は的とか関係なく全部吹っ飛ばした。本当に全部。空き地広くなってるもん。てか――
「これがテスト? 厳しくない??」
「ごめんごめん。そうね、確かに厳しいと思うわ。そもそもこの1回でクリアさせる気はなかったし」
簡単な回復魔法をかけてくれる天使を横目に会話を続ける。
「1回どころかこんなの一生クリアできる気がしないんだけど……」
「絶対クリアしてもらうわ。それとクリア条件だけど耐えるじゃなくて倒す、だから」
は? 正気か? あれを倒す?
「おおお前的は飾りって言ってたじゃん!」
「あれは嘘よ」
あまりにも悪びれることなく言い放つからこいつが本当に天使か疑ってしまう。と思ったけど元の世界の天使たちも割とヤベー奴らだった気もするから意外とこういうものなのかもしれない。
「このくらいかな。どう、動ける?」
「ん、おぉ。あんまり痛くなくなってる」
気づけば回復魔法による治療も終わったらしく、ほんの少しの違和感を残し痛みは消えていた。
「よし、それじゃあ頑張ってね。私の手札は全部見せたし、的の位置もあのままだから。十日後またするからね」
「おい! ちょ待てよ!」
「質問ならまた聞くわ」
俺の制止を全く聞かず手をひらひら振りながら家の方向に行っちまった。
「はぁ……どうすりゃいいんだよ…………」
フルクト・・・主人公。現在使える魔法は「魔力弾」「火炎」「風起こし」
天使・・・フルクトを勇者として育成中。




