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勇者スイッチ  作者: 阿弥登
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第4話 いざ特訓!! 初めての魔法

慧唯は無駄に気楽な天使といつも通りの母親に戸惑いつつも自分自身の問題に決着をつけようとする。

それと並行して勇者としての特訓が始まろうとしていた──

「まずは現状を知りたいわ。あなた、魔法とか魔術についてどのくらい理解してる?」

「うーん……とりあえず不思議なことを起こせる、とか」

「あはは……当たってるけど理解度はほぼ0ね」

 当然である。そもそも元いた世界にはそんなモノなかったしこっちでも母が使ってるのを見てはいたが詳しく学んだことはなかった。

「じゃあ一から説明するわね。この世界は空気と"魔力"と呼ばれるエネルギーで満たされてるの」

「あっそれなら知ってるぜ。物とか俺たちにも入ってんだろ?」

「そ、魔力は至る所に流れている。人や動物、植物にあらゆる道具にも。魔法っていうのは魔力を別の性質に変えて、またはそのまま放出することを指してて、魔術はさらにそれを加工するか操るかして特別な現象を起こすことを言うわ」

 なるほどわからん。

「なるほどわからんって顔してるわね。見てて」

 何をナチュラルに心読んでんだ、怖。ドン引きしている俺を横目に天使はおもむろに右手を前へ向けた。

――パチッ……パチパチッ……ボッ

 前へ向けた手のひらの中央に火花が散ったかと思うとたちまち握りこぶし大の炎へ育った。

「驚かないの?」

「ああ、これくらいならあの人もやってたしな」

「それもそっか」

 天使はほんの僅かに眉をひそめると説明に戻った。

「はい、今のが魔法ね。で、これが――」

 言いかけたまま天使が手に持った炎を宙へ放す。すると――

「おぉ」

 炎は小さな鳥の形となって俺の周りをパタパタと飛んだ。これには少し感動して思わず感嘆の声が漏れてしまった。しばらく飛ぶと炎の鳥は天使の手に戻り元の炎となった。天使は舞い戻った炎を砂を払うように消し、満足気に続ける。

「今のが魔術よ。分かったかしら?」

 んーまぁなんとなくかな。

「今はそれでいいわ」

「だから怖えよ!」


「魔法と魔術はちょっと分かったぜ。それで今日は何すんだ?」

「やけに乗り気じゃない。さてはやってみたかったのね」

 しまった、ついはしゃいでしまった。でもでも男ってのはいつまで経っても少年心を忘れられないものだろう。アニメとかマンガで見てたのができるってなったらテンション上がってしまう。

「でも残念! 今日するのは基礎の基礎、魔力を感じることでーす。はいコレ」

 天使が取り出したのはふたつの石。ひとつは黒色で表面は黒曜石のように光を反射している。それに、手のひらサイズにも関わらずとてつもない存在感だ。もうひとつはガラスのように透き通った綺麗な結晶だった。

「こっちの黒いのが魔力が凝縮したので、透明なのが色見石よ」

「色見石? 無色透明じゃん」

「魔力を流せば色が変わってその魔力の性質が分かるの。でも今は使わない、はいっ」

 天使は色見石を引っ込めると同時に黒い石をほおった。

「うおっと! ――重ッ!」

「しばらくはそれを使って魔力に慣れる特訓をしましょ」

 えー……俺はもっと派手なことがしたかったんだけど……

「数字を知らないで計算はできないでしょ? なんでも基礎から固めないとね」


 そうして始まった特訓は正直、しょーーじき地味すぎるものだった。石に触って瞑想するだけ。魔力に慣れるというのは、具体的には魔力塊を通して生の魔力に触れ、その延長として自分の身体に流れている魔力を感じられるようにするものだった。しかし生まれた時から流れている物を知覚する、これはかなり難しいだろう。言ってみれば自身に流れる血液を感じろっていうのと同じだ。だから()()()は苦労した。

 特訓を開始して三日目くらいだったか、朝の特訓が終わって地面に寝転がった時、さっきまで魔力塊に触れていた右手に熱を感じた。その熱は次第に身体の隅々まで伝播していく。四肢の先どころか髪の毛の先に至るまで。そして全ての中心に一際盛る熱がある。――これが俺の魔力!

「なあ! 天使!!」

「どうやら掴んだみたいね」

 そっから先は早かった――


「ふンンンン〜〜……キた! できた! どう?!」

 体の中心に集めた魔力を右手、左手、左足、右足、最後に頭、そして再び中心に戻すことに挑戦していた。これが天使の出した魔力操作テストだったのだ。

「――うん、合格ね。魔力についてはこれにて終了よ。……にしてもここまで一週間、勇者補正もあるとはいえ相当早い……イイ感じ」

「よっしゃー! じゃあこれからは魔法だな」

「そうだけど、浮かれて魔力操作の練習サボっちゃダメよ?」

 天使はピッと人差し指を立てて小煩く釘を刺す。でもせっかく身につけたんだ、どうせなら極めてみたいな。


 太陽もすっかり登り、俺たちのいる空き地がステージのように照らされている。

「よしやろうぜ! 魔法!」

「期待してるとこ悪いけど、多分拍子抜けするわよ」

 どういうことだ? 確かに見慣れてはいるけど自分ができるとあらば話は別――

「じゃあまず手に魔力を集中――」

 おいまだ喋ってる途中……って喋ってないか。とりあえず天使の指示通りやってみる。

「次にそれをあの木に描いた的に向かってグッと押し出すように」

――バシィッ

 なんか出た?! 的を見ると少しズレたが表面に小さい亀裂が入っていた。

「でき……たのか?」

「はい次もう一度手に集中…………それはとても熱くなる、擦り合わせるでも燃料とするでも好きにイメージして、火花が散り、いずれ大きく、強く――」

――ボッ

「うえぇえ?! ちょっアッツアッツ!」

「くないでしょ。自分の魔法なんだから」

「アッツアッ――ほんとだ、あんまだったわ」

「はい、魔法はこんな感じかn――」

「ちょっと待て!! おかしい! こんなサラッといくもんなの?!」

 魔力操作は一週間くらいかかったんだ、ステップアップした魔法がこんな簡単にいくなんて……なんかさぁ!

「いくもんよ。一発で成功ってのは驚いたけど一般人でも魔力操作を覚えた後は割とすぐ魔法は使えるわね。問題は次なんだけど――」

 天使の眉をひそめ、顎を指でつまみ考え込む仕草を見て唾を飲む。次というのは魔術のことだろう。魔法をさらに加工する術。考えてみれば以前こいつに見本を見せてもらうまで俺は魔術を見た事がなかった。母も火や水を出してもそれが形を変えたりなどはしてなかった。

「――あなたには"天外"を発現させてもらう必要があるわ」

俺・・・主人公。自分の存在に迷いながら背負わされた勇者の責務を果たそうとする。


天使・・・本格的に主人公を勇者にするために動き出した。図太く強引。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ほぼ繰り返しになりますが補足

魔法の魔力を別の性質に変えるというのはそのままの意味で魔力を炎や水などに変換して放つことです。また、魔法で出したモノは術者の手を離れた瞬間からほぼ本物となります。


一方、魔術は魔法で出したモノに新たな能力を付与したり動作を操ることです。


(例)魔力を使い炎を出す→魔法

その炎を自在に動かす→魔術

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