第5話 才能
前回から続く修行は新たなステージへ進んでいた。勇者が持つ特別な力、その名は"天外魔術"。果たして使えるようになるのか?
|才能。それは天から与えられる世界一の不平等。世に名を残す者たち、そのほとんどがそれを有していたことだろう。そして勇者とはその最たる例である|
「天外魔術。生まれてから習得する魔術とは違う、魂に刻まれた力。勇者は必ずコレを持って生まれるの」
「そんな力が俺に……? はは、まさか……第一俺は間違えてなったんだろ……なら」
「いやあるわ、刻印を付けたのは私なんだから。そんなに信じられないならこれを使いましょ」
言うと天使は懐から無色透明の石を取り出した。確か名前は色見石だっけか。自分の魔力の性質が分かるらしいが……。
「魔力には主にふたつの性質があって、それによってどんな魔術を扱えるか決まってくるの。具体的には身体の外部に魔術を発するのに適した"外放魔力"と自身に向けて発するのに適した"内放魔力"のふたつ。色見石はそれを赤か青の色で教えてくれる。参考までに――」
そう言うと天使は自分の魔力をゆっくりと石に馴染ませる。すると無色透明だった中心に光が生まれ、たちまちルビーのように輝いた。
天使は魔力を止め、一歩引いて俺にやってみるように促す。色見石の前に立ち、少し考えてから魔力を送った。はじめはちょっとずつ、徐々に量を増やしていく、絵の具を溶かし出す感覚だった。すると再び無色透明の石は自らに流し込まれる魔力の色を映し出す。
「――金色?」
|石が示したのは赤でも青でもなく黄金。与えられた者の証|
「それが証拠よ。勇者の使命を遂行するために付与された力。それをものにすることは、義務よ」
天使の言葉と眩い光の重みに俺は無意識に喉を鳴らしていた。
「問題はどんな能力かは分かんないってことなのよねぇ」
「え?」
「いやね、天外の有無は刻印で決められるんだけど どういう力になるかは刻まれた魂によってまちまちなのよ」
なんとも中途半端な話だ。
「じゃあ鍛えようがないじゃないか?」
「ムムム……とりあえずあの的に向けて何かしてみて?」
「何かって……うーん」
まためちゃくちゃな課題だよ。どんな能力か分からないなら魔力を撃ち出すのか何かを強化したり変化させたりするのかイメージすら掴めないぞ? 天使っぽく言うなら公式を知らない数学の問題を解かされるのと一緒だ。せめてもう少し情報が欲しいな。
「なぁ? 今まではどんなのがあったんだ?」
「参考になるとは思えないけど……例えば全く関係ない複数のモノを合わせて別のモノに変える力とか、見ただけで相手の色んな情報が分かったりとか、命が何個もあるとか」
ダメだ全く取っ掛りがない。そっか、使う能力だけじゃなくて常時発動するタイプもあるのか。こいつは弱ったなぁ……。
ここまで割と順調だった修行が急に滞った。何も掴めないまま日が流れ、俺たちはまたいつもの場所で向かい合っていた。
「ついにこの日が来たわね。天外はまだだけど、とりあえず基本魔法の仕上げとして試験を受けてもらうわ」
「ばっちこい!」
「気になる内容だけど、はいどうぞ」
天使が取り出したのは的に似せた4枚の木の板。うち3枚を差し出された。中心には魔力を帯びた石の欠片が付いている。手作りなのだろう、縁がガタガタだ。
「それを体の好きな所に着けてね。試験は10分、その間私が魔法で攻撃するからあなたも魔法を駆使して的を守ってね。1枚でも守りきれたら合格よ」
「守るだけか?」
天使はニヤリと笑い、持った的で軽く扇ぎ始めた。
「フッ、これは確かに私用で壊せたらもちろん合格だけど――あくまでルールは防衛。これは単に10分間ずうっと防戦ってのはお互い楽しくないだろうなーって思っただけよ。飾りね」
半年も一緒にいれば流石にこいつも俺を分かってきてるじゃんか。
「――最高にハラハラドキドキさせてやるさ」
―――――――――――――――――――――
「準備は?」
「OK!」
「では――」
天使は脇の切り株に置いた砂時計に向けて10分、と囁くとわざと音を立ててひっくり返した。
――カツン!
「開始!」
俺/フルクト・・・主人公。魔法の修行中。
天使・・・フルクトを勇者に仕立て上げるため魔法を指導中。基本的な魔法、魔術ならほぼ扱える。




