表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者スイッチ  作者: 阿弥登
2/18

第1話 ここはどこ? 私はだあれ?

普通の大学生だった士堂慧唯(シドウケイ)は不幸なことに通り道に殺害されてしまった。

そして、再び目を覚ますとそこは──

「うーん……」

 窓から入ってくる暖かな陽射しに誘われて目を覚ます。

(今日何曜日だっけ……)

 目を開けず手だけで周りを確認していく。ふと温かい柔らかさを持つクッションに触れ反射的に抱きつく。微かに、だが確かに心臓の鼓動のようなものが響きどこまでも深い安心感をもたらしてくれる。

 5分ほど微睡むと意識が輪郭を持ち始め視覚によって世界を認識しようと目を開かせる。

「おはよう〜、今日はすごく甘えたさんだったわね〜」

(!?!?!!?)

 満を持して開かれた目に映ったのは全く見覚えのない女性の顔。俺の顔が表す驚愕、愕然、それら全てをも包み込まんとするほどの微笑みで見つめ返されている。

(………………はっ! ちょっと待て、色々とよく分からんが女ってことは、今俺が触れてるのは……!)

 未だかつてここまで機敏に動いたことがあったか、虫もびっくりの初速からフルスピードで飛び退いた。あまりの勢いに女性の膝から転げ落ちるほどに。

(不可抗力とはいえ危なかっ……た……?!)

 俺は一体何度驚かされるのか。

(この人……なんてデカさだ?!)

 俺は割と上背はある。今現在、尻もちをついた体勢だが立ち上がったところで到底及ばぬ身長差があることに気づいたのだ。しかも相手は正座である。

(くっ……落ち着け落ち着け。驚いてばっかりじゃ進まない。とにかく現状を……げん……ん?)

 体勢を立て直すために手足を動かすがなぜか思った通りに動かない。それも仕方ない、この数分で現実とは思えぬ出来事が雪崩こんできているのだ、腰が抜けていても不思議ではない。そう考え自分と身体へと視線を落とす。

 ぷくぷくと詰まった手足、焼きたてのパンのようにもっちりとしたほっぺた。ああ、赤ちゃんだ――

「マ゛ーーーーー!!」

(うわあああああ!!)

 もう限界だ! これ以上はキャパオーバーだって!

「あら〜嬉しいわ〜! こんなに早く言ってくれるなんて! "ママ"って」

 ――え?


 人は限界を超えると逆に鎮まってしまうらしい。急降下からの更なる急降下でクラッシュした頭は現実に対し恐るべき適応能力を発揮した。

 今住んでいるのは石造りの平屋。キッチンと一緒になっているリビング、寝室、風呂にトイレ、そしてバルコニーとそれぞれは小さいながらもとても雰囲気の良い家だ。床にはカーペットが敷かれており西洋風の家ではあるが屋内では裸足で暮らしている。

「はいどうぞ〜、おくちあけてくださ〜い」

 そして俺の口へ食べ物を運んでくれているこの女性はどうやら俺の"ママ"、母親らしい。成人を迎えたはずの俺の人生は乳幼児まで巻き戻り、2周目を迎えているのだ!

 そうだ、そういえば自己紹介がまだだった。

 俺の名前は士堂慧唯(シドウケイ)、見た目は赤ちゃん、中身は成人男性である。そして2周目の我が名は――

「はい、よく食べられました。フーちゃん偉いわ〜」

 正確にはフルクトなのだが愛称として「フーちゃん」と呼ばれている。――ここまで、かなり現実離れした状況を説明したが最後にとっておきを紹介しよう。

「それじゃあそんな偉い子にはご褒美ね〜」

 言うとママは両手で作った輪っかを顔の前に持っていきふーっと息を吹き通した。するとどうでしょう、なんとシャボン玉が出てきたではありませんか。うん、もう驚かない。常識が全て崩れ去った今となってはこのくらい普通に思えてしまう。

「フーちゃんもいつか魔法が使えるようになるかしらね〜」

 魔法、である。ママはこの他にも暖炉に火をつけたり体を乾かしたりする時に火とか風を出す。この前近所のおばさんが訪ねてきた時にも普通に使っていたのを見る限り、魔法は何ら特別なことではないようだ。

 答えがどれだけ納得できなくとも、目の前に広がる世界(じじつ)は否定できない。認めるしかない。俺は元の世界とは違う場所、"異世界"に来てしまった。

      ――――――――――――――――――――――――

「フーちゃん、畑のシュの実採ってきてくれる〜?」

「あーい」

朝のどこまでも駆け出して行けそうな空気の中、家の裏に広がる森へと向かう。森の一画は切り開かれ我が家の畑となっている。そこではママの丁寧な手入れのおかげで様々な種類の果実や野菜が見事に生っている。ママに頼まれたシュの実というのは畑の中で一番大きい木に生る赤い果物で甘酸っぱくておいしい。綺麗にもぎるためには少しコツがいるのだが、まあ何年もやってきたら手慣れるのも当然。ナナメに捻りながらもぎることでヘタから綺麗に採り外せる。

「よし、このくらいかな」

 プツッ、プツッと滑らかな手際で4つほど採って来た道を戻ろうとする。先程からママの得意料理であるスープの香りが朝の空気と溶け合っていた。このスープとパン、そして今収穫したシュの実を使ったサラダが我が家の朝食のテッパンだった。今日もいつも通りの日が始まる。

――ガササッ

「ゼェ……ゼェ……やっと、見つけたわ……!」

はじ……まる……?

俺・フルクト・・・主人公。ひょんなことから異世界へ転生してしまい困惑中。


ママ・マムール・・・異世界でのフルクトの母親。おっとりしているが芯が強い女性。魔法がちょっと上手い。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一階にある屋外スペースはバルコニーではなくテラスと言うらしいですね。調査不足ですみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ